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愛してる③
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「その商人は、結構な大荷物だったらしく、荷馬車を引いてくれる馬がいなければ身動きが取れなかったんです。」
「バカなことしたなぁ、その商人…。でもだからって、荷物を置いて先に進むこともできなかったと。」
「そうです、あたしにはその感覚ってあまり分からないんですけど…。」
「まぁ、一応同業者って言ったらそうだからなぁ。荷物っていたって大事な商品。それを仕入れるのに金は払っちまってる。それをみすみす捨てるような真似は、できることならしたくねぇってのは分かるさ。」
「はぁ…。」
どうやらここができたきっかけは、一人の商人のうっかりが発端だったようだ。世の中何がどう転ぶか分からないものだ。
「でも…この規模の人が集まるなんて、なかなか想像できないんですが…。」
「その商人は、荷物を捨てることもできず、移動することもできずで頭を悩ませた結果、一つの賭けに出たそうで。」
「賭け?」
「…その場で商売をして、やっていくという賭けです。」
「はーなるほどぉ…?」
「そんで、何だかんだ上手くいってしまったと。」
「結構簡単にまとめましたけど、すごいこと…ですよね?」
「まぁね。」
でも俺様だったらそんな賭けはしたくないなぁ、とロランさんは評価する。あくまで運がよかっただけで、商人の采配は決していい判断とは言えないようだ。
「道行く人に商売して、それがだんだんと大規模になって…。それでここができたと。…その商人が成功したのは運がよかっただけかもしれませんが、ここは人通りがある程度あるような要素があったのでは?」
「そうかもしれないけどさぁ…。そもそも『かもしれない』で商売できるほど甘くないよ?本当に、たまたま、上手くいったってだけの話にしか思えないねぇ。…まぁ、何にせよここは人の行き交う場所になった、と。世の中物騒だけど、ここの治安はどんなもん?兵士が常駐しているようには見えなかったけども。」
「…確かに、ここには兵士さんはいません。争いもそこそこ起こるし、平和とは言えないのかもしれないけど…。でも、みんな自分たちのことで精一杯だから、そこまで揉め事は大きくならないように思います。たまに兵士さんが来て、怪しい人がいないか聞いていくこともありますけど。」
「…そう、たまにね。定期的じゃないのかな?」
「うーん…そこまで決まっていないと思いますけど…。どうしてです?」
「俺様何も怪しいことしてないんだけど、兵士さんを前にすると緊張しちゃう体質なの。…ま、兵士さんは戦時の英雄を探すのに忙しくて、いちいち揉め事の仲介なんてしてる場合じゃないのかもしれないけどな。」
「戦時の英雄…聞いたことはありますけど、どんな人たちなんですかね…。」
「…さてね。できることなら、俺様出会いたくないもんだけどなぁ。」
兵士の巡回は不定期。しかしそこまで頻回でもない様子だ。注意した方がいいだろうが、そこまで警戒する必要もない、といった程度だろうか。
最近の人の出入りとか、商品の売れ行きはどうだとか、ロランさんは何でもないような内容に話題を変えている。ニコはその話題に律儀に答えていて、腕の処置が終わったことにも気がついていないようだ。いい子なんだろうな。
ドンドン!
「っ!」
「ん?」
「今度は誰?ニコの商売仲間、とか?…ニコ?」
「…。」
ドンドンドン!
またもやドアノック代わりに壁が叩かれる。ニコの時よりも少々力強く、荒々しく感じるが…。ニコの知り合いでも来たのだろうか。それとも、ここでは旅人の泊まることろにまで顔を出して商売するのが一般的なのだろうか。そう思ってニコに確認しようとするも、ニコからの返答はない。ニコはただ、俯いて手を握りしめているだけだ。
その反応に違和感を覚える中、壁を叩く音が急かすように響いている。
「バカなことしたなぁ、その商人…。でもだからって、荷物を置いて先に進むこともできなかったと。」
「そうです、あたしにはその感覚ってあまり分からないんですけど…。」
「まぁ、一応同業者って言ったらそうだからなぁ。荷物っていたって大事な商品。それを仕入れるのに金は払っちまってる。それをみすみす捨てるような真似は、できることならしたくねぇってのは分かるさ。」
「はぁ…。」
どうやらここができたきっかけは、一人の商人のうっかりが発端だったようだ。世の中何がどう転ぶか分からないものだ。
「でも…この規模の人が集まるなんて、なかなか想像できないんですが…。」
「その商人は、荷物を捨てることもできず、移動することもできずで頭を悩ませた結果、一つの賭けに出たそうで。」
「賭け?」
「…その場で商売をして、やっていくという賭けです。」
「はーなるほどぉ…?」
「そんで、何だかんだ上手くいってしまったと。」
「結構簡単にまとめましたけど、すごいこと…ですよね?」
「まぁね。」
でも俺様だったらそんな賭けはしたくないなぁ、とロランさんは評価する。あくまで運がよかっただけで、商人の采配は決していい判断とは言えないようだ。
「道行く人に商売して、それがだんだんと大規模になって…。それでここができたと。…その商人が成功したのは運がよかっただけかもしれませんが、ここは人通りがある程度あるような要素があったのでは?」
「そうかもしれないけどさぁ…。そもそも『かもしれない』で商売できるほど甘くないよ?本当に、たまたま、上手くいったってだけの話にしか思えないねぇ。…まぁ、何にせよここは人の行き交う場所になった、と。世の中物騒だけど、ここの治安はどんなもん?兵士が常駐しているようには見えなかったけども。」
「…確かに、ここには兵士さんはいません。争いもそこそこ起こるし、平和とは言えないのかもしれないけど…。でも、みんな自分たちのことで精一杯だから、そこまで揉め事は大きくならないように思います。たまに兵士さんが来て、怪しい人がいないか聞いていくこともありますけど。」
「…そう、たまにね。定期的じゃないのかな?」
「うーん…そこまで決まっていないと思いますけど…。どうしてです?」
「俺様何も怪しいことしてないんだけど、兵士さんを前にすると緊張しちゃう体質なの。…ま、兵士さんは戦時の英雄を探すのに忙しくて、いちいち揉め事の仲介なんてしてる場合じゃないのかもしれないけどな。」
「戦時の英雄…聞いたことはありますけど、どんな人たちなんですかね…。」
「…さてね。できることなら、俺様出会いたくないもんだけどなぁ。」
兵士の巡回は不定期。しかしそこまで頻回でもない様子だ。注意した方がいいだろうが、そこまで警戒する必要もない、といった程度だろうか。
最近の人の出入りとか、商品の売れ行きはどうだとか、ロランさんは何でもないような内容に話題を変えている。ニコはその話題に律儀に答えていて、腕の処置が終わったことにも気がついていないようだ。いい子なんだろうな。
ドンドン!
「っ!」
「ん?」
「今度は誰?ニコの商売仲間、とか?…ニコ?」
「…。」
ドンドンドン!
またもやドアノック代わりに壁が叩かれる。ニコの時よりも少々力強く、荒々しく感じるが…。ニコの知り合いでも来たのだろうか。それとも、ここでは旅人の泊まることろにまで顔を出して商売するのが一般的なのだろうか。そう思ってニコに確認しようとするも、ニコからの返答はない。ニコはただ、俯いて手を握りしめているだけだ。
その反応に違和感を覚える中、壁を叩く音が急かすように響いている。
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