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第十章 ヘタレ異文化交流
第二十五話 改良ドラゴンキラー
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「お兄ちゃん頑張ってね!」
「兄さま、お仕事頑張ってくださいね!」
「パパいってらっしゃーい!」
「ぱぱがんばれー!」
嫁と娘に送られて家を出る。
娘ふたりに乗せられてついついエルフ族の支援に行くと言ってしまったのだが、早くも家に帰りたくなってきた。ミコトとエマに何を言われるかわからないから頑張るけど。多分俺が行ったところで何の役にも立たないと思うんだよな。
「で、どこを改造したんだ?」
ガレージに置かれた超音速魔導ミサイル搭載車両を見てみると、後ろの幌が無くなってボディと同色のでかい箱が乗ってる。
もう隠す気ゼロだな。
「超音速魔導ミサイル、通称『ドラゴンキラー』を改良しました。保管容器と発射筒を兼ねた四発の『改良ドラゴンキラー』を格納したセルをふたつ搭載してます。合計八発の『改良ドラゴンキラー』で防衛力はばっちりですね!」
「これVLSだな」
「センセ! 注目するのはそこじゃないです! 少し前に南部宿営地付近で天竜に対して『ドラゴンキラー』を使用したのですが、少し問題がありまして」
「問題? というか天竜の討伐報告なんかなかったんだが」
「消滅しましたからね!」
「は?」
「ドラゴンキラーが強力過ぎて跡形もなくなっちゃったんですよね。牙や爪の一部は残ったんですけどね!」
「馬鹿すぎだな。素材回収どころじゃないじゃないか」
「牙のかけらひとつでも回収できれば余裕でドラゴンキラー数発分の費用をペイできるのでそこは問題無かったのですが。そこでサイズを小さくした上で、推進剤と炸薬を減らす改良をいたしました」
「それで天竜を仕留められるのか? ミサイルのサイズが半分以下になってるじゃないか」
「成型炸薬弾頭を採用しましたからね」
「対戦車榴弾だな。というか凄くマニアック過ぎてついて行けないぞ」
「センセも流石男の子ですね。ミサイルはロマンですからね! ささ、早く乗ってください。もう作業が始まってる時間ですよ!」
「まあロマンというのはわかるけどな」
マリアに促されてミサイル搭載車両に乗る。
運転席に俺、助手席にマリア、後部座席にクリスとシルが乗り込む。シルは前回と同様に鎧をばっちり着込んでいるのでシートに傷がつかないか心配だ。
魔導ハイAより二回りは大きいサイズの車両が家のガレージから発進する。
大通りを使って南門から出ると、マリアがナビというかレーダーを弄りだす。
<ピコーン ETCカードを認識しました>
入れてないけどなそんなもん。
「よしっ! これでばっちりです!」
「もう突っ込まないぞ。というか早く音声を直せよ」
「機能に関係ない部分ですからね、後回しです」
片道三車線分はある、整備された広い街道を南へ向かって進んでいく。街道の両脇にはサクラが携わった水田が広がっていてとてものどかだ。
一時間半ほど運転していると、南部宿場町が見えてきた。
簡単な防壁に囲まれ、数百人が宿泊できる施設と、食堂、旅に必要な食料や道具などを扱っている商店などもあり、ちょっとした町のようだ。
ここには定期的にファルケンブルクの町や周辺諸侯領への巡回馬車なども出ており、中継拠点として栄えている。
「ちょっと休憩するか? あまりこんな物騒な車を見られたくないけど」
「いえ、わたくしは大丈夫ですわ旦那様」
「わたくしも平気ですお兄様!」
「センセ! ここからはエルフの作業予定地に近いですからすぐに向かいましょう!」
「わかった。じゃあ宿場町はスルーしてそのまま向かうぞ」
街の中央の大通りをそのまま進み、宿場町を出た瞬間にナビが反応する。
<ピコーン 音声案内を開始します>
む、早速出たか。しかし相変わらず緊張感がないなこの音声。
「クリス」
「はい旦那様。探査……天竜ですわ」
クリスが探査魔法を行使し、ナビのレーダーがとらえた敵を確認する。
「マジか。ミサイルは間に合うのか?」
「センセ! 大丈夫ですよ!」
<ピコーン 三十キロ先 目的地周辺です>
<ピコーン 二十キロ先 目的地周辺です>
高速でこちらに向かって来ているってことか?
マリアは大丈夫というが、流石に天竜の速度が速すぎる。
クリスがいれば何とかなるし、夫婦魔法なら一撃で落とせるはずだ。
そう判断した俺は車を停車させようとするが……、特に操作してないはずなのに荷台のミサイル発射台が自動的に動き始めている。
<ピコーン 目的地に到着しました>
ロック完了の音声案内が車内に響く。
――バシュン!
ミサイル発射音がした瞬間、ポンとごく小さな音がすると同時に
<ピコーン 音声案内を終了します>
撃墜完了の音声案内が車内に響いたのでナビを確認すると、輝点が消失している。
「あれ? 天竜さん? もう終わり?」
「落ちましたよ。多分天竜の体内はぐっちゃぐちゃですけど、皮や頭部などはほとんど残ってると思いますよセンセ!」
「あっそ。じゃあ天竜の回収に行くか。これでミコトとエマに楽器を買ってやれるな」
最近少し寂しくなってきた財布を気にしつつ、撃墜地点へと向かう。
「イージスシステムはばっちりでしたね!」
「またアホなことやってんのな」
「各拠点のレーダーと防衛兵器のリンクをさせているんですけどね、上手く自動迎撃できて良かったです」
「さよか」
敵味方識別装置とかどうなってんのかなーと思いながら運転を続ける。
とりあえずは天竜の回収だな。自動迎撃装置に関してはあとで報告書をあげさせないと。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
本作は小説家になろう、カクヨムでも掲載しております。
よろしければそちらでも応援いただけますと励みになります。
また、小説家になろう版は、序盤から新規に挿絵を大量に追加したうえで、一話当たりの文字数調整、加筆修正、縦読み対応の改稿版となります。
ファンアート、一部重複もありますが、総数で100枚を超える挿絵を掲載し、九章以降ではほぼ毎話挿絵を掲載しております。
是非挿絵だけでもご覧くださいませ。
「兄さま、お仕事頑張ってくださいね!」
「パパいってらっしゃーい!」
「ぱぱがんばれー!」
嫁と娘に送られて家を出る。
娘ふたりに乗せられてついついエルフ族の支援に行くと言ってしまったのだが、早くも家に帰りたくなってきた。ミコトとエマに何を言われるかわからないから頑張るけど。多分俺が行ったところで何の役にも立たないと思うんだよな。
「で、どこを改造したんだ?」
ガレージに置かれた超音速魔導ミサイル搭載車両を見てみると、後ろの幌が無くなってボディと同色のでかい箱が乗ってる。
もう隠す気ゼロだな。
「超音速魔導ミサイル、通称『ドラゴンキラー』を改良しました。保管容器と発射筒を兼ねた四発の『改良ドラゴンキラー』を格納したセルをふたつ搭載してます。合計八発の『改良ドラゴンキラー』で防衛力はばっちりですね!」
「これVLSだな」
「センセ! 注目するのはそこじゃないです! 少し前に南部宿営地付近で天竜に対して『ドラゴンキラー』を使用したのですが、少し問題がありまして」
「問題? というか天竜の討伐報告なんかなかったんだが」
「消滅しましたからね!」
「は?」
「ドラゴンキラーが強力過ぎて跡形もなくなっちゃったんですよね。牙や爪の一部は残ったんですけどね!」
「馬鹿すぎだな。素材回収どころじゃないじゃないか」
「牙のかけらひとつでも回収できれば余裕でドラゴンキラー数発分の費用をペイできるのでそこは問題無かったのですが。そこでサイズを小さくした上で、推進剤と炸薬を減らす改良をいたしました」
「それで天竜を仕留められるのか? ミサイルのサイズが半分以下になってるじゃないか」
「成型炸薬弾頭を採用しましたからね」
「対戦車榴弾だな。というか凄くマニアック過ぎてついて行けないぞ」
