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第4章  王都の決戦

罪劫王ハーゲンディ VS 槍聖クラウディア

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「……そうか。発動条件はその声か……」

クラウディアはようやくハーゲンディの魔法を理解した。

ハーゲンディの魔法は、敵の視界と平衡感覚の歪みを徐々に強めるのだ。

初動段階ではあまりに微少すぎて気付かなかった。

ハーゲンディは魔力を発動させる時、敵に感知されない術に長けていた。
クラウディアほどの練達の騎士に発動も、そして自分に魔法がかけられたことさえも気付かせない。

(……一番、相性の悪い敵とぶつかってしまったか……)

クラウディアのような騎士に取っては一番、相性が悪い敵だった。クラウディアは槍聖として、優れた動体視力と平衡感覚に恵まれていた。そしてそれが最大の武器の1つである。

その武器を奪われた。如何に強大な力でもあたらなければ意味が無い。

(いや、それ以上に……)

クラウディアは片膝をついた状態のままハーゲンディを見上げた。

「……お前を甘く見た。いや、騙された。……お前の知能を見誤った……」

「そうだよ~。私は敵に侮られるのが得意なんだ~。みんな私の言動と姿を見て愚鈍だと思い込む。私が精緻な魔法を操るタイプには見えなかったでしょ~」

ハーゲンディが牛の顔に残忍な笑みを滲ませる。

ハーゲンディの魔法は狡知極まりないものだった。敵に一切関知されない魔法。それらを編み出して、操るには高度かつ精緻な頭脳が必要になる。ハーゲンディは、その高い知能を隠していたのだ。

「さて、お姉ちゃんには死んで貰おうかな~」

ハーゲンディが、ゆっくりと地面に跪いたクラウディアに近づく。

両者の距離が4メートルにまで接近した時、クラウディアが全身の力を使って槍を繰り出した。

巨岩を粉砕する槍の一撃。神速の刺突。だがそれはハーゲンディの戦斧で弾かれた。クラウディアの手から槍がはじけ飛び、宙空高く、放り上げられる。

「無駄だよ~。必ず起死回生を狙っての一撃がくると予想していた。私は絶対に油断しないんだよ~」

ハーゲンディはクラウディアを蹴り上げた。腹部を蹴り飛ばされたクラウディアは8メートル以上転がって大地に仰向けに倒れた。

「頑丈なお姉ちゃんだね~」

ハーゲンディは嘲弄した。並の人間ならばハーゲンディの蹴りで上半身が吹き飛んでいる。

ハーゲンディはゆっくりと近づいた。もはやクラウディアには力が残っていない。勝利を確信する。

だが油断はしない。クラウディアが放り出した槍を見る。その槍にむかってハーゲンディは黒炎の魔法を放った。

クラウディアの槍が黒い炎で燃え上がる。

「これで聖槍はなくなったね~。槍聖が聖なる槍をなくしたら何かな? ああ、ただの人間か~」

ハーゲンディは油断なく戦斧を構え、大きく振り上げた。クラウディアは動かない。悔しげに自分を見ている。

「さて、聖なる槍は完全に破壊されたよ。本当は槍を遠隔操作して私を背後から貫く筈だったんでしょう?」

ハーゲンディが冷静に告げると、クラウディアは諦めたように口を開いた。

「……そうだ。よく分かったな。お前を背後から槍で串刺しにするつもりだった……。あの槍は遠隔操作。つまり私の意思で操作できるのだ……」

クラウディアはそう告白すると目を閉じた。

「だろうね。槍が独りでに飛んできて、私は背後から貫かれて死ぬ。悪くない作戦だったよ~」

ハーゲンディが戦斧を握る両手に力を込めた。
クラウディアが目を閉じた。ハーゲンディはそれを死を覚悟したと理解した。

「さて、槍聖クラウディア、死ね」

ハーゲンディが戦斧をクラウディアの頭部めがけて振り下ろした。

直後、頭蓋が砕けた。血と脳症が宙空に振りまかれ、頭蓋骨の欠片が大地にばら撒かれる。





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