29 / 169
第1章 新世界へ
出立
しおりを挟む
市場をあちこち回り、ナギは次々に料理の材料を買ってアイテムボックスに収納した。
買い物が終わると、古都ベルンを出る。
すでにバルザックとエリザが、城壁の近くに馬車を用意して待っていた。
「さて、コイツが目的地までの地図だ。全員分、買ってきたからもっといてくれ」
バルザックが、全員に地図を渡す。
ナギが地図を見ると古都ベルンと北にある森そして、そこまでの街道が描かれていた。
「俺達がむかう森の名はシリス大森林。馬車で北に二日の距離にある。シリス大森林は深部に入ると恐ろしく強い魔獣、モンスターがうようよいやがる危険地帯だ」
バルザックが一度、言葉を切り、語を継いだ。
「だが、俺達の目的は金になる薬草の採集が目的だ。その薬草は、森の外縁に群生している。だから、森の深部に入ることはねェ。
出てくるモンスターは、せいぜい、小鬼(ゴブリン)、大鬼(オーク)くらいだろう。まあ、安心してくれや」
「質問がなければ、出発するけどいいさね?」
エリザが問うと、ナギ、セドナ、ルイズが首肯し全員馬車に乗り込んだ。
シリス大森林にむけて、馬車が動き出す。
(大勢でパーティーを組んでクエストか……。これぞファンタジーだな)
ナギの胸が熱くなった。
御者台にいるバルザックが馬を操り、その隣にエリザが座っている。
馬車の中には俺、セドナ、ルイズがいる。
ルイズはセドナを膝の上に乗せ、しきりと頭を撫でたり抱きしめたりしていた。まるでヌイグルミ扱いである。
「セドナちゃん、本当に可愛いねェ~。綺麗だね~。ルイズお姉ちゃんは惚れちゃいそうだよ~」
ルイズがセドナの繊麗な体を両腕で抱きしめる。
「……あ、あの……。ありがとうございます……」
セドナが照れて、体を縮める。
「ん~、でもちょっと、お洒落が足りないかな? ルイズお姉ちゃんが髪を綺麗にセットしてあげるね」
ルイズが懐から手櫛と髪結い用の紐を取り出しセドナの銀髪をいじり始めた。
セドナは嬉しそうに頬を染めて、ルイズのされるままにしている。
(女の子同士のこういうのは良いね)
と俺は微笑ましく思った。ルイズは、櫛でセドナの銀髪を梳いて結い上げた。左右の耳の上から後ろ髪を一つにまとめたいわゆるハーフアップだ。セドナの銀髪が綺麗に整い、王族のような気品が醸し出される。
「うん! すごい! お姫様みたいだよ!」
ルイズは満足そうに破顔し俺もウンウンと頷いた。セドナは照れて俯き手をモジモジと擦り合わせている。うん、可愛い。
「いや~、セドナちゃん、本当に可愛いわ~」
ルイズはセドナを後ろから抱きしめる。
「あ、ありがとうございます」
「本当に食べちゃいたいくらいよ。性的な意味で~」
あれ? 今、変なこと言ってなかったか?
「そ、そんな……」
「あ~、セドナちゃんみたいな娘(こ)をお嫁さんにしたいわ~」
段々、ルイズの鼻息が荒くなってきた。
「……いえ、そんな」
ルイズはセドナの耳を甘噛みし、ハアハアと危ない息を吐き出した。そして、セドナの服を脱がしにかかる。
「あ、あの……」
ルイズが、セドナの頬を舐めだした!
「大丈夫、大丈夫、ちょっとオジサンに体を任せてみい~? 大丈夫、痛いのは最初だけだから~」
「大丈夫じゃない! 何してるんだお前は!」
俺は怒鳴りつけながらセドナを抱きしめて痴女から奪い返す。
「何するのよ~! 私のセドナちゃんを返して~!」
「返せるか! この痴女が!」
俺は奪いかえしたセドナを強く抱きしめてルイズから守る。俺の家族になにしやがるんだ。この変態が!
