288 / 317
第十三章 ヘタレ教育制度改革
第九話 ランドセル
しおりを挟む服飾部でミコトとエマのファッションショーが開催された翌朝。
騒がしい朝食の時間、俺はいつものようにチーオムを食べていた。
「お兄ちゃん、毎朝チーズオムレツを食べているけど飽きないの?」
「朝食に毎回目玉焼きを食べるようなもんだろ、ひと手間かかる分目玉焼きより大変だけど美味いし飽きないぞ」
「ふーん」
興味なさそうな返事とともに、エリナはこんがり焼けたソーセージをナイフで切り分け、お上品に口へ運ぶ。
「いやいやエリナ、お前だってソーセージを一日おきくらいで食べてるだろ」
「そうだねー」
「おい聞けよアホ嫁」
「「チーオム!」」
「うるせー駄鳥!」
「パパ! あさからけんかはだめ! ヤマトも!」
「ぱぱもむさしもけんかはだめだよ!」
ファミレスで貰ったお気に入りの食器で、たまねぎやジャガイモ、チーズなど具だくさんのスパニッシュオムレツを食べながらミコトとエマは俺と駄鳥に注意をしてくるが……。
「ミコト、エマ。朝からその服を着るのはやめなさい」
「やだー」
「かわいいんだもん」
昨日試着した制服の内、何着かを貰って来たミコトとエマは、朝からばっちり制服を着込んで準備万端だ。
皮革製品を作る専門課程の連中に試作を依頼した通学用品が今日完成するとのことで、今日の午後にまた服飾部へ行くことになっているのだ。
「学園に行くのは午後からなんだから、今から制服を着ていると汚しちゃうだろ?」
「「よごさないもん」」
今朝、寝巻から着替えるときにエリナやクレアに何度も諭された結果なのか、ミコトとエマは制服を着る代わりに食事用エプロンをしっかり着用させられている。
エマは少し前まで食事エプロンをつけさせられていたが、最近やっとつけなくてもいいようになって喜んでいたばかりだったんだけどな。
制服を汚さないためという理由でつけさせられたんだろう。ミコトも一緒につけているからというのもあるかもしれないけど。
ふたりの食事マナーはしっかりできているから別に制服を汚したりっていう心配はしてないんだが、最近はヤマトとムサシに給餌する時にポロポロこぼしてクレアに怒られたりしてたから仕方がないな。
「エプロン似合ってるぞ」
「「ぶー!」」
「「ピー!」」
◇
「パパ! きょうはどんなおようふくなのかな?」
「洋服じゃないぞ」
「へー! なんだろ?」
「靴とか鞄じゃないのか?」
「「たのしみ!」」
「「ピッピ!」」
朝食の時に俺とヤマトとムサシが言い争いをしたのを注意したせいなのか、ミコトとエマは珍しく俺と手をつないで歩いている。
ちょっと気にしてるのかな。
両手に花という状態なのだが、ミコトとエマの頭の上に乗っているヤマトとムサシとの距離が近くなったせいでミコトとエマの頭から俺の頭や肩にちょいちょい飛び移ったりして遊んできてうざったい。
だがここでヤマトとムサシを邪険にするとまたミコトとエマに怒られるので、こいつらの好きにさせたまま、服飾部に向かうために学園内をゆっくり進んでいく。
「パパあけるね!」
「頼むミコト」
「えへへ! こんにちわー!」
「こんにちわー!」
ミコトが服飾部の扉を開け挨拶をすると、それに続いてエマも挨拶をして入室する。
「私たちの天使が来たーー!」
「制服を着てる! やっぱり可愛い!」
「えっ、ヤマトとムサシはミコトちゃんとエマちゃん以外の頭にも乗るの? 私にも乗ってくれないかな?」
いきなり制服を着て入室してきたミコトとエマに部室内がざわつく。
たしかに制服を着たミコトとエマは超絶可愛いからな。
あと何故かヤマトとムサシは俺の頭に乗ると頭皮をつついてくるから、むやみにこいつらを頭に乗せないほうが良いぞ。
「「「さあこっちよ! ミコトちゃんエマちゃん!」」」
そして俺の両手から娘ふたりがあっという間に連れ去られる。ちょっと寂しい。
連れ去られたミコトとエマの代わりに、服飾部部長のアンナが部室の奥から出迎えに来る。
「トーマお兄さん、連日呼び出してごめんね」
「いやこっちこそミコトとエマに良くしてもらってるから」
「試作品だし気にしなくていいのに」
「で、今日は通学用品だっけ?」
「ちょっと調整に時間かかったせいで送れちゃったけど、ランドセルと革靴が出来たんだよ」
「でも皮革製品だろ? コストが高そうだな」
「そうだねー。クリスお姉さんにアドバイスして貰って試作したスライム材の手提げの通学鞄は安いし防水だしね」
「手提げの通学鞄は年少組には持ちづらいかもだしな。背中に背負えるリュックとか良いかもな」
「両手がふさがっちゃうと危ないしね」
「年少組には革靴よりスニーカーの方が良さそうだし。ま、色々考えてみてくれ。市場で売れそうな商品の開発をすれば部費の増額もあるぞ」
「うん!」
アンナと通学用品談義をしていると、ミコトとエマが人垣から出て来る。
「パパ! みてみて! ランドセルかわいい!」
「ぱぱ! おくつもかわいいの!」
ミコトはミントグリーン、エマはピンクのランドセルを背負って、嬉しそうに俺の目の前でクルクルと回ってアピールしてくる。
似合いすぎだな。滅茶苦茶可愛い。
皮革製品を取り扱う職人の専門課程とはいえ、生徒がここまでの物を作れるのか。
予想以上に技術習得できていそうで何よりだ。
ランドセルも革靴もシンプルな作りながらしっかりしていて品質も良さそうだ。
「どう? トーマお兄さん。ミコトちゃんとエマちゃんに似合ってるでしょ?」
「ああ、コストを気にせずに導入しても良いかなって思うくらいに気に入ったぞ」
「トーマお兄さんって本当に親バカだねー。あとね、運動着もあるんだよ」
「ジャージは昨日ミコトとエマの分を貰ったろ?」
「中に着る綿素材の服だね。みんな! ミコトちゃんとエマちゃんに着せてあげて」
「「「はーい!」」」
そしてまたミコトとエマは奥の更衣室に連れ去られていく。
服飾部に制服の試作を依頼して以来、随分と色々なものを作ってるな。
商品開発力が高すぎないか?
常に不足しがちな学園の運営費の足しになればいいけど、著作権とかデザインの権利とか開発功労金とか色々考えておかないとまずいかもな。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
本作は小説家になろう、カクヨムでも掲載しております。
よろしければそちらでも応援いただけますと励みになります。
また、小説家になろう版は、序盤から新規に挿絵を大量に追加したうえで、一話当たりの文字数調整、加筆修正、縦読み対応の改稿版となります。
ファンアート、一部重複もありますが、総数で200枚近い挿絵を掲載し、九章以降ではほぼ毎話挿絵を掲載しております。
是非挿絵だけでもご覧くださいませ。
特に十一章の水着回と十三章の制服回は必見です!絵師様の渾身のヒロインたちの水着絵と制服絵を是非ご覧ください!
その際に、小説家になろう版やカクヨム版ヘタレ転移者の方でもブクマ、評価の方を頂けましたら幸いです。
0
お気に入りに追加
419
あなたにおすすめの小説

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

【二章開始】『事務員はいらない』と実家からも騎士団からも追放された書記は『命名』で生み出した最強家族とのんびり暮らしたい
斑目 ごたく
ファンタジー
「この騎士団に、事務員はいらない。ユーリ、お前はクビだ」リグリア王国最強の騎士団と呼ばれた黒葬騎士団。そこで自らのスキル「書記」を生かして事務仕事に勤しんでいたユーリは、そう言われ騎士団を追放される。
さらに彼は「四大貴族」と呼ばれるほどの名門貴族であった実家からも勘当されたのだった。
失意のまま乗合馬車に飛び乗ったユーリが辿り着いたのは、最果ての街キッパゲルラ。
彼はそこで自らのスキル「書記」を生かすことで、無自覚なまま成功を手にする。
そして彼のスキル「書記」には、新たな能力「命名」が目覚めていた。
彼はその能力「命名」で二人の獣耳美少女、「ネロ」と「プティ」を生み出す。
そして彼女達が見つけ出した伝説の聖剣「エクスカリバー」を「命名」したユーリはその三人の家族と共に賑やかに暮らしていく。
やがて事務員としての仕事欲しさから領主に雇われた彼は、大好きな事務仕事に全力に勤しんでいた。それがとんでもない騒動を巻き起こすとは知らずに。
これは事務仕事が大好きな余りそのチートスキルで無自覚に無双するユーリと、彼が生み出した最強の家族が世界を「書き換えて」いく物語。
火・木・土曜日20:10、定期更新中。
この作品は「小説家になろう」様にも投稿されています。

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜
霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!!
「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」
回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。
フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。
しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを……
途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。
フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。
フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった……
これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である!
(160話で完結予定)
元タイトル
「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない
一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。
クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。
さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。
両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。
……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。
それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。
皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。
※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

孤児院で育った俺、ある日目覚めたスキル、万物を見通す目と共に最強へと成りあがる
シア07
ファンタジー
主人公、ファクトは親の顔も知らない孤児だった。
そんな彼は孤児院で育って10年が経った頃、突如として能力が目覚める。
なんでも見通せるという万物を見通す目だった。
目で見れば材料や相手の能力がわかるというものだった。
これは、この――能力は一体……なんなんだぁぁぁぁぁぁぁ!?
その能力に振り回されながらも孤児院が魔獣の到来によってなくなり、同じ孤児院育ちで幼馴染であるミクと共に旅に出ることにした。
魔法、スキルなんでもあるこの世界で今、孤児院で育った彼が個性豊かな仲間と共に最強へと成りあがる物語が今、幕を開ける。
※他サイトでも連載しています。
大体21:30分ごろに更新してます。

14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はルーク
普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。
だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。
洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。
------
この子のおかげで作家デビューできました
ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる