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第十二章 ヘタレ情操教育
第三話 娘の魔法
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最近増えたというダッシュエミューを移動中に頻繁に見かけるが、やはり魔力を探知してこちらに気づいてるのか、こちらを避けて近づく気配がないので、全員で低木の茂る場所まで着くと身を隠す。
「さてどうするか、結構な数のダッシュエミューがいるから、待ってればその内こっちに向かってくるのは出てくると思うけど」
「お兄ちゃん、ソニックバレットでこっちに追い立てる?」
「そっちの方が早いか。じゃあミコトとエマ、最初はどっちがやるんだ?」
「エマちゃんおさきにどうぞ!」
「ありがとーみこねー!」
「仕留めきれなくてこっちに向かってきたら俺かエリナが仕留めるからな。無理しないでいいぞ」
「うん!」
「クレアは防御の方を頼むな」
「はい兄さま」
しかし害獣とはいえ三歳の娘が動物を殺すのか、できれば子どもにはこんなことをさせたくないんだが、そんなことを考えるのは、日本のように安全な場所で育った俺の我儘なんだろうか。
自衛が可能なように魔法の使える生徒には実地で訓練をさせるが、いずれはこういう害獣を気にせず旅行などができるようにしたいんだけどな。
せめて子供たちにはこういうことをさせたくないとは思うんだが、ハンターや猟師が天職って可能性もあるからな、難しいところだ。
もちろん希望制なので、動物が怖いとか、殺したくないという場合には参加させないようにクリスたちには厳命している。
また、トラウマになったりしないようそのあたりは十分に注意するようにも言ってあるが、魔法科の生徒は全員課外授業に参加しているとのことだ。
まあこの世界の子ども達はグロ絵本で耐性があるしな。
「お兄ちゃん! 近づいてくるダッシュエミューがいるよ!」
「お、本当だ。ただ方向的にこちらには向かってこなそうだから音響弾で誘導してこちらに向かわせるか」
「わかった! 任せて!」
「じゃあエマ、準備はいいか?」
「うん! ぱぱ!」
「じゃあエリナ、頼む」
「うん! じゃあ行くよ! 音響弾!」
エリナの射出した音響弾が、二百メートルほど先のダッシュエミューの近くに着弾する。
その後も、音響弾を適度に散らして着弾させ、ダッシュエミューをこちらに追い込むことに成功する。
百メートルほどまで近づいてきたダッシュエミューを注視しながら、エマに魔法の許可をだす。
もちろんエマが撃ち漏らした場合に備えて、俺も魔法をいつでも使えるように準備しておく。
「魔法を使ってもいいぞエマ」
「うん! びりびりいっぱい!」
エマが魔法を行使すると、上空から小規模な落雷が何回も発生し、ダッシュエミューを襲う。
流石のダッシュエミューもまさに光速の飽和攻撃を避けることが出来ずに、電撃によって真っ黒こげになって転がった。
いきなり三歳時が中級の雷魔法かよ……。
あと相変わらずルビがおかしいぞ。ちゃんと仕事しろ言語変換機能。いや、エマが魔法名を独自解釈してジャッジメントサンダーを行使してるという解釈なのかこれ?
ルビが見えるとかいうメタい機能まで充実してる言語変換機能のやることだしな。ありえそうだ。
「エマちゃんすごい!」
「ありがとーみこねー!」
「やったねエマちゃん!」
「うんママ!」
「エマちゃんは凄いですね!」
「えへへ! ありがとーくれあまま!」
「よくやったなエマ。パパはアレを回収してきちゃうわ」
「うん!」
褒められてご機嫌なエマをその場に残し、エマが仕留めた獲物に向かう。
五十メートルほど歩いて、ブスブスと黒煙を上げるダッシュエミューをとりあえずマジックボックスに収納して戻る。
「じゃあ次はミコトだな」
「うん!」
「じゃあちょうどいいのを見つけたらまたこっちに追い込むね!」
「頼むエリナ。エリナが魔法を使ったらミコトも魔法を使っていいからな」
「はーい!」
エリナの音響弾の射程圏内に入ってくるダッシュエミューを待つ。
以前にエリナと狩りをしてたころより明らかにダッシュエミューが多いのですぐに適当なダッシュエミューが現れる。
これ一日狩れば二、三十匹は狩れるんじゃね?
「アレを狙うね! 音響弾!」
先ほどと同じく、エリナが音響弾を使ってダッシュエミューをこちらに追い込む。
「いつでもいいぞミコト」
「うん!」
返事をしたミコトが立ち上がり、俺たちがいる低木の生い茂る場所から出て魔法を詠唱する。
「行くよ! ほのおのむち!」
炎の鞭を生み出したミコトはそれを空中に浮かべ、何本かに分割し、複数の炎の輪を作り上げる。
器用なことするのな……。
「みこねーすごい!」
喜ぶエマにニコっと微笑んだミコトがその複数の炎の輪を放射状に射出すると、両方の手のひらをかざし続ける。
全ての炎の輪をミコトが操作しているのか、ダッシュエミューの周囲に散った炎の輪が一斉に前後左右上下からダッシュエミューを襲う。
「やつざきこうりん!」
「絶対違う!」
ミコトが叫ぶ技名を即座に否定するも、このダッシュエミューも炎の輪による全方位攻撃によって炎に包まれる。
というかアレは光の輪だしな。
エマに比べて威力が少し劣るのか、ダッシュエミューは即死せず、少し走り回った後に絶命する。
ふたりは全属性の魔法適性があるが、魔力総量は年下ながらもエマの方がやや上という診断結果だったが、ミコトは明らかに魔力操作に才能の片鱗を見せている。
魔力では少しエマに劣るが、魔力操作ではミコトの方が上かもしれない。何しろ五歳児がビット攻撃するんだぞ、恐ろしい。
「みこねーすごーい!」
「ありがとーエマちゃん!」
「ミコトちゃん凄いよ! 私はそんなことできないよ!」
「てへへ! エリナママありがとー!」
「流石ミコトちゃんですね!」
「ママありがとー!」
「名前は変えような」
「えー!」
俺の言葉にだけ否定的なミコトへ低木の中に隠れるように言い、ミコトの仕留めたダッシュエミューの回収に向かう。
娘ふたりの才能がヤバすぎるな。
俺たちがダッシュエミュー狩りをするときは初級魔法がほとんど通じず、落とし穴や反則技に近い風縛でなんとか狩ってたのに、娘ふたりがこんなに簡単に狩ってしまうとは……。
しかも避けられないように飽和攻撃だの全方位攻撃だのバリエーションが豊富すぎだろ。
姉妹魔法なら上級魔法を使えるし、末恐ろしすぎる……。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
本作は小説家になろう、カクヨムでも掲載しております。
よろしければそちらでも応援いただけますと励みになります。
また、小説家になろう版は、序盤から新規に挿絵を大量に追加したうえで、一話当たりの文字数調整、加筆修正、縦読み対応の改稿版となります。
ファンアート、一部重複もありますが、総数で100枚を余裕で超える挿絵を掲載し、九章以降ではほぼ毎話挿絵を掲載しております。
是非挿絵だけでもご覧くださいませ。
特に十一章の水着回は必見です!絵師様の渾身のヒロインたちの水着絵を是非ご覧ください!
その際に、小説家になろう版やカクヨム版ヘタレ転移者の方でもブクマ、評価の方を頂けましたら幸いです。
「さてどうするか、結構な数のダッシュエミューがいるから、待ってればその内こっちに向かってくるのは出てくると思うけど」
「お兄ちゃん、ソニックバレットでこっちに追い立てる?」
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「ありがとーみこねー!」
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「うん!」
「クレアは防御の方を頼むな」
「はい兄さま」
しかし害獣とはいえ三歳の娘が動物を殺すのか、できれば子どもにはこんなことをさせたくないんだが、そんなことを考えるのは、日本のように安全な場所で育った俺の我儘なんだろうか。
自衛が可能なように魔法の使える生徒には実地で訓練をさせるが、いずれはこういう害獣を気にせず旅行などができるようにしたいんだけどな。
せめて子供たちにはこういうことをさせたくないとは思うんだが、ハンターや猟師が天職って可能性もあるからな、難しいところだ。
もちろん希望制なので、動物が怖いとか、殺したくないという場合には参加させないようにクリスたちには厳命している。
また、トラウマになったりしないようそのあたりは十分に注意するようにも言ってあるが、魔法科の生徒は全員課外授業に参加しているとのことだ。
まあこの世界の子ども達はグロ絵本で耐性があるしな。
「お兄ちゃん! 近づいてくるダッシュエミューがいるよ!」
「お、本当だ。ただ方向的にこちらには向かってこなそうだから音響弾で誘導してこちらに向かわせるか」
「わかった! 任せて!」
「じゃあエマ、準備はいいか?」
「うん! ぱぱ!」
「じゃあエリナ、頼む」
「うん! じゃあ行くよ! 音響弾!」
エリナの射出した音響弾が、二百メートルほど先のダッシュエミューの近くに着弾する。
その後も、音響弾を適度に散らして着弾させ、ダッシュエミューをこちらに追い込むことに成功する。
百メートルほどまで近づいてきたダッシュエミューを注視しながら、エマに魔法の許可をだす。
もちろんエマが撃ち漏らした場合に備えて、俺も魔法をいつでも使えるように準備しておく。
「魔法を使ってもいいぞエマ」
「うん! びりびりいっぱい!」
エマが魔法を行使すると、上空から小規模な落雷が何回も発生し、ダッシュエミューを襲う。
流石のダッシュエミューもまさに光速の飽和攻撃を避けることが出来ずに、電撃によって真っ黒こげになって転がった。
いきなり三歳時が中級の雷魔法かよ……。
あと相変わらずルビがおかしいぞ。ちゃんと仕事しろ言語変換機能。いや、エマが魔法名を独自解釈してジャッジメントサンダーを行使してるという解釈なのかこれ?
