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交渉②
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「…交渉?」
「…何の話だ。」
「簡単な話よ。俺様と一緒に旅がしたいってんなら、俺様に何か得なことがないとね?」
あ、メアリちゃんはいいのよー、大歓迎!なんて言ってはいるが、つまり旅をするために対価を提示しろってことか…。私はすでに兵士からお金で助けてもらっているし、反論できる立場にないのかもしれない。でもその分支払おうにも、今まともに手持ちがないし…。
「さ、どうなのよ。俺様にお得な何か、提示できる?」
「…得か…。得なものは今のところ思いつかないな。」
「あらそう?んじゃ、今日限りでさようならってことで…。」
「だが、お前を仕留めることはさほど難しいことじゃない。」
「…は?」
「俺はお前とどうしても一緒に行動したいわけじゃない。お前の持っている道具も、お前を仕留めてから…。」
「もーいや!この脳筋野生児!暴力に物を言わせて解決しようとするんじゃないよ!交渉って言ってるでしょ、意味分かる!?」
「…。」
「黙って見つめるな、本気って感じが伝わってきてホント嫌。分かったよ、あんたはその腕っぷしが交渉材料ね!俺様ってばひどい目にあってばっかり…。」
しくしくと泣く振りをしているロランさんを黙って見つめているギルさん。そりゃ騎士として戦ってきた人からしてみれば、護身用の剣を一本携えた程度の旅商人を一人捻るくらい訳はないのだろうが…。それを交渉材料にするとは。…まさか本気で実行するつもりだった、なんてことはないだろう。そう信じたい。若干の不安を感じながらも、三人の食材を出し合って今晩の夕食を考える。案の定、というか、ロランさんが一番量も種類も多い。まぁ商品として持っているものもあるそうなので、節約できるに越したことはないだろう。日持ちしないものから先に消費できるように、整理も同時に行っておこう。
「…私、私も、何か渡せるものがあれば…。」
「んもー、メアリちゃんったら。女の子はいいの、野郎の場合は俺様の精神衛生上対価を支払ってもらうけど、女の子だったら大歓迎!」
「そういうわけには。このままだと、私はあなたに買われたという事実が残ってしまいます。」
「…。」
一通りの支度を終えて、揺れる火を見て私も何か渡せるものがないか考える。ここで何を提示できるかで、私とロランさんが対等になれるかどうかが決まる。…すでに一つ恩があると言われても、反論できない状態ではあるのだが。このまま、彼が取引した商品のように付いてくなんて、とんでもない。あの町で起きたことは、私にとって適当に流してはい終わり、なんてことにはできないのだ。私は誰の所有物にもならない。私の主人は、私自身だけ。
「…俺様結構適当なこと言ってたけどさ、正直、どうでもいいんだよね。ホントよ?あの時兵士どもに渡した金だって、袋の中身の大半は程よいサイズの石ころ詰めて渡したの。袋の上の方に金が見えるようにして、下の方は石。2袋渡しても大した痛手にゃなってないの。」
「…どうして。」
なぜそんなことをしたのだろう。ロランさんはギルさん以上に私に構う理由はないはず。むしろ旅商人なんて肩書を考えると、人の行き来や取り締まりを行っている兵士にはコネがあった方がいいはず。機嫌を損ねたりするのは不利益でしかない。あの場を収めるためとはいえ、かなり危険な橋だったことには違いないし…。
「言ったでしょー?俺様、女の子には優しいって。…それに、あーいった腐った野郎を見てると、吐き気がするもんでね。」
「…俺はお前をただの嫌な奴だと思っていたが、勘違いだったようだな。認識を改める。」
「おやおや、そーなのぉ?ここは年長者として敬ってもらっていいのよ?」
「…おっさんなのか。」
「お兄さん!だろうが!この考えなしの野蛮人が!頭に来たので今晩ギル君のスープの具は少なめに盛りまーす。」
「…悪かったよ。」
そう言いながら、ロランさんは焚火にかけられた鍋からスープをよそいだした。ギルさんに渡されたお椀は明らかに汁気が多い。というか、まだ煮始めてから時間が経っていないので、それまだ少し色がついただけのお湯ですよ。
