11 / 33
自己防衛、大事
しおりを挟む
「んじゃま、今後ぼちぼちサンドルに向かいながら行商して資金繰りってことで。」
「…はい。」
「…。」
「あらら、あんまりご納得いただけてない感じ?」
「お前の言っていることは理解できる。…だがそう上手くいくか…。」
「そんときゃそん時。頭使うのが苦手な奴がどんなに頭捻ったってわかりゃしねぇよ。」
「…。」
「無理だと判断した時にまた考えりゃいいのさ。少なくとも、俺様はそうやって生きてきたんだぜ?何だかんだ、なるようになるもんよ。」
「…そう、ですね。行動しなければ、見えてこないこともありますよね。」
「そうなのよー!メアリちゃん、不安かもしれないけど、俺様がちゃーんとエスコートするからねー!」
「は、はぁ…。」
今後の方針がある程度固まったのが嬉しいのか、ロランさんはかなりテンションが高い。…いや元からだろうか。向けられる笑顔にどう返したらいいものかと、あいまいな返事になってしまう。
「んじゃ、今夜の見張りはギルの野郎にお任せして、俺様達はゆっくり休もうぜー!」
「ふざけんな。」
「ふざけないでください。」
「んもー、ちょっとした冗談じゃないのよー。」
「冗談でもやめてください。いくら町が近くにあろうと、魔物に出くわさないとは限らないんですから…。」
「俺様こう見えてもベテランよ?そこんところも抜かりないって。」
警備が敷かれている大きな街があるような地域ならいざ知らず、地方の街道なんかでは魔物を見かけることは珍しくない。大人しい小動物程度の大きさの魔物だったらそこまで脅威ではないかもしれないが、まかり間違ってドラゴンのような大型で凶暴な魔物に遭遇してしまったら…その時点で人生終了だ。
ロランさんもその部分は心得ているようで、冗談を言いながらも荷物の中から取り出したのは水の入った小瓶。
「両翼に十字架…。本物の聖水だな。」
「もちろんよ。金をかけるべきところにはしっかりかける男なの、俺様。これがなきゃ、魔獣が怖くて一人旅なんかできやしないからなぁ。」
その分値が張るのが痛いけど、と言いながら私たちの野営地の周りに振りまいていく。この聖水は自身に害なすものを退ける力があるとされている。主に魔物を寄せ付けないために使用されることが多い。これは教会の聖職者が祈りを込めて作っているもので、ロランさんのように町を行き来するような人たちにとっては必須。非常に需要も多いため、高価で売買され偽物も出回っている。本物には両翼を携えた十字架、という教会を示す紋章が彫られているのだが、それも真似るものも多く闇市で手に入れる際は注意が必要だ。…そもそもそんなありがたいものを闇市で買おうというのもどうかと思うが、教会で直接購入する際もかなり高価なので何とも言えない。
とにかく、旅の必需品と言っても過言ではない。そんな存在を、私もギルさんも持ち合わせていなかった。
「メアリちゃん、よくここまで無事だったね。女神さまの加護でもあるのかな?」
「いえ、単に旅をしている団体に同行させていただいただけです。優しい方々にお会いしまして。…そういう意味ではご加護があったと言えるのかもしれませんね。」
「なるほどねー。人数いれば誰かが聖水持っているかもしれないし、魔物も大人数がまとまっていたんじゃ狙いづらいだろうからね、いい判断したよ。…んで、ギルの野郎は何となく予想つくけど?」
「聖水はもともと持ち合わせていなかったが、使うと野生動物も逃げてしまうだろう。それだと食料確が保しにくくなる。」
「はい、野生児ー!だと思いました!」
「本当、よく生き残れましたね…。さすが英雄。」
「大型の魔物には会わなかったしな。」
「そもそも聖水なしで行動するって判断しねーのよ、普通は!…ま、魔物は対策できても盗賊なんかの人間まで防ぐことはできねぇだろうからな、順番で番をするぞ。メアリちゃんも、非常に心が痛むけど、これだけはお願いね!」
「もちろんです!何かあれば、ギルさんを起こせばいいんですね。」
「そうだな。」
「あのメアリちゃん、俺様でもいいのよ…?…まぁ基本的には宿をとっているんだが、今回はな。」
「あと寝るときロランさんは少し離れてください。」
「露骨過ぎないメアリちゃん!?でも冷静な判断ができてて素晴らしい!」
結局、ロランさん、ギルさん、私の順で見張りを交代しながら一夜を過ごした。慣れない環境に緊張してなかなか仮眠をとることができなかったので、今後はぜひ宿をとっていただきたい…。朝起きてすぐにぎゃんぎゃんと元気に喧嘩をしているギルさんとロランさんを見て強く思った。
私、この二人の旅に同行して体力大丈夫だろうか。
「…はい。」
「…。」
「あらら、あんまりご納得いただけてない感じ?」
「お前の言っていることは理解できる。…だがそう上手くいくか…。」
「そんときゃそん時。頭使うのが苦手な奴がどんなに頭捻ったってわかりゃしねぇよ。」
「…。」
「無理だと判断した時にまた考えりゃいいのさ。少なくとも、俺様はそうやって生きてきたんだぜ?何だかんだ、なるようになるもんよ。」
「…そう、ですね。行動しなければ、見えてこないこともありますよね。」