「センセも流石男の子ですね。ミサイルはロマンですからね! ささ、早く乗ってください。もう作業が始まってる時間ですよ!」
「まあロマンというのはわかるけどな」
マリアに促されてミサイル搭載車両に乗る。
運転席に俺、助手席にマリア、後部座席にクリスとシルが乗り込む。シルは前回と同様に鎧をばっちり着込んでいるのでシートに傷がつかないか心配だ。
魔導ハイAより二回りは大きいサイズの車両が家のガレージから発進する。
大通りを使って南門から出ると、マリアがナビというかレーダーを弄りだす。
<ピコーン ETCカードを認識しました>
入れてないけどなそんなもん。
「よしっ! これでばっちりです!」
「もう突っ込まないぞ。というか早く音声を直せよ」
「機能に関係ない部分ですからね、後回しです」
片道三車線分はある、整備された広い街道を南へ向かって進んでいく。街道の両脇にはサクラが携わった水田が広がっていてとてものどかだ。
一時間半ほど運転していると、南部宿場町が見えてきた。
簡単な防壁に囲まれ、数百人が宿泊できる施設と、食堂、旅に必要な食料や道具などを扱っている商店などもあり、ちょっとした町のようだ。
ここには定期的にファルケンブルクの町や周辺諸侯領への巡回馬車なども出ており、中継拠点として栄えている。
「ちょっと休憩するか? あまりこんな物騒な車を見られたくないけど」
「いえ、わたくしは大丈夫ですわ旦那様」
「わたくしも平気ですお兄様!」
「センセ! ここからはエルフの作業予定地に近いですからすぐに向かいましょう!」
「わかった。じゃあ宿場町はスルーしてそのまま向かうぞ」
街の中央の大通りをそのまま進み、宿場町を出た瞬間にナビが反応する。
<ピコーン 音声案内を開始します>
む、早速出たか。しかし相変わらず緊張感がないなこの音声。
「クリス」
「はい旦那様。探査……天竜ですわ」
クリスが探査魔法を行使し、ナビのレーダーがとらえた敵を確認する。
「マジか。ミサイルは間に合うのか?」
「センセ! 大丈夫ですよ!」
<ピコーン 三十キロ先 目的地周辺です>
<ピコーン 二十キロ先 目的地周辺です>
高速でこちらに向かって来ているってことか?
マリアは大丈夫というが、流石に天竜の速度が速すぎる。
クリスがいれば何とかなるし、夫婦魔法なら一撃で落とせるはずだ。
そう判断した俺は車を停車させようとするが……、特に操作してないはずなのに荷台のミサイル発射台が自動的に動き始めている。
<ピコーン 目的地に到着しました>
ロック完了の音声案内が車内に響く。
――バシュン!
ミサイル発射音がした瞬間、ポンとごく小さな音がすると同時に
<ピコーン 音声案内を終了します>
撃墜完了の音声案内が車内に響いたのでナビを確認すると、輝点が消失している。
「あれ? 天竜さん? もう終わり?」
「落ちましたよ。多分天竜の体内はぐっちゃぐちゃですけど、皮や頭部などはほとんど残ってると思いますよセンセ!」
「あっそ。じゃあ天竜の回収に行くか。これでミコトとエマに楽器を買ってやれるな」
最近少し寂しくなってきた財布を気にしつつ、撃墜地点へと向かう。
「イージスシステムはばっちりでしたね!」
「またアホなことやってんのな」
「各拠点のレーダーと防衛兵器のリンクをさせているんですけどね、上手く自動迎撃できて良かったです」
「さよか」
敵味方識別装置とかどうなってんのかなーと思いながら運転を続ける。
とりあえずは天竜の回収だな。自動迎撃装置に関してはあとで報告書をあげさせないと。
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