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書類不備は許されませんよ?

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「なんじゃ、話の途中じゃぞ。というかどこに行っておったんじゃ。」
「申し訳ありません。」

やれやれとため息をつく王様と笑顔のままの男。
何よその態度!不敬罪で連れていかれてしまえばいいのよ。

「私も私で、この者たちに話を聞いていたんです。
 先ほど事情を聞き終わりましたので、こちらに参上いたしました。」
「この者たちとな?」

男の背後を確認すると、少し離れたところにレイとアレックスが立っていた。
話って…、ただおしゃべりするために引き留めたわけじゃなかったのね。
心なしか2人とも疲れたような表情をしている気がするけど…、気のせいよね?

「ふむ…。して、この件に関してどのように思ったのだ、カイルよ。」
「はい、父上。」
「…え?」

ちちうえ…父上?カイルって、王様の息子の1人の?カイル王子?噓でしょ?
え、あの人この間すずらんに相談に来てたんですけど。しかも1人で。

「あ、あの…。少しよろしいでしょうか…。カ、カイル様…ですか?カイン様でなく…?」
「えぇ、私はカイルと申します。
 先日相談に伺った際に書いた名前。確かにカインと書かせていただきましたが、偽名です。
 失礼いたしました。改めてよろしくお願いしますね。」
「えぇ…あぁ、はい…。」

えぇ…私失礼な態度で接していなかったかしら…?自信がないわ、腹が立つって思ってたし。
これ私が不敬罪で処罰されない?大丈夫?
いやもし失礼なことをしていたとしても仕方なくない?
だって王子様だって知らなかったし、不可抗力よね?
ていうか書類に不備があったってことじゃない。しかも意図的な。許すまじ。
これまで話していた内容も霞むほど意識が遠のいていく…。

「まずは感謝を。あなた方のおかげで、今も母は薬を飲むことができています。」
「あ、はい。」
「弟もたいそう喜んでいました。
 今回あなた方が城に来ることを知ったら、乗り込んできて話どころではなくなることは目に見えているので、
 実は伝えていないくらいですよ。」

帰る時にうっかり出くわさないように気をつけてくださいね、と言われるも、そんな簡単に王族に出くわしてたまるもんですか。
あーあなたは1人ですずらんまで来たし、弟のキール様は魔女の一撃に直接交渉しようと乗り込んだんでしたね。
実績は十分ですね。

「…さて、あなた方の活動に関してですが。
 かなり疑わしかったのですが、今日直接話を伺って国家転覆を狙うような輩ではないと、そう感じました。」
「カイル様、しかし…。」
「臣下の物に調べさせた結果としても、そのような内容の物は出てきませんでしたよ。
 あなたの心配は杞憂だったようですね、宰相殿。」

国家転覆って…、どう疑えばそんなことになるのよ…。

「急にこのようなことを言われて、驚くのも無理はありませんね。
 簡単に言えば、国民の支持を受けた人物がこの国を乗っ取ろうと考えているのでは、という話だったんです。」
「でも、俺たちがそんなことをする人間じゃないって、信じてくれたってことでいいんですか?」
「えぇ。そもそもそんなことを考えるような輩だったら、素直に城に来るとは思えませんし。」
「確かにな。
 まぁ正直オレはそんな疑いをかけられていたってことより、
 王子様が直々にすずらんまで出向いていたってことの方に驚いたんだが。」
「レイ!あんたあの人が王子様だって知ってたの?」

まぁお前の返事を届けたときにちょっとな…。とごにょごにょ言っているレイ。
さっき話し相手になれって言われた時、やけに聞き分けがいいと思ったけどそういうこと…?
前もって教えてくれても良かったんじゃないの?相談者の名前違ったぞ、とか…。
…いや、カイル様が差出人だったって教えられても信じられる気がしないわね。レイの言うことだし。

「彼を怒らないでくださいね、私から他の方に教えないようにお願いしていたので。
 ともかく、あなた方にかけられた疑惑は晴らされた、ということになります。
 その上で、この場を借りて私から提案したいことがあるのです。父上。」
「提案?申してみよ。」
「現在、国民から寄せられる陳情に対応している部署。それを彼らに委託するというのはどうでしょうか。」

…いったん話を持ち帰ってもいいですか?
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