ヘタレ転移者 ~孤児院を救うために冒険者をしていたら何故か領地経営をすることになったので、嫁たちとスローライフを送るためにも頑張ります~

茶山大地

文字の大きさ
上 下
302 / 317
第十三章 ヘタレ教育制度改革

第二十三話 酢飯ってむせるよね?

しおりを挟む


「今日のクレア様ご謹製弁当はいつにもまして素晴らしい!」

「いなり寿司というのは初めて食べたが、おにぎりとはまた違う感じの食べ応えがあって良いな」

「うおおおん! 婆さんの作る茶色飯とは違ってこのいなり寿司の艶やかな色合いが素晴らしいですじゃ!」


 とりあえず収穫祭に関しての話は終わり、昼食の時間になった。
 いつもの三人組がクレアの弁当を食べながら騒ぎ出すのだが、三人目の奥さんは茶色飯ばかりなのか……。養護施設時代の先生の作ってくれた弁当も茶色一色だったなあ。


「二段目のこれは? 海苔が巻かれているのはわかるのだが、細長いお握りか?」

「うむ、私も初めて見るな。形は変わっているが、おにぎりのような味だ。米に酢を使っているのか程よい酸味があって食べやすいぞ」


 いつもの三人組のうちのふたりが、クレア特製三段重ねお重弁当の二段目について語っているので説明してやる。
 酢飯とか苦手な連中がいるかもしれないしな。今回のいなり寿司の中身は酢を抑えた五目飯風を詰めてあるので、酢飯が苦手でも食べられるようになっているのだ。


「ああ、それは海苔巻きだな。細いのがかんぴょう巻き、玉子焼き巻き、そしてカッパ……じゃなくてキュウリ巻きだ。酢飯を使った寿司という料理のひとつで、太いのが、から揚げを刻んでマヨネーズで和えてレタスと一緒に巻いた太巻きだ」

「閣下、大変美味しゅうございます」

「流石クレア様ですな。この酢の加減とかかなり難しいのでは」

「うおおおん! こんなに美味しいものを食べてしまったら家で婆さんの作る飯が食えなくなってしまいますじゃ!」

「うるさいぞ三人目。黙って食え」


 クレア特選三段お重弁当は、一番上がいなり寿司、二段目が細巻きと太巻き、三段目がサラダとデザートという助六セットだ。
 これは明日の収穫祭でも販売する予定なのだが、一応この三段重ねお重弁当ひとつで四人家族分を想定してるんだが、流石に魔法適性持ちが多いのか、あっさりと平らげていく。
 魔法適性の無いアイリーンも普通に完食しそうな勢いだ。あいつはジ〇リアンだし元々健啖家なのだろうか。


「旦那様、寿司も問題なく受け入れられそうですわね」


 先日、晩飯のメニューで初めて手巻き寿司にしたところ、酢飯にハマったクリスが嬉しそうに言って来る。
 だが、新鮮な魚介類がない寿司ってのもちょっと寂しい。
 缶詰が亜人国家で大量量産されるようになれば煮穴子とかなら入手できるのかね? 穴子が獲れるのかも知らないけど。


「酢飯って意外とこっちでも受け入れられるんだな」

「お兄様! わたくしもお寿司大好きです! ゲホッゲホッ」


 細巻きを頬張りながらシルも何故か寿司好きをアピールしてくるが、酢飯にむせているようだ。


「酢でむせてるじゃねーか」

「何故か出てしまうんですが、でも美味しいですよ!」

「俺もすぐむせちゃう方だからわかるけど、あまり一気に寿司を頬張るなよ。むせたら悲惨なことになるからな」

「は、はい」


 むせるのだけは制御できなきないからな。
 寿司というか酢飯は大好きなんだけど、ちょっと強めに酢が効いてるとすぐむせちゃうんだよな。なんとかならないのかねこの現象。
 大人になれば慣れるかと思ったけどそうでもないし。

 会議室内を見渡してみると、酢飯は結構好評のようだ。むせてる奴もいないし。
 俺とシルがたまにむせている程度だ。
 日本人の俺の方が酢に弱いのか。まあこっちではワインビネガーを大量に使った料理とかもあるし、酢飯にはそれほど抵抗が無いのかもしれない。


「ブフッ!」


 三段目のサラダを食べていたシルが急にむせる。
 なんとか口の中身をまき散らすのは回避したようだが……。


「アホだなシル。一気に口に入れるからそんなことに……ブフッ!」


 サラダを口に入れた途端、俺もシルと同じようにむせてしまう。
 サラダのドレッシングが酢の効いた和風ドレッシングだったせいなんだけど、油断してしまった……。


「大丈夫ですか旦那様」


 隣に座るクリスがハンカチで俺の鼻を拭ってくれる。口から噴き出すことは回避したが、鼻水が出てしまっていたらしい。恥ずい。


「お兄様……」


 俺に抗議の目を向けるシル。お前は鼻水も回避してたのか、凄いな俺より酢に強いじゃん。


「今後うちで出す料理は酢の量を控えめにするか。悲惨なことになる可能性があるし」

「そうですね……」

 少し申し訳なさそうなシルと話し合って我が家の酢ルールが決まったので、弁当の残りをむせないように注意して平らげる。
 三段重ねのお重弁当を食べきれるあたり、俺もなんだかんだこの世界に馴染んでしまったようだ。


「じゃあそろそろ始めるかー」

「「「はっ」」」


 女官が各人の弁当箱や湯のみなどを片付け、午後の会議が始まる。
 帝国への対策会議なんだが、気が重いな。
 戦争になるようなことだけは絶対回避したいんだけど、好戦的な連中が多いから凄く不安だ。





―――――――――――――――――――――――――――――――――

本作は小説家になろう、カクヨムでも掲載しております。
よろしければそちらでも応援いただけますと励みになります。

また、小説家になろう版は、序盤から新規に挿絵を大量に追加したうえで、一話当たりの文字数調整、加筆修正、縦読み対応の改稿版となります。
ファンアート、一部重複もありますが、総数で200枚近い挿絵を掲載し、九章以降ではほぼ毎話挿絵を掲載しております。
是非挿絵だけでもご覧くださいませ。
特に十一章の水着回と十三章の制服回は必見です!絵師様の渾身のヒロインたちの水着絵と制服絵を是非ご覧ください!
その際に、小説家になろう版やカクヨム版ヘタレ転移者の方でもブクマ、評価の方を頂けましたら幸いです。
しおりを挟む
感想 26

あなたにおすすめの小説

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ! 

タヌキ汁
ファンタジー
 国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。  これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

【二章開始】『事務員はいらない』と実家からも騎士団からも追放された書記は『命名』で生み出した最強家族とのんびり暮らしたい

斑目 ごたく
ファンタジー
 「この騎士団に、事務員はいらない。ユーリ、お前はクビだ」リグリア王国最強の騎士団と呼ばれた黒葬騎士団。そこで自らのスキル「書記」を生かして事務仕事に勤しんでいたユーリは、そう言われ騎士団を追放される。  さらに彼は「四大貴族」と呼ばれるほどの名門貴族であった実家からも勘当されたのだった。  失意のまま乗合馬車に飛び乗ったユーリが辿り着いたのは、最果ての街キッパゲルラ。  彼はそこで自らのスキル「書記」を生かすことで、無自覚なまま成功を手にする。  そして彼のスキル「書記」には、新たな能力「命名」が目覚めていた。  彼はその能力「命名」で二人の獣耳美少女、「ネロ」と「プティ」を生み出す。  そして彼女達が見つけ出した伝説の聖剣「エクスカリバー」を「命名」したユーリはその三人の家族と共に賑やかに暮らしていく。    やがて事務員としての仕事欲しさから領主に雇われた彼は、大好きな事務仕事に全力に勤しんでいた。それがとんでもない騒動を巻き起こすとは知らずに。  これは事務仕事が大好きな余りそのチートスキルで無自覚に無双するユーリと、彼が生み出した最強の家族が世界を「書き換えて」いく物語。  火・木・土曜日20:10、定期更新中。  この作品は「小説家になろう」様にも投稿されています。

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜

霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!! 「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」 回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。 フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。 しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを…… 途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。 フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。 フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった…… これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である! (160話で完結予定) 元タイトル 「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

孤児院で育った俺、ある日目覚めたスキル、万物を見通す目と共に最強へと成りあがる

シア07
ファンタジー
主人公、ファクトは親の顔も知らない孤児だった。 そんな彼は孤児院で育って10年が経った頃、突如として能力が目覚める。 なんでも見通せるという万物を見通す目だった。 目で見れば材料や相手の能力がわかるというものだった。 これは、この――能力は一体……なんなんだぁぁぁぁぁぁぁ!? その能力に振り回されながらも孤児院が魔獣の到来によってなくなり、同じ孤児院育ちで幼馴染であるミクと共に旅に出ることにした。 魔法、スキルなんでもあるこの世界で今、孤児院で育った彼が個性豊かな仲間と共に最強へと成りあがる物語が今、幕を開ける。 ※他サイトでも連載しています。  大体21:30分ごろに更新してます。

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない

一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。 クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。 さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。 両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。 ……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。 それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。 皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。 ※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

処理中です...