リビングデッド

常夏の炬燵

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魔族編

第九話

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充分天界力を溜めたテンカは両腕を正面に突き出し、天界力を放出した。

ファイマはそれに伴い、突進した。

力と力のぶつかり合い。両者とも一歩も譲らない激しい力比べが繰り広げられる。

「ぐっ…」

だが、テンカが徐々に押され始めた。

「どうした!テメェの力、そんなもんじゃネェだろ!」

「ッ…ハアァッ!」

テンカは更に踏ん張る。
だが、状況は劣勢なまま変わらなかった。

「ハハハッ!天界人最強もこの程度か!拍子抜けだな!このまま楽にしてやる!」

ファイマの炎は更に増していく。

「う…おおぉっ!」

テンカも負けじと力を上げるが、既に限界を迎えてしまい、片膝を地面についてしまった。

「流石だ。よくここまで耐えた。褒めてやる!だが、もう限界のようだな!」

「限界なんて…クソ喰らえだ…!」

「何ッ!?」

テンカは天界力を奮い立たせる。

「こいつ…!まだこんな力を…!?」

天界力で消えかけてる炎を再燃化させるが、すぐに弱まってしまう。

「クソ…!こうなったら!」

「なんだ…!?」

周囲が熱気に包まれる。
テンカの皮膚はジリジリと焦げていき、力が弱まる。

「今だ!くたばりやがれーッ!!」

ファイマの炎はオーバーヒートを起こし、さらに熱くなり勢いが増した。

テンカも食い下がる。

「しぶとい奴だ…!だが、今度こそこれで終わりだ…!死ねーッ!!!」

ファイマの突進が、テンカの腹に直撃した。

「ぐぇッ!」

テンカは木々をなぎ倒しながら、勢いよく吹っ飛ばされる。

「ゼェゼェ…どう…だ…!」

テンカが飛ばされた森の奥を凝視すると、そこに立っている人影を見つけた。

「まさか…あれを、耐えきったのか…?」

ファイマはショックで狼狽える。

「俺は…死ぬ訳にはいかない…地球では…ナナシが戦っている…!早く駆けつけてやらないと…」

テンカは既に満身創痍だ。いつ死んでもおかしくないその体で、ファイマに迫っていた。
ファイマはテンカの放つ威圧感に恐怖を覚えていた。
受けたダメージ、残りのエネルギーはファイマが優勢だ。だが、最後の切り札を耐え切られたことで、プライドをズタズタに引き裂かれ、心が弱ってしまっていた。炎もすっかり消えた。

「俺の…勝ちだ…!」

「ヒィ…!」

ファイマの胸元に手を添えたテンカは天界力を放出した。
それは、ファイマの体を貫いた。
大穴の空いたファイマは後ろに倒れ、紫色の光となった。

「…?なんだ…これ?」

その光はテンカも初めて見たもので、暫くすると、空に消えた。

「なんだったんだ…?いや、考えている暇は無い…早くナナシの元に…!」

正直今の自分に何ができるのか、と言ったところだが。傷ついたナナシの回復をすることは出来る。
まずは隠れて戦況を見ながら、劣勢であれば、隙を見てどこかに避難させてから、回復をさせよう…

そう考えたテンカは地上の様子を覗いた。

「…?何が…起きているんだ?」

テンカの目に飛び込んできたのは、異様な光景だった。
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