リビングデッド

常夏の炬燵

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魔族編

第三十六話

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ナナシを残し、カイマの異空間から出たテンカ達。

「よし、俺達は神を何とかしよう。だが、一旦天界に行くぞ。怪我の治療をしなくては」

「ちょっと待ってほしいのだ」

そう言って、カイマはディアンの元へ走って行った。

そして、カイマが手を合わせる。
すると、ディアンは白い光となって、空へ登った。

「ごめん、待たせたのだ」

「大丈夫だ。じゃあ、行くぞ」

そうして、天界にあるテンカの家の前に転移した。

「おい、なんか入れんぞ」

「あ、すまない。ユメを避難させていたからな。結界を張っていたんだ」

結界を一時解除し、二人が範囲内に入ったことを確認すると、再び結界を張った。

「あ、おかえりなさい!…ッ!?て、テンカくん!その怪我…!」

中に入ると、ユメに出迎えられた。

「大丈夫。治療室に入れば、全て治る」

「そ、そうなんだ…」

ユメはホッと胸をなでおろした。

「よ!久しぶりだな」

そんなユメにエドが声をかけた。

「うん、久しぶりエドくん!えっと…その子は?」

「ボクは、カイマなのだ。よろしくなのだ」

「よろしくね!カイマ…くん?」

「あ…」

カイマは思わず言葉に詰まった。
ユメ達が性別で態度を変えないことは、理解しているが、トラウマが過ぎって、本当の事はいえなかった。

「くん…で、大丈夫なのだ」

「うん!カイマくん!」

笑顔で頷いたユメは、なにかに気づいたようには周囲を見渡した。

「ナナシくんは…?ここにいないって事は…まだ戦ってるって事…?」

全員言葉に迷った。
気の利いた言葉が出ない。
そんな中テンカが口を開いた。

「あいつなら大丈夫だ。きっと戻ってくる」

「うん…そうだね!」

「じゃあ、俺が回復し次第、神に仕掛けるぞ」

テンカの言葉に二人は強く頷いた。

その頃、ナナシは…

「やっぱり…壊れないか…」

何とか、完成する前に壊せないかと、必死に抗うも、全てが効かなかった。

魔族はもう完成まじかに迫っていた。
形はもう完全に出来上がっている。
青白い肌に筋肉質な体、額には長いツノが二本生えている。

「覚悟は決めた…いつでも来い…!」

そう呟いた、その時、目が開き、赤い瞳がナナシを睨みつけた。

「…ッ!」

あまりの迫力に心臓を握られた様な感覚に陥った。

次の瞬間、目の前に魔族が現れ、顔面を捕まれ、地面にたたきつけられる。

魔族は、声にならない叫び声を上げながら、ナナシを引きずり回す。

こいつ…!自我が無い…完全に暴走している…!

ナナシを上空に放り投げ、口から怪光線を放出した。

「ぐっ…!」

何とか堪え、ミサイルを連発する。

魔族はお構い無しに、正面からナナシを捕らえる。

「な…ッ!?」

両肩を捕まれ身動きが取らなくなった。
膝練りで抵抗するが、ダメージは無い。

その時、魔族は口を開けた。

やばい!

そう思ったのも束の間、ナナシの頭は吹っ飛んだ。

しまった…!一番失っては行けない部位を…!

だが、魔族の攻撃は止まらない。

ナナシを殴り、振り回し、叩きつけ、投げるなどの暴行を繰り返した。

違う…!これは…攻撃じゃない…ただ暴れているだけだ………力が制御出来ないんだ…

それがわかったところで、今のナナシには、どうすることも出来なかった。

頭さえあれば…まだ、やりようがあったはずだ…!

……悔やんでも仕方がない…俺の目的はあくまで時間稼ぎ…今、この状況はむしろ好都合…では、無いが…目的は果たせている…

俺が…消滅しない限り…

何年でも耐えてやる…!だから…奴に理性を芽生えさせないでくれ…!

このどうしようもない状況。
ナナシはただ願い続けた。
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