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おかえり
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お父さんから聞かされた急な知らせは、
ほどなくしてお城から正式な形で魔獣の退治が完了したとの発表と共に国民全体に知らされることとなった。
撤収作業が進んだ部隊から順次戻ってくるということで、戻ってくる期間のばらつきはあるものの、
街を挙げての祝いの宴を数日間開催されることとなった。
これから戻ってくるであろう英雄たちを迎えようと、街の人たちは今から盛り上がっている。
そんな中、今回の作戦の関係者でもある私たちは、一旦お城へと集められることとなった。
「諸君たちの働きもあって、今回の作戦は成功を収めることができた。
英雄たちの凱旋はこれからだが、先んじて皆には感謝を。よくぞやってくれた!」
王様からの労いの言葉に、お偉いさん方は畏まって頭を下げている。
その様子を見て、私たちも慌てて倣う。…こういう場所って慣れないんだもの…。
王様の側には、作戦指揮に出ているカイル王子ではなく、弟のキール王子が控えていた。
…何となくこちらを見ている気がするが、気のせい気のせい。
そして驚いたのが、王妃様も同席していたということだ。
これまで正式な場でも見かけることが無かったから…。
ベールで顔を覆っておられて表情はうかがえないが、その凛とした佇まいから気品が感じられる。
「これから英雄たちを迎えるために街中が賑わうだろうが、
諸君らも羽を伸ばしてこれまでの疲れを癒してほしい。」
ありがたいお言葉もそこそこに、私たちは解散となった。
どこも人手は足りていないだろうから、何か手伝いができないか早めに戻って確認しなければ。
「まずは、骨つき肉はお手伝い必須よね。」
「少し前に、店長の息子が帰ってきて手伝っちゃいるが、人出はいくらでも欲しいな。
ましてやこれから何日もどんちゃん騒ぎするってんだろ?どうなることやら…。」
「ぼ、僕も骨つき肉に行こうか…?」
「うーん…。一旦師匠に確認してからにしようかしら。ある程度薬の補充をしておいたら安心だろうし。」
これからの動きを相談しながら一度すずらんへ戻る道を急いでいると、後ろから私たちを呼ぶ声が聞こえる。
振返ってみると、お城の方から兵士の方が走ってきている。…何かあったのだろうか。
「申し訳ありません!何でも屋の方々でお間違いないでしょうか。」
「そうですが、何か?」
「カイル様がお戻りになられまして。…お話ししたいことがあると。」
「…。」
「そ、それって…。」
「…おい、ユイ。」
急に指先から熱が失われていく。
それなのに頭の中では心臓の音が響いているし、目の奥が熱い。
何も考えるな。まだ何も聞いてないじゃない。ただ、話があるってだけなんだから…!
「…わかりました、伺います。」
「それで…、カイル様からは代表の方1名で来ていただくようにと…。」
「はぁ?どういうことだよ。」
「それが、自分も詳しい話は…。」
「ど、どうする…?誰が…。」
「私が行く。」
「無理すんな。オレが…。」
「私が行く。…私が、行かなきゃ。」
「…分かったよ。行くぞ、アレックス。」
「う、うん…。ユイさん!…気をつけてね…。」
「ありがとう。そっちもね。」
申し訳なさそうにしている兵士の方の案内に従って、お城への道を引き返していく。
3人ではなく、代表者だけ呼ぶなんて…。とにかく、早くカイル様に会わなければ。
「…あぁ、急にお呼びして申し訳ありません。」
「…今回の作戦の成功、おめでとうございます。最前線での指揮も、お疲れ様です。」
「いやぁ、何でも屋の皆さんの綿密な準備があってこそでしたよ。
…さて、積もる話は色々とあるのですが、早速本題に入りたいと思います。」
「…。」
「まずは、お預かりした手紙についてですが、無事にお渡しすることができましたよ。
内容もしっかり確認していたようです。」
「…ありがとうございます。」
「その上で、彼の意見も伺ってみましたが、彼なりに考えることもあったようで…。」
そうカイル様が言葉を続けようとしたところに、ドアをノックする音が転がり込んだ。
私が言うことではないけれど、王子と来客が話をしているところに来るのだから、何か急ぎの用だろうか。
カイル様は思い当たる節があるのか、誰であるかも確認しないままドアへと向かっていく。
「意外と時間がかかりましたねぇ。…どうぞ。」
滑らかにドアが開いた。その先にいたのは…。
「…ウィル?」
「…えっと。」
左腕を三角巾で吊ったウィルが、そこに立っていた。
少し髪は伸びて、少しやつれたようにも見えるけど、間違いない。
「じゃ、私はここでお暇いたします。まだやるべきことが残っていますので、ね!」
ウィルが入って一旦閉められたドアをもう一度開けると、今度はそこにキール王子が…、え?
「キール、王族ともあろうものが聞き耳とは…。
そういうことは、他のものにこっそりさせて、ばれないようにするものです。」
指摘する部分違いません?聞き耳を立てること自体がいけないことだと思うのですが?
何やらごにょごにょと言い訳をしているキール王子の首根っこをつかみ、カイル王子は部屋から出てしまう。
え、何、私たち残して行っちゃうの?
「あ、話が終わったら、近くの兵士に話しかけて自由に帰っていただいて結構ですので。
ごゆっくり。」
バタン。
ドアの閉まる音が、やけに大きく響く。
私のウィルも、しばらく黙ったまま何も言葉が出なかった。
「…。」
「…あの、ユイさん。その…。」
ウィルが何か話し出した時、私はガタリとソファを立った。
驚いた顔をしているウィルにツカツカと近づいて、目の前に立つ。
一つ深く呼吸をして…。
「どんだけ心配したと思ってんのよ!相談もなしに勝手に出て行っちゃって!おかえり!!」
「は、はい…。…ただいま…。」
一息で言い切った私に目を丸くしているウィルを尻目に、ドスドスと足音を立てながらドアへと向かっていく。
そのままの勢いでドアをバーンを開け放ち、こちらを振り返った兵士に帰ります!と怒鳴るように伝える。
返事を聞かないまま早足に進んでいく私に慌てて、
道案内しようと兵士が駆け寄ってくる気配がするが、もう一つ足音が足りない。
「ウィル!何してんのよ!帰るわよ!!」
出てきた部屋に向かって叫ぶとバタバタと足音が響く。
本人の姿を確認しないまま足早に帰路に就く。
城から出る頃には足音は私のすぐ後ろにくっついていたが、振り返ることはできなかった。
今振り返ったら、眼の淵から涙があふれてしまうから。
―――
「こうして、この何でも屋はのちにこのギルドへと形を変えて活動していくことになったのです!」
「いやなっが!このギルドの成り立ちの説明って言ってたけど、なっが!!
ついつい話を最後まで聞いてしまったけども、めちゃめちゃ長い!!」
「そうですか?ギルドに登録する方には必ず行っているんですけど…。」
「全員に!?時間かかりすぎるでしょ!通常業務どうなってんだ!」
「あ、あとウィルさんが合流してからギルドになるまでの活躍をまとめた、
『夢への歩み~ギルド結成の勇者達篇~』があるんですが…。」
「もういいです!長編小説かよ!」
故郷の村から王都へ来たはいいものの、仕事をどう探したらいいかも分からず悩んでいたところ、
門の近くに座っていたおじいさんからこのギルドを勧められた。
確かにたくさんの人が出入りするだろうし、情報も多そうだと納得して来てみたが…。
はちゃめちゃに説明が長いんですけど!
まだ説明を聞かなきゃならないのかと、ウンウン唸っていると奥から女性が出てきた。
「何?ハンナ。何か問題でもあったの?」
「それが、説明が長いって…。」
「…あんたまたここの設立に関して言って聞かせてたんじゃないでしょうね?」
「…えへ。」
「もーそれやめなさいって何回言えばいいのよ!恥ずかしいったらないのに!!」
「いいじゃないですかー、設立メンバーの頑張りを知ってもらうことも大事ですよ。」
「あんたの場合は脚色してるから嫌なの!」
「あの話全部嘘なんか!?」
「嘘じゃないですー。ほんのちょーっとドラマチックに仕上げているだけで…。私作家志望なので!」
「誰も聞いてないわ!」
ぎゃいぎゃいと受付を担当してくれているハンナさんと言い合っていると、
注意してくれた女性が場を仕切るように手をパンパンと叩いて話を中断させた。
「もう分かった。お兄さん、名前は?」
「え、あ、ライです、けど。」
「そう、ライ。基本的なギルドの利用方法は知っているかしら?
ギルドに登録していない人でも、依頼を出すことはできるけど、
その依頼を受け持つのは登録した人しかできないわ。
つまりあなたは、依頼を解決して誰かを助けることができる人になるということよ。
…その責任をしっかり理解している?」
「は、はい。」
「ならばよし!この用紙に名前を書いて出したら、登録完了よ。」
「あ、ありがとうございます!い、いいんですか…?」
また長い説明を聞かなきゃならないと思っていたら、
なんとその女性は名前を書類に書いて出すという最短ルートで登録を済ませてくれるという。
願ってもいない対応だが、果たしていいのだろうかとおずおずと確認する。
するとその女性はにっこりと笑った。
「いいのよ、ギルドマスターが認めます!」
「ギルドマスター…。じゃああなたが!」
「ちょっとツンデレっぽいけど本当はさみしがりやな感じもするユイさんですか!?」
その一言を聞いたユイさんは笑顔を崩さないまま、早く書かないと登録取り下げるわよ、と低い声で言った。
目は笑っていない。本気のやつだ。
すぐ書きます!と急いで書類を書き上げて提出する。
それを受け取り不備がないか確認したユイさんは、登録した者の証、ギルドカードを差し出してくる。
「確かに登録いたしました。あなたの旅路が良いものでありますように。
ようこそ、ギルド『冒険者』へ!」
よろしくお願いします!と大きな声であいさつした俺を見て、今度こそユイさんはにっこりと笑って頷いた。
こうして、新たな冒険の道へと繋がっていくのだろう。
ほどなくしてお城から正式な形で魔獣の退治が完了したとの発表と共に国民全体に知らされることとなった。
撤収作業が進んだ部隊から順次戻ってくるということで、戻ってくる期間のばらつきはあるものの、
街を挙げての祝いの宴を数日間開催されることとなった。
これから戻ってくるであろう英雄たちを迎えようと、街の人たちは今から盛り上がっている。
そんな中、今回の作戦の関係者でもある私たちは、一旦お城へと集められることとなった。
「諸君たちの働きもあって、今回の作戦は成功を収めることができた。
英雄たちの凱旋はこれからだが、先んじて皆には感謝を。よくぞやってくれた!」
王様からの労いの言葉に、お偉いさん方は畏まって頭を下げている。
その様子を見て、私たちも慌てて倣う。…こういう場所って慣れないんだもの…。
王様の側には、作戦指揮に出ているカイル王子ではなく、弟のキール王子が控えていた。
…何となくこちらを見ている気がするが、気のせい気のせい。
そして驚いたのが、王妃様も同席していたということだ。
これまで正式な場でも見かけることが無かったから…。
ベールで顔を覆っておられて表情はうかがえないが、その凛とした佇まいから気品が感じられる。
「これから英雄たちを迎えるために街中が賑わうだろうが、
諸君らも羽を伸ばしてこれまでの疲れを癒してほしい。」
ありがたいお言葉もそこそこに、私たちは解散となった。
どこも人手は足りていないだろうから、何か手伝いができないか早めに戻って確認しなければ。
「まずは、骨つき肉はお手伝い必須よね。」
「少し前に、店長の息子が帰ってきて手伝っちゃいるが、人出はいくらでも欲しいな。
ましてやこれから何日もどんちゃん騒ぎするってんだろ?どうなることやら…。」
「ぼ、僕も骨つき肉に行こうか…?」
「うーん…。一旦師匠に確認してからにしようかしら。ある程度薬の補充をしておいたら安心だろうし。」
これからの動きを相談しながら一度すずらんへ戻る道を急いでいると、後ろから私たちを呼ぶ声が聞こえる。
振返ってみると、お城の方から兵士の方が走ってきている。…何かあったのだろうか。
「申し訳ありません!何でも屋の方々でお間違いないでしょうか。」
「そうですが、何か?」
「カイル様がお戻りになられまして。…お話ししたいことがあると。」
「…。」
「そ、それって…。」
「…おい、ユイ。」
急に指先から熱が失われていく。
それなのに頭の中では心臓の音が響いているし、目の奥が熱い。
何も考えるな。まだ何も聞いてないじゃない。ただ、話があるってだけなんだから…!
「…わかりました、伺います。」
「それで…、カイル様からは代表の方1名で来ていただくようにと…。」
「はぁ?どういうことだよ。」
「それが、自分も詳しい話は…。」
「ど、どうする…?誰が…。」
「私が行く。」
「無理すんな。オレが…。」
「私が行く。…私が、行かなきゃ。」
「…分かったよ。行くぞ、アレックス。」
「う、うん…。ユイさん!…気をつけてね…。」
「ありがとう。そっちもね。」
申し訳なさそうにしている兵士の方の案内に従って、お城への道を引き返していく。
3人ではなく、代表者だけ呼ぶなんて…。とにかく、早くカイル様に会わなければ。
「…あぁ、急にお呼びして申し訳ありません。」
「…今回の作戦の成功、おめでとうございます。最前線での指揮も、お疲れ様です。」
「いやぁ、何でも屋の皆さんの綿密な準備があってこそでしたよ。
…さて、積もる話は色々とあるのですが、早速本題に入りたいと思います。」
「…。」
「まずは、お預かりした手紙についてですが、無事にお渡しすることができましたよ。
内容もしっかり確認していたようです。」
「…ありがとうございます。」
「その上で、彼の意見も伺ってみましたが、彼なりに考えることもあったようで…。」
そうカイル様が言葉を続けようとしたところに、ドアをノックする音が転がり込んだ。
私が言うことではないけれど、王子と来客が話をしているところに来るのだから、何か急ぎの用だろうか。
カイル様は思い当たる節があるのか、誰であるかも確認しないままドアへと向かっていく。
「意外と時間がかかりましたねぇ。…どうぞ。」
滑らかにドアが開いた。その先にいたのは…。
「…ウィル?」
「…えっと。」
左腕を三角巾で吊ったウィルが、そこに立っていた。
少し髪は伸びて、少しやつれたようにも見えるけど、間違いない。
「じゃ、私はここでお暇いたします。まだやるべきことが残っていますので、ね!」
ウィルが入って一旦閉められたドアをもう一度開けると、今度はそこにキール王子が…、え?
「キール、王族ともあろうものが聞き耳とは…。
そういうことは、他のものにこっそりさせて、ばれないようにするものです。」
指摘する部分違いません?聞き耳を立てること自体がいけないことだと思うのですが?
何やらごにょごにょと言い訳をしているキール王子の首根っこをつかみ、カイル王子は部屋から出てしまう。
え、何、私たち残して行っちゃうの?
「あ、話が終わったら、近くの兵士に話しかけて自由に帰っていただいて結構ですので。
ごゆっくり。」
バタン。
ドアの閉まる音が、やけに大きく響く。
私のウィルも、しばらく黙ったまま何も言葉が出なかった。
「…。」
「…あの、ユイさん。その…。」
ウィルが何か話し出した時、私はガタリとソファを立った。
驚いた顔をしているウィルにツカツカと近づいて、目の前に立つ。
一つ深く呼吸をして…。
「どんだけ心配したと思ってんのよ!相談もなしに勝手に出て行っちゃって!おかえり!!」
「は、はい…。…ただいま…。」
一息で言い切った私に目を丸くしているウィルを尻目に、ドスドスと足音を立てながらドアへと向かっていく。
そのままの勢いでドアをバーンを開け放ち、こちらを振り返った兵士に帰ります!と怒鳴るように伝える。
返事を聞かないまま早足に進んでいく私に慌てて、
道案内しようと兵士が駆け寄ってくる気配がするが、もう一つ足音が足りない。
「ウィル!何してんのよ!帰るわよ!!」
出てきた部屋に向かって叫ぶとバタバタと足音が響く。
本人の姿を確認しないまま足早に帰路に就く。
城から出る頃には足音は私のすぐ後ろにくっついていたが、振り返ることはできなかった。
今振り返ったら、眼の淵から涙があふれてしまうから。
―――
「こうして、この何でも屋はのちにこのギルドへと形を変えて活動していくことになったのです!」
「いやなっが!このギルドの成り立ちの説明って言ってたけど、なっが!!
ついつい話を最後まで聞いてしまったけども、めちゃめちゃ長い!!」
「そうですか?ギルドに登録する方には必ず行っているんですけど…。」
「全員に!?時間かかりすぎるでしょ!通常業務どうなってんだ!」
「あ、あとウィルさんが合流してからギルドになるまでの活躍をまとめた、
『夢への歩み~ギルド結成の勇者達篇~』があるんですが…。」
「もういいです!長編小説かよ!」
故郷の村から王都へ来たはいいものの、仕事をどう探したらいいかも分からず悩んでいたところ、
門の近くに座っていたおじいさんからこのギルドを勧められた。
確かにたくさんの人が出入りするだろうし、情報も多そうだと納得して来てみたが…。
はちゃめちゃに説明が長いんですけど!
まだ説明を聞かなきゃならないのかと、ウンウン唸っていると奥から女性が出てきた。
「何?ハンナ。何か問題でもあったの?」
「それが、説明が長いって…。」
「…あんたまたここの設立に関して言って聞かせてたんじゃないでしょうね?」
「…えへ。」
「もーそれやめなさいって何回言えばいいのよ!恥ずかしいったらないのに!!」
「いいじゃないですかー、設立メンバーの頑張りを知ってもらうことも大事ですよ。」
「あんたの場合は脚色してるから嫌なの!」
「あの話全部嘘なんか!?」
「嘘じゃないですー。ほんのちょーっとドラマチックに仕上げているだけで…。私作家志望なので!」
「誰も聞いてないわ!」
ぎゃいぎゃいと受付を担当してくれているハンナさんと言い合っていると、
注意してくれた女性が場を仕切るように手をパンパンと叩いて話を中断させた。
「もう分かった。お兄さん、名前は?」
「え、あ、ライです、けど。」
「そう、ライ。基本的なギルドの利用方法は知っているかしら?
ギルドに登録していない人でも、依頼を出すことはできるけど、
その依頼を受け持つのは登録した人しかできないわ。
つまりあなたは、依頼を解決して誰かを助けることができる人になるということよ。
…その責任をしっかり理解している?」
「は、はい。」
「ならばよし!この用紙に名前を書いて出したら、登録完了よ。」
「あ、ありがとうございます!い、いいんですか…?」
また長い説明を聞かなきゃならないと思っていたら、
なんとその女性は名前を書類に書いて出すという最短ルートで登録を済ませてくれるという。
願ってもいない対応だが、果たしていいのだろうかとおずおずと確認する。
するとその女性はにっこりと笑った。
「いいのよ、ギルドマスターが認めます!」
「ギルドマスター…。じゃああなたが!」
「ちょっとツンデレっぽいけど本当はさみしがりやな感じもするユイさんですか!?」
その一言を聞いたユイさんは笑顔を崩さないまま、早く書かないと登録取り下げるわよ、と低い声で言った。
目は笑っていない。本気のやつだ。
すぐ書きます!と急いで書類を書き上げて提出する。
それを受け取り不備がないか確認したユイさんは、登録した者の証、ギルドカードを差し出してくる。
「確かに登録いたしました。あなたの旅路が良いものでありますように。
ようこそ、ギルド『冒険者』へ!」
よろしくお願いします!と大きな声であいさつした俺を見て、今度こそユイさんはにっこりと笑って頷いた。
こうして、新たな冒険の道へと繋がっていくのだろう。
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