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第2章 《継承戦争》
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【聖暦3068年 5月20日】
【場所: 北部領 アストライア平原】
【サイド: フェルスター侯爵(43歳)】
◆◆◆
北軍の諸侯の1人、フェルスター侯爵は、自領と周辺地帯の貴族達をまとめあげた2万6千の大軍でもって、ベルン公国軍めがけて進軍していた。フェルスター侯爵は、北部の防衛線を託された将帥の1人であり、勇将として名高い。
やがて、彼はベルン公国軍が、奇怪な場所に布陣していることを偵察兵の報告で知った。
「湖を背に布陣しているだと?」
フェルスター侯爵は、眉をひそめた。背後に湖や川を背負って布陣するのは兵家の最も禁忌とする所だ。
ベルン公国軍は、湖を背に配陣し、こちらを迎撃しようと待ち構えているという。
「見え透いた罠だ。敵の伏兵がいるに違いない。周辺地帯を調べ上げろ!」
フェルスター侯爵は、20隊の偵察部隊を放った。
(この状況下でベルン公国軍が仕掛けられる策略は伏兵しかない)
ベルン公国軍は、わざと湖を背に布陣するという危険をおかして、こちらの油断を誘っている。そして、我が軍が正面から交戦している最中に、伏兵でもって我が軍の後背ないし、側面を襲い包囲撃滅するつもりであろう。
だが、2時間後、偵察部隊が驚くべき報告をフェルスター侯爵にもたらした。なんと敵の伏兵が見当たらないというのだ。
「伏兵がいないだと?」
「間違いございません。ベルン公国軍が布陣する『アストライア平原』をくまなく調査しましたが、伏兵はどこにも存在しません」
偵察部隊は、アストライア平原一帯を綿密に偵察した。伏兵がいそうな森、林、丘陵地帯にいたるまで調べ尽くした。
調査していないのは、アストライア平原の北にあるオルクス山だが、オルクス山は、伏兵を配置できるような場所ではない。
山の斜面が、ほぼ垂直の断崖となっており、人馬が降りれるような場所ではない。伏兵がオルクス山の背後にいても、アストライア平原に降り立つことはできないのだ。
フェルスターは舌打ちした。敵は単なる愚か者だったようだ。そのような無能者に警戒した自分に腹が立つ。
同時に、勝機を逃すまいと全軍に進撃を命じた。
「即座に全軍出動せよ。敵将・アルフォンス・ベルンを血祭りにあげ、ベルン公国軍を皆殺しにしろ。投降した者も悉く殺せ!」
フェルスターは苛烈かつ残忍な命令を発して、全軍を移動させた。
【場所: 北部領 アストライア平原】
【サイド: フェルスター侯爵(43歳)】
◆◆◆
北軍の諸侯の1人、フェルスター侯爵は、自領と周辺地帯の貴族達をまとめあげた2万6千の大軍でもって、ベルン公国軍めがけて進軍していた。フェルスター侯爵は、北部の防衛線を託された将帥の1人であり、勇将として名高い。
やがて、彼はベルン公国軍が、奇怪な場所に布陣していることを偵察兵の報告で知った。
「湖を背に布陣しているだと?」
フェルスター侯爵は、眉をひそめた。背後に湖や川を背負って布陣するのは兵家の最も禁忌とする所だ。
ベルン公国軍は、湖を背に配陣し、こちらを迎撃しようと待ち構えているという。
「見え透いた罠だ。敵の伏兵がいるに違いない。周辺地帯を調べ上げろ!」
フェルスター侯爵は、20隊の偵察部隊を放った。
(この状況下でベルン公国軍が仕掛けられる策略は伏兵しかない)
ベルン公国軍は、わざと湖を背に布陣するという危険をおかして、こちらの油断を誘っている。そして、我が軍が正面から交戦している最中に、伏兵でもって我が軍の後背ないし、側面を襲い包囲撃滅するつもりであろう。
だが、2時間後、偵察部隊が驚くべき報告をフェルスター侯爵にもたらした。なんと敵の伏兵が見当たらないというのだ。
「伏兵がいないだと?」
「間違いございません。ベルン公国軍が布陣する『アストライア平原』をくまなく調査しましたが、伏兵はどこにも存在しません」
偵察部隊は、アストライア平原一帯を綿密に偵察した。伏兵がいそうな森、林、丘陵地帯にいたるまで調べ尽くした。
調査していないのは、アストライア平原の北にあるオルクス山だが、オルクス山は、伏兵を配置できるような場所ではない。
山の斜面が、ほぼ垂直の断崖となっており、人馬が降りれるような場所ではない。伏兵がオルクス山の背後にいても、アストライア平原に降り立つことはできないのだ。
フェルスターは舌打ちした。敵は単なる愚か者だったようだ。そのような無能者に警戒した自分に腹が立つ。
同時に、勝機を逃すまいと全軍に進撃を命じた。
「即座に全軍出動せよ。敵将・アルフォンス・ベルンを血祭りにあげ、ベルン公国軍を皆殺しにしろ。投降した者も悉く殺せ!」
フェルスターは苛烈かつ残忍な命令を発して、全軍を移動させた。
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