「痴女とは酷いわね~。ちょっとだけセドナちゃんを全裸に剥いて性的な悪戯しようとしただけじゃない~」
「まさしく痴女だよ! ふざけんな!」
危ない女だ。ルイズと二人きりにはさせられない。
「だって、こんな可愛い子みたことないんだもの~。私だって女の子にエッチなことしたいと思ったのは初めてだよ~」
「エッチなことするつもりだったんかい!」
俺が突っ込むと、ルイズは舌をペロリと出して、
「ごめん、ごめん、もうしないからさ~」
と片目をつぶった。
「でも、このくらいは女の子同士の悪ふざけでよくやるコトだよ? ナギ君もあまり過剰反応しない方がいいと思うけど~?」
「……そうなのかな?」
ま、そうかも知れない。こういうのは男があまり口出しするもんじゃないかも。
「ご安心下さい。ナギ様、懸念されるようなことはございませんから」
セドナが優しい声を出して俺を気遣う。俺は肩をすくめてセドナを解放した。セドナとルイズが楽しそうにしゃべり出す。俺は肩をすくめた。少し過保護すぎたかもしれない、と反省する。
馬車の外から涼しげな風がふいて俺の髪を乱した。
窓の外に視線を投じる。風景がゆっくりと流れ馬車がゴトゴトと揺れている。
ている。
遠くで羊飼いが、羊を誘導しているのが見えた。なんとも長閑な光景だ。
(全員無事に、平穏に、クエストが終了しますように)
俺は神仏と女神ケレス様に祈った。
買い物が終わると、古都ベルンを出る。
すでにバルザックとエリザが、城壁の近くに馬車を用意して待っていた。
「さて、コイツが目的地までの地図だ。全員分、買ってきたからもっといてくれ」
バルザックが、全員に地図を渡す。
ナギが地図を見ると古都ベルンと北にある森そして、そこまでの街道が描かれていた。
「俺達がむかう森の名はシリス大森林。馬車で北に二日の距離にある。シリス大森林は深部に入ると恐ろしく強い魔獣、モンスターがうようよいやがる危険地帯だ」
バルザックが一度、言葉を切り、語を継いだ。
「だが、俺達の目的は金になる薬草の採集が目的だ。その薬草は、森の外縁に群生している。だから、森の深部に入ることはねェ。
出てくるモンスターは、せいぜい、小鬼(ゴブリン)、大鬼(オーク)くらいだろう。まあ、安心してくれや」
「質問がなければ、出発するけどいいさね?」
エリザが問うと、ナギ、セドナ、ルイズが首肯し全員馬車に乗り込んだ。
シリス大森林にむけて、馬車が動き出す。
(大勢でパーティーを組んでクエストか……。これぞファンタジーだな)
ナギの胸が熱くなった。
御者台にいるバルザックが馬を操り、その隣にエリザが座っている。
馬車の中には俺、セドナ、ルイズがいる。
ルイズはセドナを膝の上に乗せ、しきりと頭を撫でたり抱きしめたりしていた。まるでヌイグルミ扱いである。
「セドナちゃん、本当に可愛いねェ~。綺麗だね~。ルイズお姉ちゃんは惚れちゃいそうだよ~」
ルイズがセドナの繊麗な体を両腕で抱きしめる。
「……あ、あの……。ありがとうございます……」
セドナが照れて、体を縮める。
「ん~、でもちょっと、お洒落が足りないかな? ルイズお姉ちゃんが髪を綺麗にセットしてあげるね」
ルイズが懐から手櫛と髪結い用の紐を取り出しセドナの銀髪をいじり始めた。
セドナは嬉しそうに頬を染めて、ルイズのされるままにしている。
(女の子同士のこういうのは良いね)
と俺は微笑ましく思った。ルイズは、櫛でセドナの銀髪を梳いて結い上げた。左右の耳の上から後ろ髪を一つにまとめたいわゆるハーフアップだ。セドナの銀髪が綺麗に整い、王族のような気品が醸し出される。
「うん! すごい! お姫様みたいだよ!」
ルイズは満足そうに破顔し俺もウンウンと頷いた。セドナは照れて俯き手をモジモジと擦り合わせている。うん、可愛い。
「いや~、セドナちゃん、本当に可愛いわ~」
ルイズはセドナを後ろから抱きしめる。
「あ、ありがとうございます」
「本当に食べちゃいたいくらいよ。性的な意味で~」
あれ? 今、変なこと言ってなかったか?