「…何の話だ。」
「簡単な話よ。俺様と一緒に旅がしたいってんなら、俺様に何か得なことがないとね?」
あ、メアリちゃんはいいのよー、大歓迎!なんて言ってはいるが、つまり旅をするために対価を提示しろってことか…。私はすでに兵士からお金で助けてもらっているし、反論できる立場にないのかもしれない。でもその分支払おうにも、今まともに手持ちがないし…。
「さ、どうなのよ。俺様にお得な何か、提示できる?」
「…得か…。得なものは今のところ思いつかないな。」
「あらそう?んじゃ、今日限りでさようならってことで…。」
「だが、お前を仕留めることはさほど難しいことじゃない。」
「…は?」
「俺はお前とどうしても一緒に行動したいわけじゃない。お前の持っている道具も、お前を仕留めてから…。」
「もーいや!この脳筋野生児!暴力に物を言わせて解決しようとするんじゃないよ!交渉って言ってるでしょ、意味分かる!?」
「…。」
「黙って見つめるな、本気って感じが伝わってきてホント嫌。分かったよ、あんたはその腕っぷしが交渉材料ね!俺様ってばひどい目にあってばっかり…。」
しくしくと泣く振りをしているロランさんを黙って見つめているギルさん。そりゃ騎士として戦ってきた人からしてみれば、護身用の剣を一本携えた程度の旅商人を一人捻るくらい訳はないのだろうが…。それを交渉材料にするとは。…まさか本気で実行するつもりだった、なんてことはないだろう。そう信じたい。若干の不安を感じながらも、三人の食材を出し合って今晩の夕食を考える。案の定、というか、ロランさんが一番量も種類も多い。まぁ商品として持っているものもあるそうなので、節約できるに越したことはないだろう。日持ちしないものから先に消費できるように、整理も同時に行っておこう。
「…私、私も、何か渡せるものがあれば…。」
「んもー、メアリちゃんったら。女の子はいいの、野郎の場合は俺様の精神衛生上対価を支払ってもらうけど、女の子だったら大歓迎!」
「そういうわけには。このままだと、私はあなたに買われたという事実が残ってしまいます。」
「…。」
一通りの支度を終えて、揺れる火を見て私も何か渡せるものがないか考える。ここで何を提示できるかで、私とロランさんが対等になれるかどうかが決まる。…すでに一つ恩があると言われても、反論できない状態ではあるのだが。このまま、彼が取引した商品のように付いてくなんて、とんでもない。あの町で起きたことは、私にとって適当に流してはい終わり、なんてことにはできないのだ。私は誰の所有物にもならない。私の主人は、私自身だけ。
「…俺様結構適当なこと言ってたけどさ、正直、どうでもいいんだよね。ホントよ?あの時兵士どもに渡した金だって、袋の中身の大半は程よいサイズの石ころ詰めて渡したの。袋の上の方に金が見えるようにして、下の方は石。2袋渡しても大した痛手にゃなってないの。」
「…どうして。」
なぜそんなことをしたのだろう。ロランさんはギルさん以上に私に構う理由はないはず。むしろ旅商人なんて肩書を考えると、人の行き来や取り締まりを行っている兵士にはコネがあった方がいいはず。機嫌を損ねたりするのは不利益でしかない。あの場を収めるためとはいえ、かなり危険な橋だったことには違いないし…。
「言ったでしょー?俺様、女の子には優しいって。…それに、あーいった腐った野郎を見てると、吐き気がするもんでね。」
「…俺はお前をただの嫌な奴だと思っていたが、勘違いだったようだな。認識を改める。」
「おやおや、そーなのぉ?ここは年長者として敬ってもらっていいのよ?」
「…おっさんなのか。」
「お兄さん!だろうが!この考えなしの野蛮人が!頭に来たので今晩ギル君のスープの具は少なめに盛りまーす。」
「…悪かったよ。」
そう言いながら、ロランさんは焚火にかけられた鍋からスープをよそいだした。ギルさんに渡されたお椀は明らかに汁気が多い。というか、まだ煮始めてから時間が経っていないので、それまだ少し色がついただけのお湯ですよ。
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