某勇者パーティに最も大事にするべき仲間について語ってみた件

ふくまめ

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それって厄介払いでは?

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「さて、ここまでの話で相談内容を吟味する必要があることは、理解いただけましたね?
 異論は…、ございませんね。
 ここで次の問題点に進もうかと思います。それは、相談内容を吟味する人員を割けるかどうかという点です。」

書類をまとめながら、王子はサクサク行きますよーと言わんばかりに会議を仕切っていく。
まぁ結果は決まっているようなものですものね。
無理よ無理。そんな人員あるはずない。
というか、そんな人員がいるんだったら、もっと相談に対して真摯に向かいなさいよって余計印象悪くなるわ。

「…実際問題、難しいかと。
 魔獣被害の対応に多くの人員を割いている状態ですので、相談内容を詳細に確認するような作業は、なかなか。」
「そうでしょうね。いえ、それ自体が悪いことではありません。
 皆さんが言うように、国は優先順位を適切に判断して動く必要があり、魔獣への対応は急務ですから。」

本当、魔獣の存在には頭が痛くなるわね。
全ての物事の動きが、魔獣によって一旦ストップさせられるのよね。
魔獣さえいなければ、いろんなものの動きがスムーズだったし、むしろ起こらなかった問題だってあるでしょうし。
…もしかしたらを考えても仕方がないのは分かっているけど、そう思わずにはいられないわ。

「そこで、何でも屋である彼らの出番、というわけです。
 彼らの相談内容の分析能力と仕分けの適切さは、先ほどの事例で分かっていただけたはず。
 我々では手に余る相談内容の吟味・仕分けを、彼らに委託しようという提案です。
 いやー、ここまで長かったですね。」

この会議、つまりこの部分を話し合いたかったのよね。
お偉いさんの中には現状を理解していない人もいるだろうし?
丁寧に一から説明する必要があったとはいえ、長い道のりだったわ…。

「…能力はさておき、信用に関してはいかがかと思いますがねぇ。」
「そうです!そんなどこの馬の骨ともわからない輩を、国の委託先にするのは反対です!」

口々に私たちは信用できない、功績だって判断しようがないものばかりと、言いたい放題…。
そんな輩が出てくるような状態にしたのは、あんたたちの方でしょうが!

「功績はこれから見ていけばいいし、信用に関しては監督役を置けばいい話です。
 現在すでに監督して下さっている方がいらっしゃるんですよね?」
「あ、はい。薬屋の、魔女の一撃の方にお願いしています。」

師匠の存在を話した途端、
「あの店主が…?」「本当ですか?」「まさか、冗談でしょう。」とまたヒソヒソ話をしている。
ですから師匠、あなたって一体何者なんですか…?

「し、しかし、いくらあの店主とはいえ、一般人の保障では限度がありますよ…。」
「そうですねぇ…。
 国の事業を一部とはいえ託すわけですから、しっかりしたところにお願いしたいというのは当然のこと。
 ではどうでしょう?我々自身が、彼らが事業を任すに値する団体かどうか、見極めるというのは。」

…えっと?それを今話し合っていたのでは…?
もしかして分かっていないのは私だけ?あ、いや後ろの3人も首をかしげている!
お偉いさん方も「は?」って顔してるから、私だけじゃないわね。良かった。

「簡単に言えば、ここでの決定を一旦保留にして、
 今後一定期間彼らの仕事ぶりを観察してから決めるのはいかがでしょう?」
「…彼らの仕事に監査として入るということですかな?」
「堅苦しく考えなくても良いと思いますが、そのようなものですかね。
 彼らの能力と信用に足る人物かどうかを判断できる、いい方法かと思いますよ?」
「しかし、それを実際に行うとして…。
 誰が行うというのです?たたでさえ人手が足りないというのに。」
「その点に関しても考えがあります。」

まぁ不満点を払拭できるなら、それに越したことはないけれど…。
お城から私たちのところに誰か来るってこと?お偉いさんが来るって、なんだか気が重いわね。
できることなら、話の分かる方がいいのだけれど。

「この件、言い出したのはこの私であるわけですから、責任をもって当たらねばなりません。
 当然のことですよね?」
「それは、まぁ…。」
「必然的に、出向く人間も中途半端な人間を選出するわけにはいきません。」
「…えぇ。」
「と、いうことで!
 何でも屋への出向はワタクシ、カイルが行おうかと思います!」
「「「「え”?」」」」

…何言ってんの?
王子ともあろうお方が、どこの馬とも知れない団体に?わざわざ?出向いてくださるなんて…。そんなそんな。
恐れ多すぎて、私たちの手元が狂ってしまいそうですわー。
王子様はどうか、どうかお城で民の平穏な暮らしを祈っておいてくだされば…。
というか、周りの方々がお許しになりませんことよ?ねぇ?

「王子自らですか?」
「それは…。」
「「「良いのではないでしょうか。」」」
「…はい?」
「王子、それは良い考えです!」
「御自ら出向かれるとは、さすがですな!」
「これは監査の結果も期待できますなぁ。」

王子自身が出向くと発表したとたん、今まで渋い顔をしていたお偉いさん方が諸手を挙げて賛同し始めた。
ちょっとちょっと、さっきと反応が違いすぎるじゃない?

「では早速!出向は明日から、ということでよいでしょうか。」
「「「それがよろしいかと。」」」

これって絶対厄介払いじゃない!
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