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第十章 ヘタレ異文化交流
第十九話 温泉施設の設計図
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朝食のあとに水着も渡し、早速シバ王の案内の元、温泉へと向かうことになった。
こんな真昼間から温泉とか贅沢じゃないか!
「ささ、閣下、皆様。足を用意いたしましたのでお乗りください」
玄関を出た瞬間、シバ王がドヤ顔で俺たちに人力車を勧めてきた。
人力車一台につき車夫がついているガチなやつだ。そのため人数分として二十台ほど待機している。
「わー! パパ! 乗りたい!」
「えまも!」
「えー。パパと一緒に歩いて行かないか?」
「「やー!」」
むむ、珍しく娘たちが反発的だ。
普段は言うことを聞く良い子なのに……。
「閣下、大人用で二人乗りの人力車もございます。ミコト様とエマ様であれば閣下もご一緒に乗れますが」
「んー。浅草で見たことはあるけど乗ったことは無いんだよな」
「是非!」
「恥ずかしいしやっぱやめた。クレア、頼めるか?」
「わかりました。ミコトちゃん、エマちゃん、一緒に乗りましょう」
「「わーい!」」
シバ王にエスコートされて大人二人乗りの人力車に三人で乗り込む。
「クレア、先に待っててくれ」
「はい兄さま」
「パパまたね!」
「ぱぱ! ばいばい!」
シバ王が目で車夫に合図をすると、ガラガラとクレアたちを乗せた人力車が進んでいく。
うーん、ヨーロッパ風の景色に和風の乗り物が滅茶苦茶浮いてるぞ……。
やっぱり乗らなくて正解だったな。
「兄ちゃん! 俺も乗りたいぞ!」
こういうのが大好きな一号が大声で主張してくる。成人前で半人前扱いだけど、もう働きに出てるのにまだまだガキだなこいつ。
これに乗るの恥ずかしくないんか?
「ガキんちょどもで乗りたい奴は乗せて貰え。俺たち徒歩組が到着するまではクレアたちと待ってるんだぞ」
「わかった兄ちゃん!」
ガキんちょどもが人力車に乗り込み、次々と出発していく。
クリスやシルも女子チームに連れられ、二人乗りの人力車で連れていかれたりしたおかげで今この場に残ったのは俺とエリナとシバ王だけだ。
滅茶苦茶大人気だな。サクラも父親を放置して乗っていったし。
これってタクシーみたいに需要があるかな?
車夫もつけないといけないから運賃もそれなりになりそうだけど、公共交通機関として補助金を出す手もある。
小回りが効くから、内壁のモノレールや大通りを走っている魔導駆動バスでカバーできない所を補えるか?
あとは高齢者に向けた福祉サービスとしてやってみるとかか?
いやまて、人力車を公共交通機関として採用する前に亜人国家連合と交渉しないと駄目か。
車夫として採用するのはここの領民でも良いけど、ファルケンブルクで出稼ぎしたい亜人国家連合の国民がいれば労働ビザを発行しても良いし。
そうするとあとは言葉の壁の問題か……。
「では閣下、案内致します」
おっと、まずは温泉を堪能しないとな!
