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原点回帰!
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日々持ち寄られる相談依頼への対応を行う中、私たちは4人はあることを考えるようになっていた。
『魔獣退治をどうするのか?』
私がウィル、レイ、アレックスの3人を誘ったのは、
魔獣退治に必要な装備をそろえることができない程金欠状態であったから。
そう、彼らはもともと魔獣退治のためにこの街に立ち寄った冒険者。
私の考えに賛同してくれてはいるとは思うけど、資金の確保が大命題だったはず。
彼らの資金繰りには関与していないけど、そろそろまとまったお金ができているのではなかろうか。
私の活動に協力してくれているし、こっちも手助けできる部分は手助けしたいわ。
…もし目標金額に届いていたら、彼らは魔獣退治の旅に出てしまうのかしらね。
「お疲れ様、ユイさん。依頼者の人はもう帰ったのかな?」
「ウィル、お疲れ様。ついさっき帰られたわ。今日の相談は今の人で最後ね。緊急の内容でもない限り。」
うーん、と体を伸ばしながら執務室をのぞき込んだウィルに返す。
毎日毎日相談者の話を詳しく聞いていくのも楽じゃないわ。
私の様子を見ながら、困ったようにウィルは一枚の紙をちらつかせている。
…まさか。
「その緊急の内容、かな?って言うのが届いたんだけど…。」
「…仕方ないわね。」
文句を言っていても相談は減らないわ。
ウィルから依頼書を受け取ると、内容に目を通していく。
…この内容は。
「…また同じ。」
「何が同じなんだい?」
「問題が発生している場所、というのかしら。依頼者たちが頭を悩ませている内容が同じというか…。
ともかく、相談内容が似通っているものが最近何通か寄せられているのよね。」
「内容は?」
「この街と南東方面の地域をつないでいる道に、魔獣が頻繁に出没するから何とかしてほしいって内容。
細かい場所は違うんだけど、概要としてはそんな感じ。
物流の重要な道の一つだし、ここが使えなくなると困る人もたくさんいるでしょうから、
そこに関する問題を解決してほしいって人も多いみたい。」
内容が内容なだけに、城へ依頼する予定ではあるのだが、
城への依頼として内容を整理している間にまた同様の内容の依頼が、といった状態でなかなか進んでいないのだ。
既にカイル様とアルバート様には話を通しているから、下準備はしてくださっていると思うけど、
肝心の依頼書をお城に持ち込めていないままだと動きようがねぇ…。
「どうしたものかしら。誰の依頼という形で出したらいいかしらね…。
内容としたらそこまで違いがあるわけではないのだけれど、詳細な場所は違っているし。」
「…いっそのこと、皆の名前で出せたらいいのにね。」
「それよ!」
「え?」
何で依頼者を1名に絞ろうとしていたのかしら!
別に1人からの依頼で出さなければならないって決まっているわけじゃないわよね。…多分!
詳細はカイル様に確認してみるとして…、私たちは私たちで動き出さないと。
後日、私たちの執務室には例の依頼書を持ってきてくれた人たちが一堂に集められていた。
「あの…、今日はこの間出した依頼に関する話し合いだって、聞いてきたんですが…?」
「お前も?俺もなんだが。」
「そっちもですか。」
「皆さん、今日集まっていただいたのは、確かに先日頂いた相談内容に関しての話し合いのためです。
本来であれば、相談内容及び相談された方の情報は他の方に伝わることのないように取り扱っているのですが、
皆さんから寄せられた内容がかなり酷似していたため、合同の話し合いを開催する運びとなりました。
「こちらの地図を。」
周辺の地図を見ながら相談内容を確認していく。
皆口々に「俺はここ」「私はこちらを相談しています」と、問題となっている個所を指さしていく。
私はそれを聞きながら該当地域に印を残していく。
全員の依頼地域を確認して、再度地図を見直してみるとかなりの広範囲となっていることが分かる。
「…これを見ていただければ分かるように、相談内容としては魔獣による被害への対応なのですが、
該当する範囲がかなり広いのです。
誰かの相談内容をそのまま城に持って行ってしまうと、他の地域に影響が出てしまう可能性があります。」
「影響?どのような形であれ、魔獣が退治でもされれば解決するのでは?」
「そうだよな。俺たち皆を困らせている魔獣を倒してくれれば解決だよな!」
「それは皆さんを困らせている魔獣が同じ個体で、かつ単体で活動している場合、です。
もしこれがそれぞれ違う複数の個体で被害が出ているのであれば、
