22 / 40
私たちの存在理由?
しおりを挟む
師匠の下で不安を吐き出し、作戦会議という名のお茶会をした翌日。
私たち4人は再びお城へと赴いていた。
今回は謁見の間ではなく、正式な会議室に通されたわけなんだけど…。
「…。」
「…。」
「…。」
「…。」
この沈黙の空間は何?
広ーい会議室に置かれた、長ーい机にはお偉いさん方が何人も座っているというのに、
誰1人として話し出そうとしない!
この前の謁見も緊張したけれど、これはこれでつらい!お腹がキリキリする…。
どう見ても私たち場違いじゃない。呼び出した王様とカイル王子はまだ来ないし!
「いやー待たせてすまなんだ、皆の者。」
「陛下。」
「今回の会議はどういったことです?」
「仔細を聞かせていただきたい。」
「そうです!早く説明を!」
うわーうるさい!うるさい!
王様が来たとたん、立ち上がって詰め寄っていく大人達。さっきまでの空気はどこに行ったのよ。
まぁまぁと王様が手で制し、皆席に戻るも納得していない様子だ。
中には私たちをあからさまに睨んでいる人もいる。私たちは静かに座っていましたが?
「皆に急に集まってもらったのは他でもない。街で噂の何でも屋についてじゃ。」
「…人々の相談事を解決して回っているという、あの?」
「うむ。何を隠そう、そこに座っている4人組。彼らがその何でも屋なのじゃ!」
一気にその場にいた全員の視線が私たちへと向かう。
どうもどうも…。そんなに私たちって話題になっていたのかしら。とにかく控えめに会釈しておく。
「…そんな紹介のために、我らを集めたわけではありませんよね?」
「もちろんじゃ!今回の会議についてカイルの方から詳しく説明させよう。」
「王子が?」
急に会議室全体がざわつき始める。
「あの会議嫌いの王子が?」「何を企んで…。」「冗談でしょう。」とヒソヒソ近くの席同士で話し合っている。
カイル王子、あなたってお城の中でも評判悪いんです?
「はい。紹介に上がりましたワタクシ、カイルが会議を進めさせていただきます。
一応断っておきますが、私が嫌いなのは会議ではなく、無駄な時間です。誤解のないよう。」
いつもの笑みを浮かべながら話し始める。
話を聞いているお偉いさん方はあからさまにムッとした表情だ。
そんな感じだから味方がいないんですね、承知しました。
遠い目をしていると、席についている全員に何やら書類が配られる。これは…?
「…『苦情対応に関する報告書』。何ですかな王子。これは?」
「そのままの意味ですよ。
魔獣が出現する以前より設置されていた、国民からの苦情に対応する部署の活動報告書になります。
…とはいえ、近年はかなり簡略化されていたというか、ぞんざいに扱われていたというか…。
少々調査に時間がかかりましたが、まぁこんなものでしょう。」
軽く目を通していただけますか、と声をかける王子。
あなたは鼻につくような言い方をしないと気が済まないの?
ほらほら皆嫌そうな顔で書類をめくっているじゃない。
「この調査結果によると、国民から寄せられた苦情に対する実働件数。
こちらが大幅に減少していることが分かります。寄せられている苦情に対応しきれていない、ということです。」
「仕方ないでしょう。我々は国民の御用聞きではないのですから。」
「さよう。魔獣被害は各地で甚大。どちらを優先すべきかは明らかですな。」
資料を一通り眺めた人たち全員がうんうんとうなづいている。そんなことわかりきっていると言わんばかりに。
…私たちだって、分かっていたわよ。
「確かに、我が国は魔獣に悩まされ続けています。
寄せられる相談も、魔獣を退治してほしいという内容が多い。特に最近は。」
「そうでしょう。」
「それはなぜか。何でも屋の皆さんが、生活に密着した内容の依頼をこなしてくれているからです。」
「わ、私たち…?」
「相談自体の数も、若干ですが減少傾向。
恐らく、難易度の高い魔獣退治などの依頼は城に、比較的難易度が低く生活に近い依頼は何でも屋へ。
そんな流れができつつあるからでしょうね。」
「…それに何の問題が?」
「国は国民の細々した悩みにかまっている場合ではないと、国民の方も感じ取っているのでしょう。
下手をすれば、国民のことなどどうでもよいと考えている、そのように感じている国民もいるかもしれません。」
「そんなことが…。」
あくまで可能性の話ですがね、と続けるカイル王子の目は笑っていなかった。
すでに私たちという民間の問題解決団体が出ている以上、ある程度確信があるということかしら。
決して私たちは国に失望しているわけではないのだけれど、
やっぱり国民1人1人に対応することなんてできそうにないとは思っていたかも…。
「…何も悪いことではないのでは?
