海の小舟と君と僕

ふくまめ

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トモダチ

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「そう言えばさ、良太君は友達と遊びに来ているところだったんだっけ?」
「そうですけど…。」
「けど?」
「…友達かって言われると、ちょっと微妙かなって。」
「えぇ?どうしてだい?」
「多分僕、人数合わせか何かで呼ばれたんですよ、きっと。」
「…その友達は、どうでもいいような人を遊びに誘うような人なの?
 遊びに行くのだって、タダじゃないだろうに。」
「ロイさんもお金の事とか考えるんですね、意外です。」
「何だか今馬鹿にされたような気が。」
「そんなことは…。ともかく、今どきの友達ってのは案外適当なもんだってことですよ。
 誘ってきた奴は何と言うか…、金持ちみたいで。一般家庭の金銭感覚とは違うんじゃないですかね、はは。」
「ふぅん…。」

そうだ、友達なんてそんなものだ。その瞬間に必要な人数さえそろえばいい。
その程度の人数合わせのために、オトモダチなんて文句で誘われる。
毎日の生活の中ではいたっていなくたっていい。だけど何かあった時には都合よく呼ばれる存在。それが友達だ。
皆が互いに騙し合って利用し合っている。
そして僕も。

「みんながみんな、そういう人ばかりじゃないとは思いますけど…。
 …瞬介は、そんなこと思ってないといいな。」
「…仲がいい人がいたの?」
「仲がいいというか…、同じ高校に通ってて進学先が一緒だったんですよ。
 少なくとも、大学で出会った人たちと比べたらって感じですかね。本人も良い奴ですし。」
「向こうもそう思っているのかなぁ。」
「え?」
「その相手、瞬介君だっけ?彼も良太君のことを親友のように思っていてくれているのかなってことさ。」
「…そんなこと。」
「君だって言ってただろ?『今どきの友達ってのは案外適当なもんだ』ってさ。」

確かに言ったけども…。
龍治に数合わせで呼ばれていることは受け入れられるけど、
瞬介が適当に相手しているんじゃないかってことは、何となく受け入れがたい。
他人に対して期待しないように、分かったような考えをして予防線を張っていたって、誰かには正直に向かい合っていてほしい。
僕も大概自分勝手な人間なんだな…。

「良太君、俺は別に君を責めるつもりはないよ。もちろん、その友達もね。
 人間ってのは、良くも悪くもお互い様だよ。お互いが適当に利用し合って生きていく。
 それなら、個人個人に固執する必要なんてないと思うけどなぁ。」
「…。」
「ね、良太君。旅に出て知らない人に出会うことも、大して変わらないと思わないかい?」
「…随分とそこにこだわりますね。」
「俺からしてみれば、君たちの方がこだわっているように見えるけどね。」

旅をしていれば、出会う人はその時限りの人たちばかりだろう。
そういった人たちの方が、いわゆる余所行きの態度で優しく接してくれるってこともあるかもしれない。
他人にどう見られているか、周りからの評価を気にして当たり障りのないように行動する。
純粋に優しさで接してくれている人なんて、どれだけいるのだろうか。
そういう感じで何となく社会が回っていると思えば、表面上問題なく過ごしている生活も何だか悲しくすらある。

「世界は白か黒で分けられることばかりじゃない。
 それはみんな知っているのさ。見ないふりをしているだけ。
 正面からその事実を見てしまうと、気が滅入るだろう?
 嫌なことや汚い部分から目を背けて何かに肩代わりさせるのは、人間の特徴だよね。」
「それは…。」
「そんなことないって、言い切れるかい?何となく、適当に生きている君に。」

ロイさんは相変わらず笑顔のまま。だけど、何だろうか、どこか冷え込んだ眼をしている。
確かに僕は人様に自慢できるような生き方をしているとは思っていない。
だけど、他の人たちだってそうじゃないか。僕が周りと大きくずれた生活をしているとも思えない。
それなのに、僕と正直に向かいあってくれる誰かがいることを諦めきれないでいる。
その自分勝手な矛盾を見せつけられて、僕は何も言えなくなってしまった。
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