人力車を公共交通機関にする件はコストも含めてまずはこちらで試算してからシバ王に持ち掛けるか。
「場所は知ってるから別にシバ王もサクラと先に行ってて良いんだけど」
「そういうわけには参りません」
そう言うとシバ王は、俺の数歩前に出て腰を曲げたかと思うと、提灯持ちのように「ささ、どうぞどうぞ」と先導を始める。
まだ昼前だし明るいからやめて。御大尽遊びじゃないんだから。
「頼むから普通に歩いてくれシバ王」
「はっ」
素直に言うことを聞いてくれるからありがたい。
ほっと安心しててくてくと歩き始めると、エリナがするりと俺の腕に自信の腕を絡めてくる。
「お兄ちゃん! 私、温泉って初めてで楽しみ!」
「俺もだよエリナ。何年ぶりかなあ」
「『にほんのお風呂』って綺麗なお山の絵が描いてあるんだよね?」
「これから行く温泉施設にはそんな壁絵は無い……とは言い切れないか。というか高確率で存在するな。どうだシバ王?」
「はっ。是非楽しみにしておいてください! 建築自体は魔導士協会の方々にお願い致しましたが、設計は亜人国家連合でも一番の人物に設計図を用意いただきましたもの故」
「一番の人物?」
「閣下と同じ<転移者>の方ですよ。我らの王……いえその方は何十年も前に隠遁され、表に出ることを嫌っております故、これ以上はご容赦を」
「王家と繋がりがある人物か。まあ亜人国家連合で優遇されている<転移者>じゃどこかの小国の王家と関係があっても不思議じゃないか」
「今は猫耳族で構成されている猫人国の辺境で隠遁されているのですが、『もしファルケンブルクで温泉を掘る機会が得られたらこの設計図で温泉施設を作ってくれないか』と物産展を開催する前に設計図を預かっていたのです」
「へー。建築士とかだったのかね」
「いえ、あの方は不思議な魔法を使われまして、設計図もその不思議な力で手に入れたようなのです」
「スキル持ちの転移者なのかよ……。あのアマ、チートスキルは存在するんじゃないか……」
「ちーと?」
「いやこっちの話だ。というか結局喋ってるじゃないか」
「同郷、同年代の<転移者>とは接触したくないというご希望ですし、この程度は皆が知っております故」
「まあわからんでもない。しかしやっぱり<転移者>って亜人国家連合に行っちゃうんだな」
「亜人国家連合が……いえ閣下、到着いたしました」
「ん? あれか?」
何か言いかけたシバ王が、亜人国家連合の区画の一部を指差して言う。
「閣下、ご覧ください。『ファルケンブルク温泉物語』です!」
「うわあ……」
「お兄ちゃんあの建物かっこいいね!」
「かっこいいかー?」
シバ王がドヤ顔で指を差す建物は、和風の建物に西洋の城の意匠を混ぜたような異様な建物だった。
こんな設計図を渡した猫人国にいる<転移者>って……。
エリナが何故か喜んでるし、似たようなデザインは日本でも見たことが無いから建物は百歩譲って良いとしても、ネーミングセンスがな……。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
本作は小説家になろう、カクヨムでも掲載しております。
よろしければそちらでも応援いただけますと励みになります。
また、小説家になろう版は、序盤から新規に挿絵を大量に追加したうえで、一話当たりの文字数調整、加筆修正、縦読み対応の改稿版となります。
ファンアート、一部重複もありますが、総数で100枚を超える挿絵を掲載し、九章以降ではほぼ毎話挿絵を掲載しております。
是非挿絵だけでもご覧くださいませ。
こんな真昼間から温泉とか贅沢じゃないか!
「ささ、閣下、皆様。足を用意いたしましたのでお乗りください」
玄関を出た瞬間、シバ王がドヤ顔で俺たちに人力車を勧めてきた。
人力車一台につき車夫がついているガチなやつだ。そのため人数分として二十台ほど待機している。
「わー! パパ! 乗りたい!」
「えまも!」
「えー。パパと一緒に歩いて行かないか?」
「「やー!」」
むむ、珍しく娘たちが反発的だ。
普段は言うことを聞く良い子なのに……。
「閣下、大人用で二人乗りの人力車もございます。ミコト様とエマ様であれば閣下もご一緒に乗れますが」
「んー。浅草で見たことはあるけど乗ったことは無いんだよな」
「是非!」
「恥ずかしいしやっぱやめた。クレア、頼めるか?」
「わかりました。ミコトちゃん、エマちゃん、一緒に乗りましょう」
「「わーい!」」
シバ王にエスコートされて大人二人乗りの人力車に三人で乗り込む。
「クレア、先に待っててくれ」
「はい兄さま」
「パパまたね!」
「ぱぱ! ばいばい!」
シバ王が目で車夫に合図をすると、ガラガラとクレアたちを乗せた人力車が進んでいく。
うーん、ヨーロッパ風の景色に和風の乗り物が滅茶苦茶浮いてるぞ……。
やっぱり乗らなくて正解だったな。
「兄ちゃん! 俺も乗りたいぞ!」
こういうのが大好きな一号が大声で主張してくる。成人前で半人前扱いだけど、もう働きに出てるのにまだまだガキだなこいつ。
これに乗るの恥ずかしくないんか?
「ガキんちょどもで乗りたい奴は乗せて貰え。俺たち徒歩組が到着するまではクレアたちと待ってるんだぞ」
「わかった兄ちゃん!」
ガキんちょどもが人力車に乗り込み、次々と出発していく。
クリスやシルも女子チームに連れられ、二人乗りの人力車で連れていかれたりしたおかげで今この場に残ったのは俺とエリナとシバ王だけだ。
滅茶苦茶大人気だな。サクラも父親を放置して乗っていったし。
これってタクシーみたいに需要があるかな?
車夫もつけないといけないから運賃もそれなりになりそうだけど、公共交通機関として補助金を出す手もある。
小回りが効くから、内壁のモノレールや大通りを走っている魔導駆動バスでカバーできない所を補えるか?
あとは高齢者に向けた福祉サービスとしてやってみるとかか?
いやまて、人力車を公共交通機関として採用する前に亜人国家連合と交渉しないと駄目か。
車夫として採用するのはここの領民でも良いけど、ファルケンブルクで出稼ぎしたい亜人国家連合の国民がいれば労働ビザを発行しても良いし。
そうするとあとは言葉の壁の問題か……。
「では閣下、案内致します」
おっと、まずは温泉を堪能しないとな!
人力車を公共交通機関にする件はコストも含めてまずはこちらで試算してからシバ王に持ち掛けるか。
「場所は知ってるから別にシバ王もサクラと先に行ってて良いんだけど」
「そういうわけには参りません」
そう言うとシバ王は、俺の数歩前に出て腰を曲げたかと思うと、提灯持ちのように「ささ、どうぞどうぞ」と先導を始める。
まだ昼前だし明るいからやめて。御大尽遊びじゃないんだから。
「頼むから普通に歩いてくれシバ王」
「はっ」
素直に言うことを聞いてくれるからありがたい。
ほっと安心しててくてくと歩き始めると、エリナがするりと俺の腕に自信の腕を絡めてくる。
「お兄ちゃん! 私、温泉って初めてで楽しみ!」
「俺もだよエリナ。何年ぶりかなあ」
「『にほんのお風呂』って綺麗なお山の絵が描いてあるんだよね?」
「これから行く温泉施設にはそんな壁絵は無い……とは言い切れないか。というか高確率で存在するな。どうだシバ王?」
「はっ。是非楽しみにしておいてください! 建築自体は魔導士協会の方々にお願い致しましたが、設計は亜人国家連合でも一番の人物に設計図を用意いただきましたもの故」
「一番の人物?」
「閣下と同じ<転移者>の方ですよ。我らの王……いえその方は何十年も前に隠遁され、表に出ることを嫌っております故、これ以上はご容赦を」
「王家と繋がりがある人物か。まあ亜人国家連合で優遇されている<転移者>じゃどこかの小国の王家と関係があっても不思議じゃないか」
「今は猫耳族で構成されている猫人国の辺境で隠遁されているのですが、『もしファルケンブルクで温泉を掘る機会が得られたらこの設計図で温泉施設を作ってくれないか』と物産展を開催する前に設計図を預かっていたのです」
「へー。建築士とかだったのかね」
「いえ、あの方は不思議な魔法を使われまして、設計図もその不思議な力で手に入れたようなのです」
「スキル持ちの転移者なのかよ……。あのアマ、チートスキルは存在するんじゃないか……」
「ちーと?」
「いやこっちの話だ。というか結局喋ってるじゃないか」
「同郷、同年代の<転移者>とは接触したくないというご希望ですし、この程度は皆が知っております故」
「まあわからんでもない。しかしやっぱり<転移者>って亜人国家連合に行っちゃうんだな」
「亜人国家連合が……いえ閣下、到着いたしました」
「ん? あれか?」
何か言いかけたシバ王が、亜人国家連合の区画の一部を指差して言う。
「閣下、ご覧ください。『ファルケンブルク温泉物語』です!」
「うわあ……」
「お兄ちゃんあの建物かっこいいね!」
「かっこいいかー?」
シバ王がドヤ顔で指を差す建物は、和風の建物に西洋の城の意匠を混ぜたような異様な建物だった。
こんな設計図を渡した猫人国にいる<転移者>って……。
エリナが何故か喜んでるし、似たようなデザインは日本でも見たことが無いから建物は百歩譲って良いとしても、ネーミングセンスがな……。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
本作は小説家になろう、カクヨムでも掲載しております。
よろしければそちらでも応援いただけますと励みになります。
また、小説家になろう版は、序盤から新規に挿絵を大量に追加したうえで、一話当たりの文字数調整、加筆修正、縦読み対応の改稿版となります。
ファンアート、一部重複もありますが、総数で100枚を超える挿絵を掲載し、九章以降ではほぼ毎話挿絵を掲載しております。
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