国民同士が協力し合って解決できないような内容のものは城へ。それ以外は自分たちで何とかする。
ある意味では、それが自然な形で国としても理想かと思いますが。」
「もちろん、国がすべての国民を管理しているわけではない以上、国民の自助は重要です。
難易度や危険度によって、国が介入すべきかどうか判断できるのは画期的。」
「でしたら…。」
「そう、仕分けができていることは何の問題もなく、むしろ良いことです。
問題となるのは、そのことを国主導で行っていないということです。
この相談への実働数が減少しているという現状がありながら、何の対策も講じていない、ということがね。」
…うーん、ちょっと難しくなってきた気がするけど、とにかく私たちがしてきたことへはお咎めなし。
むしろいい流れ!みたいなことよね、うん。
お偉いさん方は、何か思い当たる節があるのかまた近くの席の人とヒソヒソと話し合っている。
どんな結果に持って行きたいのか分からないけど、この会議はカイル王子の手の平の上って感じ。
そんな王子がこちらに向かって笑顔で手をこまねいている。
こっちに来いって?…いやなんですけど。
私たち4人は再びお城へと赴いていた。
今回は謁見の間ではなく、正式な会議室に通されたわけなんだけど…。
「…。」
「…。」
「…。」
「…。」
この沈黙の空間は何?
広ーい会議室に置かれた、長ーい机にはお偉いさん方が何人も座っているというのに、
誰1人として話し出そうとしない!
この前の謁見も緊張したけれど、これはこれでつらい!お腹がキリキリする…。
どう見ても私たち場違いじゃない。呼び出した王様とカイル王子はまだ来ないし!
「いやー待たせてすまなんだ、皆の者。」
「陛下。」
「今回の会議はどういったことです?」
「仔細を聞かせていただきたい。」
「そうです!早く説明を!」
うわーうるさい!うるさい!
王様が来たとたん、立ち上がって詰め寄っていく大人達。さっきまでの空気はどこに行ったのよ。
まぁまぁと王様が手で制し、皆席に戻るも納得していない様子だ。
中には私たちをあからさまに睨んでいる人もいる。私たちは静かに座っていましたが?
「皆に急に集まってもらったのは他でもない。街で噂の何でも屋についてじゃ。」
「…人々の相談事を解決して回っているという、あの?」
「うむ。何を隠そう、そこに座っている4人組。彼らがその何でも屋なのじゃ!」
一気にその場にいた全員の視線が私たちへと向かう。
どうもどうも…。そんなに私たちって話題になっていたのかしら。とにかく控えめに会釈しておく。
「…そんな紹介のために、我らを集めたわけではありませんよね?」
「もちろんじゃ!今回の会議についてカイルの方から詳しく説明させよう。」
「王子が?」
急に会議室全体がざわつき始める。
「あの会議嫌いの王子が?」「何を企んで…。」「冗談でしょう。」とヒソヒソ近くの席同士で話し合っている。
カイル王子、あなたってお城の中でも評判悪いんです?
「はい。紹介に上がりましたワタクシ、カイルが会議を進めさせていただきます。
一応断っておきますが、私が嫌いなのは会議ではなく、無駄な時間です。誤解のないよう。」
いつもの笑みを浮かべながら話し始める。
話を聞いているお偉いさん方はあからさまにムッとした表情だ。
そんな感じだから味方がいないんですね、承知しました。
遠い目をしていると、席についている全員に何やら書類が配られる。これは…?
「…『苦情対応に関する報告書』。何ですかな王子。これは?」
「そのままの意味ですよ。
魔獣が出現する以前より設置されていた、国民からの苦情に対応する部署の活動報告書になります。
…とはいえ、近年はかなり簡略化されていたというか、ぞんざいに扱われていたというか…。
少々調査に時間がかかりましたが、まぁこんなものでしょう。」
軽く目を通していただけますか、と声をかける王子。
あなたは鼻につくような言い方をしないと気が済まないの?
ほらほら皆嫌そうな顔で書類をめくっているじゃない。
「この調査結果によると、国民から寄せられた苦情に対する実働件数。
こちらが大幅に減少していることが分かります。寄せられている苦情に対応しきれていない、ということです。」
「仕方ないでしょう。我々は国民の御用聞きではないのですから。」
「さよう。魔獣被害は各地で甚大。どちらを優先すべきかは明らかですな。」
資料を一通り眺めた人たち全員がうんうんとうなづいている。そんなことわかりきっていると言わんばかりに。
…私たちだって、分かっていたわよ。
「確かに、我が国は魔獣に悩まされ続けています。
寄せられる相談も、魔獣を退治してほしいという内容が多い。特に最近は。」
「そうでしょう。」
「それはなぜか。何でも屋の皆さんが、生活に密着した内容の依頼をこなしてくれているからです。」
「わ、私たち…?」
「相談自体の数も、若干ですが減少傾向。
恐らく、難易度の高い魔獣退治などの依頼は城に、比較的難易度が低く生活に近い依頼は何でも屋へ。
そんな流れができつつあるからでしょうね。」
「…それに何の問題が?」
「国は国民の細々した悩みにかまっている場合ではないと、国民の方も感じ取っているのでしょう。
下手をすれば、国民のことなどどうでもよいと考えている、そのように感じている国民もいるかもしれません。」
「そんなことが…。」
あくまで可能性の話ですがね、と続けるカイル王子の目は笑っていなかった。
すでに私たちという民間の問題解決団体が出ている以上、ある程度確信があるということかしら。
決して私たちは国に失望しているわけではないのだけれど、
やっぱり国民1人1人に対応することなんてできそうにないとは思っていたかも…。
「…何も悪いことではないのでは?