「そうなのよー!メアリちゃん、不安かもしれないけど、俺様がちゃーんとエスコートするからねー!」
「は、はぁ…。」
今後の方針がある程度固まったのが嬉しいのか、ロランさんはかなりテンションが高い。…いや元からだろうか。向けられる笑顔にどう返したらいいものかと、あいまいな返事になってしまう。
「んじゃ、今夜の見張りはギルの野郎にお任せして、俺様達はゆっくり休もうぜー!」
「ふざけんな。」
「ふざけないでください。」
「んもー、ちょっとした冗談じゃないのよー。」
「冗談でもやめてください。いくら町が近くにあろうと、魔物に出くわさないとは限らないんですから…。」
「俺様こう見えてもベテランよ?そこんところも抜かりないって。」
警備が敷かれている大きな街があるような地域ならいざ知らず、地方の街道なんかでは魔物を見かけることは珍しくない。大人しい小動物程度の大きさの魔物だったらそこまで脅威ではないかもしれないが、まかり間違ってドラゴンのような大型で凶暴な魔物に遭遇してしまったら…その時点で人生終了だ。
ロランさんもその部分は心得ているようで、冗談を言いながらも荷物の中から取り出したのは水の入った小瓶。
「両翼に十字架…。本物の聖水だな。」
「もちろんよ。金をかけるべきところにはしっかりかける男なの、俺様。これがなきゃ、魔獣が怖くて一人旅なんかできやしないからなぁ。」
その分値が張るのが痛いけど、と言いながら私たちの野営地の周りに振りまいていく。この聖水は自身に害なすものを退ける力があるとされている。主に魔物を寄せ付けないために使用されることが多い。これは教会の聖職者が祈りを込めて作っているもので、ロランさんのように町を行き来するような人たちにとっては必須。非常に需要も多いため、高価で売買され偽物も出回っている。本物には両翼を携えた十字架、という教会を示す紋章が彫られているのだが、それも真似るものも多く闇市で手に入れる際は注意が必要だ。…そもそもそんなありがたいものを闇市で買おうというのもどうかと思うが、教会で直接購入する際もかなり高価なので何とも言えない。
とにかく、旅の必需品と言っても過言ではない。そんな存在を、私もギルさんも持ち合わせていなかった。
「メアリちゃん、よくここまで無事だったね。女神さまの加護でもあるのかな?」
「いえ、単に旅をしている団体に同行させていただいただけです。優しい方々にお会いしまして。…そういう意味ではご加護があったと言えるのかもしれませんね。」
「なるほどねー。人数いれば誰かが聖水持っているかもしれないし、魔物も大人数がまとまっていたんじゃ狙いづらいだろうからね、いい判断したよ。…んで、ギルの野郎は何となく予想つくけど?」
「聖水はもともと持ち合わせていなかったが、使うと野生動物も逃げてしまうだろう。それだと食料確が保しにくくなる。」
「はい、野生児ー!だと思いました!」
「本当、よく生き残れましたね…。さすが英雄。」
「大型の魔物には会わなかったしな。」
「そもそも聖水なしで行動するって判断しねーのよ、普通は!…ま、魔物は対策できても盗賊なんかの人間まで防ぐことはできねぇだろうからな、順番で番をするぞ。メアリちゃんも、非常に心が痛むけど、これだけはお願いね!」
「もちろんです!何かあれば、ギルさんを起こせばいいんですね。」
「そうだな。」
「あのメアリちゃん、俺様でもいいのよ…?…まぁ基本的には宿をとっているんだが、今回はな。」
「あと寝るときロランさんは少し離れてください。」
「露骨過ぎないメアリちゃん!?でも冷静な判断ができてて素晴らしい!」
結局、ロランさん、ギルさん、私の順で見張りを交代しながら一夜を過ごした。慣れない環境に緊張してなかなか仮眠をとることができなかったので、今後はぜひ宿をとっていただきたい…。朝起きてすぐにぎゃんぎゃんと元気に喧嘩をしているギルさんとロランさんを見て強く思った。
私、この二人の旅に同行して体力大丈夫だろうか。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。
とあるおっさんのVRMMO活動記
椎名ほわほわ
ファンタジー
VRMMORPGが普及した世界。
念のため申し上げますが戦闘も生産もあります。
戦闘は生々しい表現も含みます。
のんびりする時もあるし、えぐい戦闘もあります。
また一話一話が3000文字ぐらいの日記帳ぐらいの分量であり
一人の冒険者の一日の活動記録を覗く、ぐらいの感覚が
お好みではない場合は読まれないほうがよろしいと思われます。
また、このお話の舞台となっているVRMMOはクリアする事や
無双する事が目的ではなく、冒険し生きていくもう1つの人生が
テーマとなっているVRMMOですので、極端に戦闘続きという
事もございません。
また、転生物やデスゲームなどに変化することもございませんので、そのようなお話がお好みの方は読まれないほうが良いと思われます。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる