25 / 33
人類の進歩④
しおりを挟む
奇跡的な再会と突然の別れ。感情が大きく揺れ動く中で、私たち三人は辛うじて使えるであろうとロロおじさんに案内された一室で腰を落ち着かせていた。
「手入れがされてなくて荒れているとはいえ、旅の野宿やボロ宿を考えると天国みたいなもんだぜ。あのロロって博士は相当いい生活してたんだなぁ…。」
「戦時、国お抱え同然で研究していたらしいからな。待遇も相当よかっただろう。」
「だよな。…メアリちゃん、ここではどんな研究をされたのか、何か知らない?」
「うーん…私の両親とも交流がありましたし、何かの薬品だったとは思うんですが…。子供には難しいだろうからと、あまり詳しくは。」
「それもそうか。まぁでも、その時の縁があって俺様達はここにお邪魔できているわけだし、メアリちゃんのおかげだな。」
「私は何も…おじさんのご厚意ですよ。…おばさんにも、お会いしたかったんですが…残念です。」
「メアリちゃん…。」
おじさんに会えただけでも奇跡的。そうわかってはいても、仲睦まじい二人の姿が思い出されて、おばさんが一緒にいないことが信じられない。
「…しかし、一人になってもこの地を離れなかった。あの博士はまだここで研究を続けているんじゃないのか?」
「そうだなぁ…そういえば、お前軍にいたんだから何か知らねぇのか?」
「さてな。少なくともロロという名前に聞き覚えはないが。」
「一応聞いてはみたものの、お前の記憶力を信頼していいものかどうか…。」
「おい。」
「でも、メアリちゃんのご両親みたく話題になることは、なかったんだろうなぁ。少なくとも、ここで生活できているところを見るに。」
戦時国や軍に協力していた人間は指名手配されているような状況下の今。以前から住んでいるここに滞在し続けられているということは、国からマークされていないことの証明にもなる。研究内容が戦争に関わるような内容のものではなかった?いやでも、確かに国のお偉いさんとの話があるって、私もついてきたときに…。
いや、考えても仕方がない。おじさんに直接聞いて確かめた方が早く、そして確実だろう。
「…今日のところはゆっくりさせてもらって、明日詳しい事情をおじさんに聞きましょう。」
「そうだな。」
「俺様もさんせー。と、言うことで、メアリちゃん俺様と一緒に休みましょー!」
「三人で!ですけど。」
「問題なく使えそうなのがこの一部屋だけらしいからな。仕方ない。」
「それは俺様のセリフだバカ!何でお前が一緒なんだよ、メアリちゃんと二人きりがよかった…!」
「ごちそうにもなってしまいましたし、何かお礼ができればいいんですが…。」
「断られそうだが…。まぁ、研究している内容によっては手伝ってほしいとかはあるかもしれないな。」
ソファに突っ伏しながらむせび泣くロランさんを無視し、私ができるおじさんへのお礼を考える。私たちは追われる身。長居することはできないし、痕跡が残るようなものもよくない。そもそも、おじさんがこうして私たちを置いてくれていること自体リスクがある。そう考えると、本当に私たちは厄介ごとを抱えたまま上がり込んでしまっていること実感するしかなかった。
「手入れがされてなくて荒れているとはいえ、旅の野宿やボロ宿を考えると天国みたいなもんだぜ。あのロロって博士は相当いい生活してたんだなぁ…。」
「戦時、国お抱え同然で研究していたらしいからな。待遇も相当よかっただろう。」
「だよな。…メアリちゃん、ここではどんな研究をされたのか、何か知らない?」
「うーん…私の両親とも交流がありましたし、何かの薬品だったとは思うんですが…。子供には難しいだろうからと、あまり詳しくは。」
「それもそうか。まぁでも、その時の縁があって俺様達はここにお邪魔できているわけだし、メアリちゃんのおかげだな。」
「私は何も…おじさんのご厚意ですよ。…おばさんにも、お会いしたかったんですが…残念です。」
「メアリちゃん…。」
おじさんに会えただけでも奇跡的。そうわかってはいても、仲睦まじい二人の姿が思い出されて、おばさんが一緒にいないことが信じられない。
「…しかし、一人になってもこの地を離れなかった。あの博士はまだここで研究を続けているんじゃないのか?」
「そうだなぁ…そういえば、お前軍にいたんだから何か知らねぇのか?」
「さてな。少なくともロロという名前に聞き覚えはないが。」
「一応聞いてはみたものの、お前の記憶力を信頼していいものかどうか…。」
「おい。」
「でも、メアリちゃんのご両親みたく話題になることは、なかったんだろうなぁ。少なくとも、ここで生活できているところを見るに。」
戦時国や軍に協力していた人間は指名手配されているような状況下の今。以前から住んでいるここに滞在し続けられているということは、国からマークされていないことの証明にもなる。研究内容が戦争に関わるような内容のものではなかった?いやでも、確かに国のお偉いさんとの話があるって、私もついてきたときに…。
いや、考えても仕方がない。おじさんに直接聞いて確かめた方が早く、そして確実だろう。
「…今日のところはゆっくりさせてもらって、明日詳しい事情をおじさんに聞きましょう。」
「そうだな。」
「俺様もさんせー。と、言うことで、メアリちゃん俺様と一緒に休みましょー!」
「三人で!ですけど。」
「問題なく使えそうなのがこの一部屋だけらしいからな。仕方ない。」
「それは俺様のセリフだバカ!何でお前が一緒なんだよ、メアリちゃんと二人きりがよかった…!」
「ごちそうにもなってしまいましたし、何かお礼ができればいいんですが…。」
「断られそうだが…。まぁ、研究している内容によっては手伝ってほしいとかはあるかもしれないな。」
ソファに突っ伏しながらむせび泣くロランさんを無視し、私ができるおじさんへのお礼を考える。私たちは追われる身。長居することはできないし、痕跡が残るようなものもよくない。そもそも、おじさんがこうして私たちを置いてくれていること自体リスクがある。そう考えると、本当に私たちは厄介ごとを抱えたまま上がり込んでしまっていること実感するしかなかった。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる