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再度呼び出し!

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カイル王子の引き連れた援軍と共に魔獣退治を続けること早一週間。
俺たちが受け持っていた地域では魔獣の数が激減。
恐らく、援軍が到着したあの瞬間の群れが、この一帯の勢力を集結させたものだったのだろう。
戦いが落ち着き始めると、兵士たちは他の部隊と細々とした連絡を取り合うようになっているようで。
どうやら他の地域でも援軍が来ているらしく、順調に魔獣の数が減っていると報告をやり取りしているとの事だ。
これから他の地域を担当していた部隊と合流しながら、
徐々に活動範囲を狭めていき、この作戦の仕上げの段階に移行すると通達された。
終わりが見えなかったこの作戦も、遂に…。

「ウィルよ、何だか元気がねぇじゃねぇか。そんなにこの戦場が恋しいってのか?」
「ザギルさん、そんなことないですよ。ないですけど…。」

あの死地を経験してから、俺とザギルさんはよくつるむようになっていた。
あまり自分のことを話さない人だけど、その経験からくる話は何度も俺を助けてくれたし、
元来の性格がそうさせているのか、この殺伐とした戦場でもよく相談にも乗ってくれていた。

「もう少しで戦いが終わるってのは、嬉しいです。困っている人達もこれで楽になるし。
 …でも俺、街に戻ったとしても、帰る場所なんてあるのかなって、そう考えるようになったんです…。」
「まだ終わってもいないのに、帰る時の心配たぁ、でかくなったもんだなぁ。」
「…すいません。」
「初めの頃にも言ったかもしれんが、余計なことは考えない方が身のためだぞ。」
「そうですね…。」
「…それに、そん時になったら意外とすんなり事が進むかもしれんぞ?
 案ずるより産むが易しって、昔っから言うだろ?あんまり考えすぎるなよ。」

確かに、まだ戦いが続くっていうのに、気が早いのかもしれない。
明日にはこの野営地を出発して他の部隊の地域へと移動する予定だ。
荷物を整理して早めに休んでおこう。
そう思って、あまり多くはない荷物をカバンに詰めようと手を伸ばした時、天蓋の外から俺を呼ぶ声がする。
顔を覗かせると、そこにいたのは同じ年頃の若い兵士だった。誰かの使いで来たのだろうか。見覚えはない。

「ウィルさんですか?」
「そうですけど、何か?」
「伝言を預かっていまして。明日移動する前に話がしたいと。」

兵士から聞かされたのは、出発する前、つまり今日、話をしておきたいと。
そのために指定された場所に来てほしいという内容だった。
その場所は野営地の範囲内ではあるけれど、あまり人気のない区画。正直話の内容に関わらず行きたくない場所だ。

「誰が俺を呼んでいるんですか?」
「申し訳ありません。自分も上司から言付かっただけですので…。」
「その上司の方が呼んでいるってことではないんですか?」
「特にそういうことではないようで。」

じゃあもっと上の立場の人間が呼んでいる可能性が…?
何かやばいことをした自覚はないが、何かしでかしてしまっていただろうか。

「あ、あともう一つ伝言が。『手紙について』だそうです。」
「行きます。」
「そ、そうですか。では自分はこれで…。」

少し返事を渋っていたが、兵士からもう一つの伝言をもらったことで、話し合いに行くことに決めた。
詳しい話の内容は分からないが、呼び出した人間はあの人だ。
さすがに周りの人間の目がある。直接話に来るのは憚られると言ったところだろう。

「あ、時間の指定があるのか聞くの忘れた…。」

まぁこの状況だ。ましてや明日他の部隊との合流だって控えている。
準備が一段落するまでは話なんてできる状態にはならないだろう。
先に荷造りしてしまってから呼び出された区画に向かおう。

―――

「何であなたが先にここにいるんです?」
「逆に何であなたが後になるんです?」

自分としては十分に余裕を持って来たつもりだけど、呼び出した相手を待たせてしまっていたようだ。
相手が相手だ。さすがにまずかっただろうか…。

「こんな時、世間では『今来たところさ』と言うんですよね?」
「どこで知るんですそんな知識。まぁ男相手にはあまり言わないと思いますけどね。
 それで、わざわざ呼び出してどうしたというんですか、カイル様。」
「ふむ…。呼び出した相手が私であることは伝えさせていなかったはずですが。
 あまり驚いていないようですね?つまらない。」
「俺に届いた手紙のことをチラつかせておいて、秘密にしているつもりだったなんて言いませんよね?
 …一体何の話があるって言うんです。」
「ご機嫌斜めですねー。…その様子だと、話の内容は予想がついているのではありませんか?
 先日お渡しした手紙、確認しましたか?」
「…。」

カイル様の言う通り、ここの話の内容はある程度予想がついていた。
その話のことを考えると俺の気持ちは重くなる。
聞きたくないのは確かだが、聞かなければいけないのも確かなのだ。

「…その様子からするとちゃんと渡されているようですね。
 では本題に入りたいと思います。…あ、そうだ。」
「?」
「ちょっと兄ちゃん、ツラ貸しな。」
「…。」
「これ一回言ってみたかったんですよ。」
「…もう二度と言わない方がいいと思いますよ。」

一体どこで知るんだ、そんな俗っぽい言葉。
その華やかな顔立ちで言われたところで違和感しかない。
王子に憧れるご婦人方が聞いたらショックを受けるでしょうから、ぜひ今後封印していただきたい言葉遣いだ。
言ってみたかった決め台詞を言うことができてホクホクしてる王子に続いて、
呆れてため息をついている俺はその場に適当に腰を下ろして話を聞くことになるのだった。
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