国民同士が協力し合って解決できないような内容のものは城へ。それ以外は自分たちで何とかする。
ある意味では、それが自然な形で国としても理想かと思いますが。」
「もちろん、国がすべての国民を管理しているわけではない以上、国民の自助は重要です。
難易度や危険度によって、国が介入すべきかどうか判断できるのは画期的。」
「でしたら…。」
「そう、仕分けができていることは何の問題もなく、むしろ良いことです。
問題となるのは、そのことを国主導で行っていないということです。
この相談への実働数が減少しているという現状がありながら、何の対策も講じていない、ということがね。」
…うーん、ちょっと難しくなってきた気がするけど、とにかく私たちがしてきたことへはお咎めなし。
むしろいい流れ!みたいなことよね、うん。
お偉いさん方は、何か思い当たる節があるのかまた近くの席の人とヒソヒソと話し合っている。
どんな結果に持って行きたいのか分からないけど、この会議はカイル王子の手の平の上って感じ。
そんな王子がこちらに向かって笑顔で手をこまねいている。
こっちに来いって?…いやなんですけど。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
婚約破棄とか言って早々に私の荷物をまとめて実家に送りつけているけど、その中にあなたが明日国王に謁見する時に必要な書類も混じっているのですが
マリー
恋愛
寝食を忘れるほど研究にのめり込む婚約者に惹かれてかいがいしく食事の準備や仕事の手伝いをしていたのに、ある日帰ったら「母親みたいに世話を焼いてくるお前にはうんざりだ!荷物をまとめておいてやったから明日の朝一番で出て行け!」ですって?
まあ、癇癪を起こすのはいいですけれど(よくはない)あなたがまとめてうちの実家に郵送したっていうその荷物の中、送っちゃいけないもの入ってましたよ?
※またも小説の練習で書いてみました。よろしくお願いします。
※すみません、婚約破棄タグを使っていましたが、書いてるうちに内容にそぐわないことに気づいたのでちょっと変えました。果たして婚約破棄するのかしないのか?を楽しんでいただく話になりそうです。正当派の婚約破棄ものにはならないと思います。期待して読んでくださった方申し訳ございません。
王命を忘れた恋
須木 水夏
恋愛
『君はあの子よりも強いから』
そう言って貴方は私を見ることなく、この関係性を終わらせた。
強くいなければ、貴方のそばにいれなかったのに?貴方のそばにいる為に強くいたのに?
そんな痛む心を隠し。ユリアーナはただ静かに微笑むと、承知を告げた。
完結・私と王太子の婚約を知った元婚約者が王太子との婚約発表前日にやって来て『俺の気を引きたいのは分かるがやりすぎだ!』と復縁を迫ってきた
まほりろ
恋愛
元婚約者は男爵令嬢のフリーダ・ザックスと浮気をしていた。
その上、
「お前がフリーダをいじめているのは分かっている!
お前が俺に惚れているのは分かるが、いくら俺に相手にされないからといって、か弱いフリーダをいじめるなんて最低だ!
お前のような非道な女との婚約は破棄する!」
私に冤罪をかけ、私との婚約を破棄すると言ってきた。
両家での話し合いの結果、「婚約破棄」ではなく双方合意のもとでの「婚約解消」という形になった。
それから半年後、私は幼馴染の王太子と再会し恋に落ちた。
私と王太子の婚約を世間に公表する前日、元婚約者が我が家に押しかけて来て、
「俺の気を引きたいのは分かるがこれはやりすぎだ!」
「俺は充分嫉妬したぞ。もういいだろう? 愛人ではなく正妻にしてやるから俺のところに戻ってこい!」
と言って復縁を迫ってきた。
この身の程をわきまえない勘違いナルシストを、どうやって黙らせようかしら?
※ざまぁ有り
※ハッピーエンド
※他サイトにも投稿してます。
「Copyright(C)2021-九頭竜坂まほろん」
小説家になろうで、日間総合3位になった作品です。
小説家になろう版のタイトルとは、少し違います。
表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
【完結】妹が旦那様とキスしていたのを見たのが十日前
地鶏
恋愛
私、アリシア・ブルームは順風満帆な人生を送っていた。
あの日、私の婚約者であるライア様と私の妹が濃厚なキスを交わすあの場面をみるまでは……。
私の気持ちを裏切り、弄んだ二人を、私は許さない。
アリシア・ブルームの復讐が始まる。
義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。
克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位
11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位
11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位
11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位
いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持
空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。
その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。
※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。
※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる