ヘタレ転移者 ~孤児院を救うために冒険者をしていたら何故か領地経営をすることになったので、嫁たちとスローライフを送るためにも頑張ります~

茶山大地

文字の大きさ
上 下
275 / 317
第十二章 ヘタレ情操教育

第二十四話 繭

しおりを挟む

 今日の晩飯である、チーズインハンバーグとエビフライが完成したのでリビングに持っていき、テーブルに並べる。
 クレアの作った副菜の鶏と大根の煮物や、常備菜の鶏のから揚げなども並べていく。


「いいかお前らー。エビフライは一人三本でお代わりは無いぞー。ハンバーグも無いからなー」

「「「はーい!」」」

「エビフライにはウスターソースとタルタルソースを用意したが、少なくとも一本はウスターソースで食えよー」

「「「はーい!」」」

「特にサクラと一号は絶対にウスターソースを使うように」

「「えー」」

「よしじゃあ食っていいぞ!」

「「「いただきまーす!」」」


 食事前の挨拶が終わると同時にガキんちょどもががっつき始める。


「うめー!」

「エビフライおいしー!」

「やっぱタルタルだよなサクラ姉ちゃん!」

「そうですねっアラン君!」


 ガキんちょどもにエビフライは好評のようだ。
 相変わらず一号とサクラはタルタルをアホみたいに盛って食ってるが。

 淡水海老でもこれだけ好評なんだし、養殖とか考えても良いのかもしれない。
 エルフの猟師が持ってきたものなのだが、やはり市場で流通している豚肉や鶏肉と比較しても手が届かないほどではないが高価なのだ。
 スライムの養殖もやってるし、一緒にできないのかね。可能だけど単にエルフがめんどくさがってやる奴がいないとかってオチかもしれないけど。
 あとでマリアとエカテリーナに相談してみるか。


「「ピッピッピ!」」

「ミコトちゃんエマちゃん、今日はヤマトとムサシはいっぱい食べるんだね」

「うん! 今日はお外をたくさん飛んだからかなあ」

「いっぱいとんだもんね!みこねー!」


 そう言いながら、ミコトとエマは、ナイフとフォークで小さく切り分けたハンバーグをフォークに刺し、肩にとまってるヤマトとムサシに差し出している。
 ヤマトとムサシは凄い勢いでガツガツと凄いスピードでハンバーグをつついて食べまくっている。
 見た目はスズメサイズの小汚い鳥なのに、その体のどこにそれだけのハンバーグが入ってるんだ……。


「「ピー! ピー!」」

「あーうるさい。わかったわかった。俺のハンバーグも分けてやるから黙って食え」

「「ピッピッ!」」


 俺のハンバーグも貰えるとご機嫌を直したのか、俺がハンバーグを切り分けると俺の左右の肩にヤマトとムサシが飛び移ってくる。


「ほれ」


 フォーク二本を使って切り分けたハンバーグをヤマトとムサシに差し出すと、先ほどと同じくガツガツとついばみだす。


「「ピッピ!」」

「ミコトとエマは今のうちに自分の分を食べるようにな」

「「はーい」」


 最近のミコトとエマは、自分たちのことよりヤマトとムサシの世話を優先してるからな。
 少しは手伝ってやらないと。


「「ピー! ピー!」」


 ヤマトとムサシがフォークに刺したハンバーグを食べ終わったので、もう一切れ食べさせるかとハンバーグを切り分けていたところに、ピーピー鳴きだす。


「なんだ? 次は米を食いたいのか?」

「「ピッピッ!」」


 めんどくさいなこいつらと思いながら、なぜ意思疎通できるんだろうかという疑問が頭をよぎったがスルーする。
 言語変換機能の影響かもしれないな。完全な意思疎通とまでは言わないが、ある程度は影響してるのかもしれん。
 今度はスプーンで白米を掬い、ヤマトとムサシにそれぞれ差し出す。


「「ピッピ!」」


 こいつら雛の時から米を良く食うんだよな。最近は肉の比率が高くなってきたけど、それでも必ず米を食いたがる。


「「ゲプッ。ピー」」


 腹がいっぱいになったのか、ヤマトとムサシは鳥の癖に人の肩でゲップをしたあと、以前に三人目が用意した鳥カゴに向かって飛んでいく。
 態度悪すぎだろ。というか鳥ってゲップするんか?
 大きく膨らんだ腹で、よたよたと飛んでいくのはアホすぎるだろ、自然界でそんな事態に陥ったらすぐに捕食されちゃうだろ。野生のかけらもないのなあいつら。

 鳥カゴにたどり着いたヤマトとムサシは、器用に入り口を開けて中に入る。
 完全に扉の意味がない。あいつらは眠くなったら勝手に鳥カゴに戻るし、昼寝が終わったら自由に出てくるしな。


「ヤマトはもうおやすみなのかな?」

「むさしもいつもよりはやいね」

「すげえ食ってたからだろ。腹いっぱいになったら寝るとかもうおっさんだぞ」

「パパ! ヤマトとムサシはおんなのこだもん!」

「ぱぱ! おっさんじゃないよ!」

「そのうち酒とか飲みそうで嫌だな」

「のまないもん!」

「そうだよ!」

「はいはい」


 娘ふたりの抗議をスルーし、やっと落ち着いて食事をする。
 俺の食事が終わるころには、ミコトとエマを含めてガキんちょどもも全員食べ終わっていた。


「兄さま片付けちゃいますね」

「おう、食器は俺が持っていくから」

「お願いしますね」


 よっこらしょと立ち上がって食器をマジックボックスに収納していると、ミコトとエマが「パパ!」「ぱぱ!」とリビングの片隅から声をかけてくる。


「どした?」


 ミコトとエマの方へ行くと、ふたりが鳥かごを指さしながら


「たいへん! たいへん!」


 と声をあげている。
 ふたりが指さすその鳥かごを見ると、鳥籠の中いっぱいに繭が出来ていた。


「クリス、マリア、エカテリーナ」


 まだリビングにいた三人を呼び寄せ、鳥籠を見せる。


「繭……ですか……」

「クリス、知っているのか?」

「いえ、昔聞いた信憑性の無い話ですので」

「少しでもヒントになるかもしれないから知ってれば話してほしいんだが」

「そうですね、旦那様、まずはベルトロ卿に連絡を取ります。わたくしのそのお話をもっと詳しくご存じかもしれませんし」

「センセ! 私も魔物に詳しいエルフを呼んできます! たしかファルケンブルクに移住してたのですぐに連れてきますね!」

「トーマさん、ロイドさんもお呼びしたほうが良いかもしれません」

「頼む」


 クリスが三人目を、マリアが魔物に詳しいエルフを、エカテリーナが爺さんをそれぞれ呼びに向かう。


「パパ! ヤマトとムサシはだいじょうぶなの⁉」

「ぱぱ! へいきなの⁉」

「ちょっと待ってろ」


 鳥カゴの扉を開け、繭に少し触れてみる。
 魔力を感じるような気もするし、少し動いてる感じもする。何より温かい。
 何かに変態するのかな? さっきおっさん化するかもとか言ったが、もちろんそう意味ではない。


「パパ!」

「ぱぱ!」

「ああ、温かいし大丈夫だ。今専門家を呼んだし心配しないようにな」

「「うん!」」


 ミコトとエマが俺に寄り添い、心配そうに鳥カゴの中の繭を見守る。
 ヤマトとムサシは元々種類もわからないような魔物だったしな。死んだりはしないだろうが一体どうなるんだろうか。
 凶悪な魔物とかが生まれた場合、ミコトとエマの目の前で倒さないといけなくなるかもしれない。
 それだけは避けたいけどな。







―――――――――――――――――――――――――――――――――

本作は小説家になろう、カクヨムでも掲載しております。
よろしければそちらでも応援いただけますと励みになります。

また、小説家になろう版は、序盤から新規に挿絵を大量に追加したうえで、一話当たりの文字数調整、加筆修正、縦読み対応の改稿版となります。
ファンアート、一部重複もありますが、総数で100枚を余裕で超える挿絵を掲載し、九章以降ではほぼ毎話挿絵を掲載しております。
是非挿絵だけでもご覧くださいませ。
特に十一章の水着回は必見です!絵師様の渾身のヒロインたちの水着絵を是非ご覧ください!
その際に、小説家になろう版やカクヨム版ヘタレ転移者の方でもブクマ、評価の方を頂けましたら幸いです。
しおりを挟む
感想 26

あなたにおすすめの小説

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない

一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。 クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。 さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。 両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。 ……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。 それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。 皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。 ※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はルーク 普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。 だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。 洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。 ------ この子のおかげで作家デビューできました ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが

【二章開始】『事務員はいらない』と実家からも騎士団からも追放された書記は『命名』で生み出した最強家族とのんびり暮らしたい

斑目 ごたく
ファンタジー
 「この騎士団に、事務員はいらない。ユーリ、お前はクビだ」リグリア王国最強の騎士団と呼ばれた黒葬騎士団。そこで自らのスキル「書記」を生かして事務仕事に勤しんでいたユーリは、そう言われ騎士団を追放される。  さらに彼は「四大貴族」と呼ばれるほどの名門貴族であった実家からも勘当されたのだった。  失意のまま乗合馬車に飛び乗ったユーリが辿り着いたのは、最果ての街キッパゲルラ。  彼はそこで自らのスキル「書記」を生かすことで、無自覚なまま成功を手にする。  そして彼のスキル「書記」には、新たな能力「命名」が目覚めていた。  彼はその能力「命名」で二人の獣耳美少女、「ネロ」と「プティ」を生み出す。  そして彼女達が見つけ出した伝説の聖剣「エクスカリバー」を「命名」したユーリはその三人の家族と共に賑やかに暮らしていく。    やがて事務員としての仕事欲しさから領主に雇われた彼は、大好きな事務仕事に全力に勤しんでいた。それがとんでもない騒動を巻き起こすとは知らずに。  これは事務仕事が大好きな余りそのチートスキルで無自覚に無双するユーリと、彼が生み出した最強の家族が世界を「書き換えて」いく物語。  火・木・土曜日20:10、定期更新中。  この作品は「小説家になろう」様にも投稿されています。

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜

霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!! 「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」 回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。 フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。 しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを…… 途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。 フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。 フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった…… これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である! (160話で完結予定) 元タイトル 「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

孤児院で育った俺、ある日目覚めたスキル、万物を見通す目と共に最強へと成りあがる

シア07
ファンタジー
主人公、ファクトは親の顔も知らない孤児だった。 そんな彼は孤児院で育って10年が経った頃、突如として能力が目覚める。 なんでも見通せるという万物を見通す目だった。 目で見れば材料や相手の能力がわかるというものだった。 これは、この――能力は一体……なんなんだぁぁぁぁぁぁぁ!? その能力に振り回されながらも孤児院が魔獣の到来によってなくなり、同じ孤児院育ちで幼馴染であるミクと共に旅に出ることにした。 魔法、スキルなんでもあるこの世界で今、孤児院で育った彼が個性豊かな仲間と共に最強へと成りあがる物語が今、幕を開ける。 ※他サイトでも連載しています。  大体21:30分ごろに更新してます。

処理中です...