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もう未来が見えない

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「…初めに心配になるような話をしておいて申し訳ないのですが、本来の話し合いに進みたいと思います。」
「…はい。」
「冒険者は順調に集まりつつあります。あと数日で必要な人数に届くかと想定されています。
 人数が集まり次第、作戦が開始されます。」
「…。」

このままだと、数日の内にウィルは魔獣退治に出発してしまう。
どうにかして話をすることはできないかしら。

「…ユイさん?どうかしましたか?」
「あ、あのカイル様。ウィルと、何とか話をすることはできないでしょうか。
 今彼はどこに…。」
「…残念ながら、今回の作戦は人数を正確に確保するために、
 城の一角を彼らに開放して寝泊まりさせているのです。
 関係者でない人間が出入りすることができないように厳重に警備させているのです。」
「何だよそれ。そんな、罪人みたいな扱いしてんのかよ!」
「名簿に記名だけして当日は現場に来ない、何てことがあってはことなのです。
 もちろん、参加申請に来た時点でしっかり説明して、納得して頂けた人のみ作戦に参加、としています。」
「…じゃあ、ウィルと話すことはできないんですか?」
「…えぇ。」

ウィルはこのまま行ってしまうの?

「じゃ、じゃあ!参加を辞退するってことは、できませんか…?」
「辞退は可能ですよ。ですが、それができるのは参加申請に来た本人のみです。」
「はぁ?それじゃ意味ねぇよ!」
「そう言われましても…。」
「そもそも、彼があなた方に参加することを告げず、
 参加申請に来たということがすべてを物語っているのではありませんか?」
「兄様…。」
「…どういうことだよ。」
「あなた方に言えば、反対される、止められるということが分かっていたのでしょう。
 だから何も言わずに1人で参加しようと決めた。そんなところでしょうかね。」

やっぱり、私たちはウィルにとってはその程度の存在だったのかしら。

「…僕たちにできること、もう何もないのかな…?」
「さて…。少なくとも、ウィルさんが考え直して辞退する可能性もなくはないですが…。
 その程度の覚悟で参加申請しているとは思えませんね。
 昔から知っているあなた方であれば、そこのところはよくご存じかと思いますが。」
「…オレたちも魔獣退治に参加するとか。」
「わ、私は反対よ!危ないじゃないの!
 いや、誰かがやらなきゃいけないことだとはわかっているの。でも…、でもそんな…。」

違う、違うの。他の誰かがやってくれるじゃないって、他人任せにするつもりはないの。
でも、やっぱり、皆が行ってしまうのは、その…。
ダメだ、もうよく分からない。

「…今日のところは帰ります。
 我々はこのまま冒険者の募集を続けますが、必要な人数を揃えるのにそう時間はかからないでしょう。
 そこまでに辞退する人間も出てくるでしょうが…、
 このままの申請手続きの多さでいけば、少なくとも作戦を中止するなんてことはないでしょう。」
「…ユイさん、あまり気を落とさずに…。」
「…。」

アルバート様が優しく声をかけてくださっているけれど、それに返事をすることはできなかった。
カイル王子の今後のスケジュールの説明も、全く頭に入ってこない。
気がついたら暗い部屋にぽつんと座っていた。
誰かが入れてくれたお茶が目の前に置いてあったけど、すっかり冷めきっている。
それを飲む気も起きなくて、申し訳なく思いながらも台所に流してしまう。
ちょうど食事の準備を終えたお母さんが心配そうに見ている。
声はかけてこなかった。それがありがたかった。今は1人でいたい。
…今日は疲れた。もう休もう。ベッドにもぐりこむ。
次の日も、私は自分の部屋から出ることができなかった。
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