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第2章 《継承戦争》
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【聖暦3068年 5月20日】
【サイド:アルフォンス・ベルン】
◆◆◆
圧倒的な勝利を得たベルン公国軍は、意気軒昂となって進軍した。将士達のアルフォンスへの信望は、ほとんど神への信仰に近いものとなった。
「アルフォンス閣下がおわす限り、我らベルンに敗北なし!」
それがベルン兵の合い言葉となった。
「すごいです。お兄様、2倍の敵に……こんな大勝利……聞いたことが……ない……。お兄様は……天才……だね……」
パミーナの彫刻のような美貌に、讃嘆と尊敬の表情が浮かんでいた。
「いや~、それ程でもないよ」
アルフォンスが照れると、フローラが瞳に微笑をゆらした。
「分数の割り算もできないアルフォンス様が、このような天賦の才をお持ちとは……。やはりどんな人間にも、何かとりえがあるものですね」
「別に今言わなくてもいいだろ! 大体、分数の割り算などしなくても人間は生きていける!」
「若君……確かに仰せの通りですがな。大声で威張ることではございませんぞ?」
オルブラヒトがわずかに眉をひそめた。
「そうじゃぞアル。分数の割り算くらいできないと恥ずかしいぞ?」
「……わ……私は……、どんな馬鹿でも……お兄様が……好き……だよ……?」
パミーナが頬を染め、上目使いにアルフォンスを見る。
「ダメですよ。パミーナ様。パミーナ様がそんなふうに甘やかすから、アルフォンス様が、ドンドン駄目な男に堕落してしまうのです」
「今は、勉強云々よりも、戦争が大事だ! 余計なお喋りをしている暇はない! オルブラヒト、次の目標は?」
アルフォンスが強引に話題を転換すると、オルブラヒトが半白の顎髭を撫でた。その老いた顔には、憂慮の翳りがあった。
「次はおそらく攻城戦となるでしょう。難しい戦になると思われます。大陸屈指の城塞。難攻不落と謳われるソルヴェール城です」
【サイド:アルフォンス・ベルン】
◆◆◆
圧倒的な勝利を得たベルン公国軍は、意気軒昂となって進軍した。将士達のアルフォンスへの信望は、ほとんど神への信仰に近いものとなった。
「アルフォンス閣下がおわす限り、我らベルンに敗北なし!」
それがベルン兵の合い言葉となった。
「すごいです。お兄様、2倍の敵に……こんな大勝利……聞いたことが……ない……。お兄様は……天才……だね……」
パミーナの彫刻のような美貌に、讃嘆と尊敬の表情が浮かんでいた。
「いや~、それ程でもないよ」
アルフォンスが照れると、フローラが瞳に微笑をゆらした。
「分数の割り算もできないアルフォンス様が、このような天賦の才をお持ちとは……。やはりどんな人間にも、何かとりえがあるものですね」
「別に今言わなくてもいいだろ! 大体、分数の割り算などしなくても人間は生きていける!」
「若君……確かに仰せの通りですがな。大声で威張ることではございませんぞ?」
オルブラヒトがわずかに眉をひそめた。
「そうじゃぞアル。分数の割り算くらいできないと恥ずかしいぞ?」
「……わ……私は……、どんな馬鹿でも……お兄様が……好き……だよ……?」
パミーナが頬を染め、上目使いにアルフォンスを見る。
「ダメですよ。パミーナ様。パミーナ様がそんなふうに甘やかすから、アルフォンス様が、ドンドン駄目な男に堕落してしまうのです」
「今は、勉強云々よりも、戦争が大事だ! 余計なお喋りをしている暇はない! オルブラヒト、次の目標は?」
アルフォンスが強引に話題を転換すると、オルブラヒトが半白の顎髭を撫でた。その老いた顔には、憂慮の翳りがあった。
「次はおそらく攻城戦となるでしょう。難しい戦になると思われます。大陸屈指の城塞。難攻不落と謳われるソルヴェール城です」
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