ルビが見えるとかいうメタい機能まで充実してる言語変換機能のやることだしな。ありえそうだ。
「エマちゃんすごい!」
「ありがとーみこねー!」
「やったねエマちゃん!」
「うんママ!」
「エマちゃんは凄いですね!」
「えへへ! ありがとーくれあまま!」
「よくやったなエマ。パパはアレを回収してきちゃうわ」
「うん!」
褒められてご機嫌なエマをその場に残し、エマが仕留めた獲物に向かう。
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「じゃあ次はミコトだな」
「うん!」
「じゃあちょうどいいのを見つけたらまたこっちに追い込むね!」
「頼むエリナ。エリナが魔法を使ったらミコトも魔法を使っていいからな」
「はーい!」
エリナの音響弾の射程圏内に入ってくるダッシュエミューを待つ。
以前にエリナと狩りをしてたころより明らかにダッシュエミューが多いのですぐに適当なダッシュエミューが現れる。
これ一日狩れば二、三十匹は狩れるんじゃね?
「アレを狙うね! 音響弾!」
先ほどと同じく、エリナが音響弾を使ってダッシュエミューをこちらに追い込む。
「いつでもいいぞミコト」
「うん!」
返事をしたミコトが立ち上がり、俺たちがいる低木の生い茂る場所から出て魔法を詠唱する。
「行くよ! ほのおのむち!」
炎の鞭を生み出したミコトはそれを空中に浮かべ、何本かに分割し、複数の炎の輪を作り上げる。
器用なことするのな……。
「みこねーすごい!」
喜ぶエマにニコっと微笑んだミコトがその複数の炎の輪を放射状に射出すると、両方の手のひらをかざし続ける。
全ての炎の輪をミコトが操作しているのか、ダッシュエミューの周囲に散った炎の輪が一斉に前後左右上下からダッシュエミューを襲う。
「やつざきこうりん!」
「絶対違う!」
ミコトが叫ぶ技名を即座に否定するも、このダッシュエミューも炎の輪による全方位攻撃によって炎に包まれる。
というかアレは光の輪だしな。
エマに比べて威力が少し劣るのか、ダッシュエミューは即死せず、少し走り回った後に絶命する。
ふたりは全属性の魔法適性があるが、魔力総量は年下ながらもエマの方がやや上という診断結果だったが、ミコトは明らかに魔力操作に才能の片鱗を見せている。
魔力では少しエマに劣るが、魔力操作ではミコトの方が上かもしれない。何しろ五歳児がビット攻撃するんだぞ、恐ろしい。
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「てへへ! エリナママありがとー!」
「流石ミコトちゃんですね!」
「ママありがとー!」
「名前は変えような」
「えー!」
俺の言葉にだけ否定的なミコトへ低木の中に隠れるように言い、ミコトの仕留めたダッシュエミューの回収に向かう。
娘ふたりの才能がヤバすぎるな。
俺たちがダッシュエミュー狩りをするときは初級魔法がほとんど通じず、落とし穴や反則技に近い風縛でなんとか狩ってたのに、娘ふたりがこんなに簡単に狩ってしまうとは……。
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