某勇者パーティに最も大事にするべき仲間について語ってみた件

ふくまめ

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涙涙の家族愛!

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「わしには2人の息子がおる。兄のカイルと弟のキールじゃ。名前くらいは知っておろう?」

知っているも何も、この兄弟は良くも悪くも国民の話のネタによく上がる人物だ。
兄のカイルはひねくれもので皮肉屋。
弟のキールはわがままで暴れん坊。
この国の後継者としてどっちがマシか、何て皆で言い合っているのだ。
本人は人前に出ることはないから、実際に見たことはないけど、いい話は聞かない2人。
…でもそんなことはっきり言えないわよね。

「…存じております。」
「うむ。その2人の母親、わしの妻にして王妃についてなのじゃが…。」

王妃様。こちらも人前に全く出てこないお方。
でもこちらの場合は、体調が良くないからだと公言されている。
キール殿下を出産された後体調を崩され、そのまま病を、と聞いてはいるけど。

「王妃様が、何か…?」
「皆に知らせておる通り、長く病を患っていてな。
 今すぐ命が危ういというものではないのだが、定期的な薬が欠かせないのだ。しかし…。」
「しかし?」
「長きにわたる魔獣被害で、薬に必要な薬草が手に入りにくくなってきたのだ。」
「はぁ…。」

薬草が手に入らない。王族でもやっぱり困っているのね。
王族が潤っていればいいわけじゃないけど、いよいよこの国は物資不足が深刻化しているわね。

「信頼のおける薬屋に頼んでいたのだが、ついにそこも薬が尽きかける事態となった。
 ほとほと困りかけたとき、何と薬草が手に入りだしたというのだ。
 急に問題が解決したものだから、嬉しい反面何があったのかと思っての…。
 調べさせたところ、おぬしたちの存在が目に入ったのだ。」
「はぁ…。確かに、私たちのところには生活に必要な物の入手も相談が寄せられますが…。」
「俺たちの活動の成果とは限らないのではありませんか?
 たまたま薬草が多く入手できるようになっただけかもしれませんし。」
「うむ…。これはあまり褒められたことではないのだがの…。」

薬草の入手。私たちの中でも思い出深い依頼だ。
病気のお母さんのために子供が助けを求めていたのよね、いい話だったわ…。
あんな純粋に助けを求められたら、働きかけないわけにはいかなかったわよね。
…病気の母親…。まさかね。
遠い昔のように懐かしく感じられるけど、急に渋い顔になった王様に意識を引き戻す。

「息子のキールは、日ごろから母親を心配していての。
 薬が無くなると困ると、薬屋に直談判しに行ってしまったんじゃ。
 幸い大きな問題もなく城に戻ってきたが、やはり薬は手に入らなかったと言っておった。
 すっかり落ち込んでいる思ったのじゃが「何でも屋さんに相談してきた」といやに自信に満ちていての。」
「…。」
「子どもの言うことだと大して信じていなかったのじゃが、ほどなく薬屋から薬草が手に入ったと連絡が入って。
 キールの相談が功を奏したのではないかと、城の中でも話に上がるようになっていたのじゃ。
 そこで、薬屋の店主に話を聞くなど調査して、おぬしたちにたどりついたというわけじゃな。」

それってあれじゃーん。私たちが師匠のところでテストとして依頼されたやつー。
なんか既視感ーなんて思ってたらまさにのやつー。

「一応お伺いしてもよろしいでしょうか?」
「何じゃ?」
「王室御用達の薬屋の名前は、何でしょうか?」
「魔女の一撃という薬屋じゃな。変わった名前であろう?」

ハイ確定ー。確かに私たちが受けた依頼でした。王様の笑い声が遠く聞こえるわ…。
師匠ったら、王族にも信頼されるような凄腕の薬屋さんだったんですね、さすが!
って現実逃避している場合じゃないわ!ということは…。
王様たちは正しく噂の元凶が私たちであると突き止めた、ということよね。
…でも改めて考えてみても、私たち悪いことしてないわよね?
むしろ、王妃様が必要としていた薬を手に入れる手助けができていたんじゃない?
じゃあ何のために私たち呼び出されたの?え、本当に説明のためだけ?

「…反応を見る限り、本当におぬしたちの活動の成果であるようじゃな。
 礼を言うぞ。おぬしたちのおかげで、息子の行動は無駄にならず、王妃も平穏に生活しておる。」
「いえ、そんな。えっと、光栄です…?」
「して、おぬしたちを城に呼びつけてまで話をしようとした目的についてなのだが…。」

そう、それよ。王様から感謝されるなんて大変ありがたいことなのだけど、やっと核心に迫れるわ。

「それに関しては私の方から説明しましょう。」
「へ?」

私たちにとってはやっと本題に入れる、といった瞬間。
謁見の間の扉が開け放たれ、先ほどイラつきを覚えたばかりの男が笑みを浮かべながら入ってきた。
なぁんでこのタイミングで入ってくるの!
さっきまで家族を思い合う、いい話の雰囲気だったっていうのに!
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