一か所解決したところで状況を大きくは変わりませんでしょう。」
「…確かに。」
「ましてや群れで活動するような魔獣だった場合。
中途半端に魔獣を討伐しても、むしろ群れが分裂して被害が拡散してしまうかもしれません。」
「そんなことがあるんですか?」
「もちろん可能性でしかありません。私たちは魔獣の研究をしているわけでも専門家でもありませんので。」
「そう、あくまで可能性の話です。
ですが皆さんの生活に関わる話ですので、慎重に検討していくべきです。」
皆なるほど…と頷いて納得してくれた。
他の人の依頼内容なんて聞かないってこともあるでしょうけど、
自分が思っているよりも被害を受けている人や範囲が広いことに驚いているようだ。
「じゃあ…どうするんです?こうしている間にも私たちは被害を被っているわけなんですが…。」
「そうです。何とか解決していただかなくては…!」
「そこで!今回皆さんに集まっていただいたんです。」
「…と、いいますと?」
「今回の依頼、正式に城へ持ち込もうと思っているのですが、連名で出すというのはどうでしょうか?」
「連名、可能なのですか?」
「えぇ、城に確認したところ、依頼者が把握できているなら問題ないとのことでした。
ようはこの何でも屋が各依頼者を把握できているなら良い、ということですね。」
「では…。」
「はい。この依頼は該当地域をかなり広範囲に、かつ長期的な依頼として提出したいかと思います。
規模がかなり大きくなってしますので、すぐに解決とはいかなくなってしますが…。
結果としてこの一帯の問題を解決することができるかと思いますので、よろしくお願いします!」
皆じっくり話を聞いて考えていたけれど、最終的に「よろしく頼むよ」と納得してくれた。
かなり長期的な依頼となる。すぐに適切な依頼書を作成して、お城に持って行かなくては。
カイル様もすでに話を通している部分もあるので、依頼書が届き次第調整を行うと約束してくれた。
私たちが関わってきた中で間違いなく一番大きな依頼。
この依頼の行く末が、私たちの活動の行く末を決めると言っても過言じゃないわ。
『魔獣退治をどうするのか?』
私がウィル、レイ、アレックスの3人を誘ったのは、
魔獣退治に必要な装備をそろえることができない程金欠状態であったから。
そう、彼らはもともと魔獣退治のためにこの街に立ち寄った冒険者。
私の考えに賛同してくれてはいるとは思うけど、資金の確保が大命題だったはず。
彼らの資金繰りには関与していないけど、そろそろまとまったお金ができているのではなかろうか。
私の活動に協力してくれているし、こっちも手助けできる部分は手助けしたいわ。
…もし目標金額に届いていたら、彼らは魔獣退治の旅に出てしまうのかしらね。
「お疲れ様、ユイさん。依頼者の人はもう帰ったのかな?」
「ウィル、お疲れ様。ついさっき帰られたわ。今日の相談は今の人で最後ね。緊急の内容でもない限り。」
うーん、と体を伸ばしながら執務室をのぞき込んだウィルに返す。
毎日毎日相談者の話を詳しく聞いていくのも楽じゃないわ。
私の様子を見ながら、困ったようにウィルは一枚の紙をちらつかせている。
…まさか。
「その緊急の内容、かな?って言うのが届いたんだけど…。」
「…仕方ないわね。」
文句を言っていても相談は減らないわ。
ウィルから依頼書を受け取ると、内容に目を通していく。
…この内容は。
「…また同じ。」
「何が同じなんだい?」
「問題が発生している場所、というのかしら。依頼者たちが頭を悩ませている内容が同じというか…。
ともかく、相談内容が似通っているものが最近何通か寄せられているのよね。」
「内容は?」
「この街と南東方面の地域をつないでいる道に、魔獣が頻繁に出没するから何とかしてほしいって内容。
細かい場所は違うんだけど、概要としてはそんな感じ。
物流の重要な道の一つだし、ここが使えなくなると困る人もたくさんいるでしょうから、
そこに関する問題を解決してほしいって人も多いみたい。」
内容が内容なだけに、城へ依頼する予定ではあるのだが、
城への依頼として内容を整理している間にまた同様の内容の依頼が、といった状態でなかなか進んでいないのだ。
既にカイル様とアルバート様には話を通しているから、下準備はしてくださっていると思うけど、
肝心の依頼書をお城に持ち込めていないままだと動きようがねぇ…。
「どうしたものかしら。誰の依頼という形で出したらいいかしらね…。
内容としたらそこまで違いがあるわけではないのだけれど、詳細な場所は違っているし。」
「…いっそのこと、皆の名前で出せたらいいのにね。」
「それよ!」
「え?」
何で依頼者を1名に絞ろうとしていたのかしら!
別に1人からの依頼で出さなければならないって決まっているわけじゃないわよね。…多分!
詳細はカイル様に確認してみるとして…、私たちは私たちで動き出さないと。
後日、私たちの執務室には例の依頼書を持ってきてくれた人たちが一堂に集められていた。
「あの…、今日はこの間出した依頼に関する話し合いだって、聞いてきたんですが…?」
「お前も?俺もなんだが。」
「そっちもですか。」
「皆さん、今日集まっていただいたのは、確かに先日頂いた相談内容に関しての話し合いのためです。
本来であれば、相談内容及び相談された方の情報は他の方に伝わることのないように取り扱っているのですが、
皆さんから寄せられた内容がかなり酷似していたため、合同の話し合いを開催する運びとなりました。
「こちらの地図を。」
周辺の地図を見ながら相談内容を確認していく。
皆口々に「俺はここ」「私はこちらを相談しています」と、問題となっている個所を指さしていく。
私はそれを聞きながら該当地域に印を残していく。
全員の依頼地域を確認して、再度地図を見直してみるとかなりの広範囲となっていることが分かる。
「…これを見ていただければ分かるように、相談内容としては魔獣による被害への対応なのですが、
該当する範囲がかなり広いのです。
誰かの相談内容をそのまま城に持って行ってしまうと、他の地域に影響が出てしまう可能性があります。」
「影響?どのような形であれ、魔獣が退治でもされれば解決するのでは?」
「そうだよな。俺たち皆を困らせている魔獣を倒してくれれば解決だよな!」
「それは皆さんを困らせている魔獣が同じ個体で、かつ単体で活動している場合、です。
もしこれがそれぞれ違う複数の個体で被害が出ているのであれば、
一か所解決したところで状況を大きくは変わりませんでしょう。」
「…確かに。」
「ましてや群れで活動するような魔獣だった場合。
中途半端に魔獣を討伐しても、むしろ群れが分裂して被害が拡散してしまうかもしれません。」
「そんなことがあるんですか?」
「もちろん可能性でしかありません。私たちは魔獣の研究をしているわけでも専門家でもありませんので。」
「そう、あくまで可能性の話です。
ですが皆さんの生活に関わる話ですので、慎重に検討していくべきです。」
皆なるほど…と頷いて納得してくれた。
他の人の依頼内容なんて聞かないってこともあるでしょうけど、
自分が思っているよりも被害を受けている人や範囲が広いことに驚いているようだ。
「じゃあ…どうするんです?こうしている間にも私たちは被害を被っているわけなんですが…。」
「そうです。何とか解決していただかなくては…!」
「そこで!今回皆さんに集まっていただいたんです。」
「…と、いいますと?」
「今回の依頼、正式に城へ持ち込もうと思っているのですが、連名で出すというのはどうでしょうか?」
「連名、可能なのですか?」
「えぇ、城に確認したところ、依頼者が把握できているなら問題ないとのことでした。
ようはこの何でも屋が各依頼者を把握できているなら良い、ということですね。」
「では…。」
「はい。この依頼は該当地域をかなり広範囲に、かつ長期的な依頼として提出したいかと思います。
規模がかなり大きくなってしますので、すぐに解決とはいかなくなってしますが…。
結果としてこの一帯の問題を解決することができるかと思いますので、よろしくお願いします!」
皆じっくり話を聞いて考えていたけれど、最終的に「よろしく頼むよ」と納得してくれた。
かなり長期的な依頼となる。すぐに適切な依頼書を作成して、お城に持って行かなくては。
カイル様もすでに話を通している部分もあるので、依頼書が届き次第調整を行うと約束してくれた。
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この依頼の行く末が、私たちの活動の行く末を決めると言っても過言じゃないわ。
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