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私たちの存在理由?

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師匠の下で不安を吐き出し、作戦会議という名のお茶会をした翌日。
私たち4人は再びお城へと赴いていた。
今回は謁見の間ではなく、正式な会議室に通されたわけなんだけど…。

「…。」
「…。」
「…。」
「…。」

この沈黙の空間は何?
広ーい会議室に置かれた、長ーい机にはお偉いさん方が何人も座っているというのに、
誰1人として話し出そうとしない!
この前の謁見も緊張したけれど、これはこれでつらい!お腹がキリキリする…。
どう見ても私たち場違いじゃない。呼び出した王様とカイル王子はまだ来ないし!

「いやー待たせてすまなんだ、皆の者。」
「陛下。」
「今回の会議はどういったことです?」
「仔細を聞かせていただきたい。」
「そうです!早く説明を!」

うわーうるさい!うるさい!
王様が来たとたん、立ち上がって詰め寄っていく大人達。さっきまでの空気はどこに行ったのよ。
まぁまぁと王様が手で制し、皆席に戻るも納得していない様子だ。
中には私たちをあからさまに睨んでいる人もいる。私たちは静かに座っていましたが?

「皆に急に集まってもらったのは他でもない。街で噂の何でも屋についてじゃ。」
「…人々の相談事を解決して回っているという、あの?」
「うむ。何を隠そう、そこに座っている4人組。彼らがその何でも屋なのじゃ!」

一気にその場にいた全員の視線が私たちへと向かう。
どうもどうも…。そんなに私たちって話題になっていたのかしら。とにかく控えめに会釈しておく。

「…そんな紹介のために、我らを集めたわけではありませんよね?」
「もちろんじゃ!今回の会議についてカイルの方から詳しく説明させよう。」
「王子が?」

急に会議室全体がざわつき始める。
「あの会議嫌いの王子が?」「何を企んで…。」「冗談でしょう。」とヒソヒソ近くの席同士で話し合っている。
カイル王子、あなたってお城の中でも評判悪いんです?

「はい。紹介に上がりましたワタクシ、カイルが会議を進めさせていただきます。
 一応断っておきますが、私が嫌いなのは会議ではなく、無駄な時間です。誤解のないよう。」

いつもの笑みを浮かべながら話し始める。
話を聞いているお偉いさん方はあからさまにムッとした表情だ。
そんな感じだから味方がいないんですね、承知しました。
遠い目をしていると、席についている全員に何やら書類が配られる。これは…?

「…『苦情対応に関する報告書』。何ですかな王子。これは?」
「そのままの意味ですよ。
 魔獣が出現する以前より設置されていた、国民からの苦情に対応する部署の活動報告書になります。
 …とはいえ、近年はかなり簡略化されていたというか、ぞんざいに扱われていたというか…。
 少々調査に時間がかかりましたが、まぁこんなものでしょう。」

軽く目を通していただけますか、と声をかける王子。
あなたは鼻につくような言い方をしないと気が済まないの?
ほらほら皆嫌そうな顔で書類をめくっているじゃない。

「この調査結果によると、国民から寄せられた苦情に対する実働件数。
 こちらが大幅に減少していることが分かります。寄せられている苦情に対応しきれていない、ということです。」
「仕方ないでしょう。我々は国民の御用聞きではないのですから。」
「さよう。魔獣被害は各地で甚大。どちらを優先すべきかは明らかですな。」

資料を一通り眺めた人たち全員がうんうんとうなづいている。そんなことわかりきっていると言わんばかりに。
…私たちだって、分かっていたわよ。

「確かに、我が国は魔獣に悩まされ続けています。
 寄せられる相談も、魔獣を退治してほしいという内容が多い。特に最近は。」
「そうでしょう。」
「それはなぜか。何でも屋の皆さんが、生活に密着した内容の依頼をこなしてくれているからです。」
「わ、私たち…?」
「相談自体の数も、若干ですが減少傾向。
 恐らく、難易度の高い魔獣退治などの依頼は城に、比較的難易度が低く生活に近い依頼は何でも屋へ。
 そんな流れができつつあるからでしょうね。」
「…それに何の問題が?」
「国は国民の細々した悩みにかまっている場合ではないと、国民の方も感じ取っているのでしょう。
 下手をすれば、国民のことなどどうでもよいと考えている、そのように感じている国民もいるかもしれません。」
「そんなことが…。」

あくまで可能性の話ですがね、と続けるカイル王子の目は笑っていなかった。
すでに私たちという民間の問題解決団体が出ている以上、ある程度確信があるということかしら。
決して私たちは国に失望しているわけではないのだけれど、
やっぱり国民1人1人に対応することなんてできそうにないとは思っていたかも…。

「…何も悪いことではないのでは?
 国民同士が協力し合って解決できないような内容のものは城へ。それ以外は自分たちで何とかする。
 ある意味では、それが自然な形で国としても理想かと思いますが。」
「もちろん、国がすべての国民を管理しているわけではない以上、国民の自助は重要です。
 難易度や危険度によって、国が介入すべきかどうか判断できるのは画期的。」
「でしたら…。」
「そう、仕分けができていることは何の問題もなく、むしろ良いことです。
 問題となるのは、そのことを国主導で行っていないということです。
 この相談への実働数が減少しているという現状がありながら、何の対策も講じていない、ということがね。」

…うーん、ちょっと難しくなってきた気がするけど、とにかく私たちがしてきたことへはお咎めなし。
むしろいい流れ!みたいなことよね、うん。
お偉いさん方は、何か思い当たる節があるのかまた近くの席の人とヒソヒソと話し合っている。
どんな結果に持って行きたいのか分からないけど、この会議はカイル王子の手の平の上って感じ。
そんな王子がこちらに向かって笑顔で手をこまねいている。
こっちに来いって?…いやなんですけど。
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