「そ、そんな……」
「あ~、セドナちゃんみたいな娘(こ)をお嫁さんにしたいわ~」
段々、ルイズの鼻息が荒くなってきた。
「……いえ、そんな」
ルイズはセドナの耳を甘噛みし、ハアハアと危ない息を吐き出した。そして、セドナの服を脱がしにかかる。
「あ、あの……」
ルイズが、セドナの頬を舐めだした!
「大丈夫、大丈夫、ちょっとオジサンに体を任せてみい~? 大丈夫、痛いのは最初だけだから~」
「大丈夫じゃない! 何してるんだお前は!」
俺は怒鳴りつけながらセドナを抱きしめて痴女から奪い返す。
「何するのよ~! 私のセドナちゃんを返して~!」
「返せるか! この痴女が!」
俺は奪いかえしたセドナを強く抱きしめてルイズから守る。俺の家族になにしやがるんだ。この変態が!
「痴女とは酷いわね~。ちょっとだけセドナちゃんを全裸に剥いて性的な悪戯しようとしただけじゃない~」
「まさしく痴女だよ! ふざけんな!」
危ない女だ。ルイズと二人きりにはさせられない。
「だって、こんな可愛い子みたことないんだもの~。私だって女の子にエッチなことしたいと思ったのは初めてだよ~」
「エッチなことするつもりだったんかい!」
俺が突っ込むと、ルイズは舌をペロリと出して、
「ごめん、ごめん、もうしないからさ~」
と片目をつぶった。
「でも、このくらいは女の子同士の悪ふざけでよくやるコトだよ? ナギ君もあまり過剰反応しない方がいいと思うけど~?」
「……そうなのかな?」
ま、そうかも知れない。こういうのは男があまり口出しするもんじゃないかも。
「ご安心下さい。ナギ様、懸念されるようなことはございませんから」
セドナが優しい声を出して俺を気遣う。俺は肩をすくめてセドナを解放した。セドナとルイズが楽しそうにしゃべり出す。俺は肩をすくめた。少し過保護すぎたかもしれない、と反省する。
馬車の外から涼しげな風がふいて俺の髪を乱した。
窓の外に視線を投じる。風景がゆっくりと流れ馬車がゴトゴトと揺れている。
ている。
遠くで羊飼いが、羊を誘導しているのが見えた。なんとも長閑な光景だ。
(全員無事に、平穏に、クエストが終了しますように)
俺は神仏と女神ケレス様に祈った。
0
お気に入りに追加
1,505
あなたにおすすめの小説
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
幼馴染の彼女と妹が寝取られて、死刑になる話
島風
ファンタジー
幼馴染が俺を裏切った。そして、妹も......固い絆で結ばれていた筈の俺はほんの僅かの間に邪魔な存在になったらしい。だから、奴隷として売られた。幸い、命があったが、彼女達と俺では身分が違うらしい。
俺は二人を忘れて生きる事にした。そして細々と新しい生活を始める。だが、二人を寝とった勇者エリアスと裏切り者の幼馴染と妹は俺の前に再び現れた。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
冤罪で自殺未遂にまで追いやられた俺が、潔白だと皆が気付くまで
一本橋
恋愛
ある日、密かに想いを寄せていた相手が痴漢にあった。
その犯人は俺だったらしい。
見覚えのない疑惑をかけられ、必死に否定するが周りからの反応は冷たいものだった。
罵倒する者、蔑む者、中には憎悪をたぎらせる者さえいた。
噂はすぐに広まり、あろうことかネットにまで晒されてしまった。
その矛先は家族にまで向き、次第にメチャクチャになっていく。
慕ってくれていた妹すらからも拒絶され、人生に絶望した俺は、自ずと歩道橋へ引き寄せられるのだった──
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい
一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。
しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。
家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。
そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。
そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。
……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──
魔境に捨てられたけどめげずに生きていきます
ツバキ
ファンタジー
貴族の子供として産まれた主人公、五歳の時の魔力属性検査で魔力属性が無属性だと判明したそれを知った父親は主人公を魔境へ捨ててしまう
どんどん更新していきます。
ちょっと、恨み描写などがあるので、R15にしました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる