上 下
28 / 169
第1章   新世界へ

冒険者パーティー、《至宝の盾》 

しおりを挟む
 巨漢はナギに、

「俺はバルザックだ。よろしくな。チーム名は、《至宝の盾》だ」

 と、自己紹介した。バルザックの仲間には、女性が2人いて、バルザックを含めて3人で冒険者をしているそうだ。

「私は、エリザさ。よろしく」
  
エリザと名乗る女性が、煙管をふかしながら言った。
 
エリザは18歳。鉄色の髪と瞳をしており、身長は170センチほど。
 
大きな胸に、細い腰の官能的な肉体をもつ美女だった。
 
職業は魔道士だそうだ。

「私は、ルイズだよ~。よろしくね~」
 
ルイズは、14歳。

金茶色の髪と瞳をした可愛らしい少女で、快活な印象を見る者に与える。
 
軽装だが、高価な胸鎧をつけ下は短パン。剣帯には細剣(レイピア)をつるしていた。
 
職業は、魔法剣士だそうだ。

「そして、俺様がバルザック。見ての通りの、男前の戦士で頼りになるリーダー様だ」  
  
バルザックが巨躯から野太い声を発すると、エリザが口から煙管の煙をバルザックに吹き付けた。

バルザックが、ゴホゴホと咳き込む。

「二度も名乗らなくて良いさね。面倒くさい……」

エリザが気怠るそうに言った。

「アハハぁ、バルザックが男前かァ。まあ、熊の世界では男前かもね~」

ルイズがクスクスと口元を隠して笑った。
 
ナギとセドナもつられて笑い、自己紹介をした。
 
ナギはセドナが奴隷ということは伏せて、2人で冒険者をしていると答えた。

「よし、んじゃあ、早速クエストの内容を説明するぜ。俺達と一緒にクエストを行うかどうかは、その後判断してくれ」

バルザックがニヤリと笑った。

「今回のクエストは単純でな。森に行き薬草を採集することだ」

「薬草の採集ですか?」

ナギが問う。

「そうだ。だが、森にモンスターがいるから、そいつらを倒しながら薬草を採集することになる」

バルザックによれば、森の奥深くに入ると高レベルのモンスターが数多く存在する。だが、今回は森の深部には入らないため危険は少ないだろうとのことだ。

「どうだい? 一緒にやらねェか? 報酬はキッチリ山分けだ」

「……ふむ」

ナギは顎に手を当てた。

(悪くない条件だ)
 
と思った。バルザック達は見たところ、手練れで冒険者稼業になれている。こういう手合いと冒険をすれば得ることも多いだろう。

ナギはセドナに視線を投じた。ナギの黒瞳とセドナの金瞳が触れ合う。
それだけで意志が通じ合った。

「やりましょう」

「よし! 決まりだ! よろしくな、ナギ、セドナ嬢ちゃん」

バルザックは分厚い大きな手で、ナギの手をガッシリと握った。 

ナギはバルザックから手を離すと、

「一つ、聞いていいですか?」

と言った。

「なんだ?」

「どうして、僕らをクエストに誘ったんですか?」

ナギが問うと、バルザックが豪快に笑った。


「理由は二つある。第一におめえらが、ソコソコ腕が立つことは見れば分かる。ある程度の戦闘力があるヤツらと組みたかった。
2点目はナギ、お前さんの料理の腕に惚れた。お前さんと組めば、クエスト中に、旨い飯が喰えるからな。何せ、うちのエリザとルイズの作る飯ときたら豚のエサにもなりゃあしね……」

バルザックが言い終える前に、エリザとルイズが蹴りと拳をバルザックの背中と脚にぶち込んだ。

「豚のエサとはなにさね」

「失礼すぎるよ! 毎回、一生懸命つくってあげてるんだよ?」

エリザとルイズが、憤然とした。

「いや……、作ってくれるは感謝してんだぜ? でも、本当にお前らの料理だけは……」

バルザックは大きな頭をふると、ナギに小声で言った。

「本気で頼むわ。旨い飯が食いてェんだ……。せめて、人間が喰える飯を……頼む。……本当に頼む……。頼みます……」

バルザックの碧眼に浮かぶ苦悶に、ナギはいささか同情しながら点頭した。

ナギとセドナ、そしてバルザック、エリザ、ルイズは、冒険者ギルドを出てクエストのための準備を始めた。

手分けして、クエストに必要な物資の調達を始める。

まず、ナギとセドナは武器屋に行った。ナギは長剣を5本買った。戦闘中に壊れた時のスペアだ。

そして、鉄製の胸鎧とローブを買った。ローブは分厚く頑丈な生地で出来ており、森の中を動く際に枝葉などから体を防御してくれる。また投石や、矢などをローブで弾くことも出来る。

セドナも、鋼鉄製の白い胸鎧と森の歩行に適したブーツを予備を含めて3足買った。

次に、医療品を買いその後、市場に行って食料の調達を始めた。

「ナギ。こいつが食料の調達費だ。お前さんの好きなように使ってくれぃ」

バルザックが、革袋の財布をナギに手渡した。

「俺とエリザは馬車の手配をする。ルイズと一緒に頼む」

ナギは了承して財布を受け取った。

「よし。じゃあ、私が食べたいものを言うから、ナギ君が良い材料を買ってちょうだいね」

ルイズが朗らかに言った。ナギは苦笑して、

「バルザックさんや、エリザさんの好物ではなくて、自分の食べたいもの優先ですか?」

「良いんだよー。私の好物とバルザックとエリザの好物は同じだからね」

「なるほど、そうですか」

 ナギは生真面目な顔で言った。

「あー。ナギ君、敬語は使わなくて良いよ? 私のことはルイズと呼んでセドナちゃんもね」

  ルイズが言うとナギとセドナは微笑し同時に頷いた。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

冤罪で自殺未遂にまで追いやられた俺が、潔白だと皆が気付くまで

一本橋
恋愛
 ある日、密かに想いを寄せていた相手が痴漢にあった。  その犯人は俺だったらしい。  見覚えのない疑惑をかけられ、必死に否定するが周りからの反応は冷たいものだった。  罵倒する者、蔑む者、中には憎悪をたぎらせる者さえいた。  噂はすぐに広まり、あろうことかネットにまで晒されてしまった。  その矛先は家族にまで向き、次第にメチャクチャになっていく。  慕ってくれていた妹すらからも拒絶され、人生に絶望した俺は、自ずと歩道橋へ引き寄せられるのだった──

冤罪を掛けられて大切な家族から見捨てられた

ああああ
恋愛
優は大切にしていた妹の友達に冤罪を掛けられてしまう。 そして冤罪が判明して戻ってきたが

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

クラスメイトに死ねコールをされたので飛び降りた

ああああ
恋愛
クラスメイトに死ねコールをされたので飛び降りた

大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います

騙道みりあ
ファンタジー
 魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。  その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。  仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。  なので、全員殺すことにした。  1話完結ですが、続編も考えています。

処理中です...