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第十二章 ヘタレ情操教育

第十八話 調味料

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 正体不明なヤマトとムサシのことはとりあえず放置することになった。よくわからんし。


「兄さま、じゃあダシを取っちゃいますね」


 今日も今日とてクレアと朝食を作る。
 最初はヤマトとムサシ用に白米に雑穀を混ぜてすり潰して煮たものを用意していたのだが、肉でもなんでも食うことが判明した上に、いちいち煮て柔らかくする必要もないし、ミコトとエマが自分の食事を分け与えるようになったので特に用意はしないのだ。


「頼む。しかしいちいちダシを取るのも面倒じゃないか?」

「そうですか? 慣れちゃいましたからね。それに和風のダシは簡単だと思いますよ」

「洋風ダシは確かに大変だから、親父のところからブイヨンを買ってるしな。ってそうか、ブイヨンみたいに簡単に使える和風ダシの調味料を作っちゃえばいいのか」

「和風ダシの調味料ですか?」

「和風ダシだけじゃなく、中華ダシもだな」

「中華ダシはそうですね、あれば便利ですね」

「魚介系のダシは癖があるから難しいかもしれないが、煮干しの粉末ていどなら問題ないかも」

「お魚はあまり食べる習慣がないですからね」

「朝飯を食い終わったら色々作ってみるか。亜人国家連合の方で粉末やペースト状のダシに加工すれば、こっちに輸入する時に輸送費も抑えられるし」

「わかりました兄さま」

「鶏ガラや豚骨やラードなんかは給食室に行けばあるかな? インスタント麺用の粉スープも作ってるし」





 いつもの騒がしい朝食が終わり、早速クレアと調味料の試作に取り掛かる。
 給食室から即席麺のスープに使ってる粉末スープの素などの材料も持ってきた。
 今回の調味料作成で、より良い物が作ればもっと即席麺も売れるかもな。

 ミコトとエマは、ヤマトとムサシと外で遊ぶとか言い出したので、エリナについて行ってもらった。
 ヤマトとムサシはもうかなり自由に飛べるようになったのだが、相変わらず見た目は雛のままだ。

 とにかく、うるさいのがいないうちにさっさと調味料の試作をするか。


「じゃあクレアは乾燥昆布と鰹節を粉状にしてくれるか?」

「はい兄さま」

「そのあいだ俺は中華ダシの方を試作してみる。と言っても即席麺のスープを改良するだけなんだが」

「今のままでも美味しいですけどね、醤油味とか塩味、味噌味と味付けする前の状態だと調理の際に使い勝手がよさそうですね」

「やはりウェーイって感じの味の覇王みたいな調味料があれば便利だよな」

「ウェーイ? 味の覇王?」

「こっちの話だ」

「兄さまのいつものですね」


 クレアの俺に対する扱いが雑なのはスルーだ。
 創〇シャン〇ンと一緒なんだっけ? と味の覇王的な味をイメージして試作する。
 鶏ガラスープの粉末に豚骨スープの粉末を加え、塩、ラード、ごま油、ネギ、にんにくなど、少しずつ味を見ながら調味してみる。


「ちょっと旨味が足りないな」

「兄さま、乾燥昆布の粉末を加えてみたらどうですか?」

「そうだな」


 クレアに粉末にしたばかりの昆布を貰って投入してみると、少し近づいてきた気がする。


「兄さま、鰹節と昆布の粉状にしてみましたが、凄いですねこれ。お湯に溶かして少しお塩を入れるだけでスープになりましたよ」

「弁当販売で売ってる即席味噌汁の味噌玉は鰹節しか入ってないし、昆布のダシを使った簡易スープも開発できそうだ」

「粉状なら形の悪い昆布なんかも無駄なく使えますからね。輸送費だけじゃなく、規格外の昆布なども使えば、品物そのもののコストも下げられそうです。加工も簡単ですし」

「お、おう」


 流石コストにうるさいクレアさんだ。
 輸送費は考えたが、小さかったり、見た目がよくなかったり、ウニに食べられて穴が開いてる規格外の昆布も使えるからコスト低減にもなるか。


「兄さま、少し醤油を入れてみてはどうですか?」

「わかった」


 色々混ぜて調味中のものをクレアは少し味見してアドバイスをくれる。
 醤油を少し足して味見をすると、かなり美味くなっている。味の覇王とはまた少し違う感じがする。シャンターンの柔らかいバージョンとかそっちの方かな。

 クレア担当の鰹節と昆布の粉末は問題なく完成したので、中華スープの素の方は手の空いたクレアの手を借りて作ることにした。
 クレアは味見をしながら、ネギ油やら香辛料などを、ほぼ迷いなくポンポン入れていく。


「兄さま、味見をお願いできますか?」


 クレアが差し出してくるその中華ダシをお湯で溶かしたスープを受け取り、味見をする。


「あ、マジで美味い」

「ありがとうございます兄さま!」

「これさ、中華麺や即席麺のスープだけじゃなく、チャーハンの味付けに使ったり、野菜炒めなんかの調理に使っても美味いぞ多分」

「たしかに美味しそうですね」

「これをうちで使いながら、更に改良して、ついでに量産化を視野に入れたコスト提言なんかも考慮して色々考えてみるか。クレアの味覚が頼りだからな、頼むぞ」

「わかりました! 任せてください兄さま!」


 ふんす! と握りこぶしを作るクレアは相変わらず迫力皆無で可愛い。
 手軽に美味しい料理を作れる調味料、しかも安くて色々な料理に使えるとなればかなり売れるんじゃないだろうか?
 加工さえ亜人国家連合の方でやってしまえば、魚介系スープも安く実現できそうだし、少しずつ魚介系のダシの風味も流行ると良いんだけどな。



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本作は小説家になろう、カクヨムでも掲載しております。
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また、小説家になろう版は、序盤から新規に挿絵を大量に追加したうえで、一話当たりの文字数調整、加筆修正、縦読み対応の改稿版となります。
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