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第十章 ヘタレ異文化交流
第十三話 キャッサバ芋
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「おいしいねエマちゃん!」
「うん! すごくおいしー!」
「お兄ちゃん、すごく美味しいね!」
エリナが肉を頬張りながら嬉しそうに声を上げる。ミコトとエマと変わらん反応だな。三姉妹か。
「兄さま、こんな豪華なお料理、いったいおいくらなんでしょうか……」
「金額なんて気にしてたら美味しくないだろクレア。気にしないで味わえよ」
「うう……はい……」
でも確かに気になるな。
牛肉や豚肉だけじゃなく、ソーセージや鶏肉、兎肉など色々な種類があってそれも凄く美味い。
味付けは塩コショウに香辛料とシンプルなものがメインだが、素材の味を生かしてて美味しい。
こちらで手に入れたのか、ファルケンブルクの人間が好みそうなバーベキューソースなどもテーブルに備え付けられているので、味に変化をつけられるしずっと食べていられるな。
「なあマリア、ここって料金いくらなんだ? 食べ放題だろ?」
アロハで給仕をしているマリアが肉のお代わりを聞きに近くに来たので、一応聞いてみる。
「大人ひとり銅貨百五十枚ですよ。お子様は五十枚ですね。ドリンクの飲み放題は大人で銅貨五十枚追加、お子様は無料です」
「お子様安っ! というか大人でも安いのな」
大人ひとり千五百円、ドリンクバーつけても二千円。なんとお子様は五百円で食べ放題飲み放題だ。
ピクリと反応したクレアが、急に元気になって肉を食べ始める。
値段を聞いてやっと安心したか。
「エルフ族は長寿のためか、性質的に子どもが少ないんですよね。なので国ぐるみでとても大事に育てます」
「たしかに長寿のエルフが沢山子作りしたらあっという間に増えちゃうしな」
「出来にくい体というよりは、あまりそういう思考にならないとか子作りにあまり興味がないとかですね。すごく少ないですが子だくさんのエルフ一家とかもいますし」
「なるほどね。しかしこの値段設定でやっていけるのか?」
「ランチタイムはメニューの品数を減らしてますしね。ディナータイムは希少部位の肉や焼きパイナップルなんかも増えて、大人ひとり銅貨二百五十枚、お子様ひとり銅貨百枚ですし、ドリンクは一杯銅貨十枚、アルコールは五十枚程度になってます」
品数がランチタイムより増えるディナータイムでも大人ひとり二千五百円くらいか、かなり良心的だな。
テナント料もかからないってのはあるかもしれないが、それを考慮しても安い。
一年後からテナント料が発生する契約だが、それで多少値上げしたとしても問題ないレベルでコスパが良いな。
ソフトドリンクも百円、アルコールも五百円程度と十分許容範囲だ。
「ドリンクの利益がでかそうだな」
「ですです。やっぱりドリンクの利益率は高いですから」
「流石エルフ王国で一番の商会の娘だな」
「個人的には技術者とか研究者だと思ってるんですけどね」
「そういや魔素研究は難航してるんだっけか」
「ですねー。なので息抜きも兼ねて物産展を楽しませてもらってます」
「まあゆっくりやればいいさ。技術研究なんてすぐに結果が出るほうがおかしいんだから」
「ありがとうございます! センセ! っと、そうだこれも持ってきたんだった」
マリアが皿に盛られた芋のようなものをテーブルに置く。
「マリアこれは?」
「焼いたキャッサバ芋です! 美味しいですよ!」
「キャッサバ芋……? ああタピオカの原料か」
「センセはタピオカも知ってるんですね!」
「転移前の世界じゃ大流行してたからな」
「へー。物産展でも砂糖水にタピオカ粒を入れた甘味を取り扱ってますが、あまり売れてないんですよね」
「麺類やパン類に入れても美味しいんだぞ。モチモチして。でもエルフ王国でキャッサバ芋が獲れるとはな。農耕はほとんどしないんだろ?」
「キャッサバは枝を折って地面に差しておくと勝手に増えるので、引きこもりのエルフが得意としている農作物なんですよね。肥料も水やりも必要ないので」
「マジかよ、随分簡単なんだな。というか仕事しろ駄目ルフども」
「もっと効率の良い方法があるかもしれないですけどね」
「売れると思うぞ。本格的に生産して輸出するってことになったらもっとちゃんと栽培する環境作ったり手をかけなきゃいけないかもしれないけど」
「センセ! ならファルケンブルクの人たちに受ける料理方法を一緒に考えて貰えませんか?」
「そうだな、エルフ王国も主要な輸出品目になれば助かるだろうし」
「おおきに! センセおおきに!」
マリアに両手を取られてぶんぶん振られる。
タピオカね。ミルクティーに入れるのはもちろん、他にも人気の出そうなレシピを考えてみるか。
「お兄ちゃん、このお芋も美味しいよ!」
「姉さま、お芋よりお肉を食べましょう! 元を取らなくては!」
クレアお前……。
しかしこの焼いたキャッサバ芋も美味いな。
ほくほくとしたキャッサバ芋を楽しんでいると、すぐに次の肉がやってくる。
「おっと、俺はもうやめておくかな」
皿の横に置いてある〇の札をひっくり返して×にする。
「何をしてるんですか兄さま」
クレアは俺の札をひっくり返すと同時に、アロハの店員に「こちらにもお代わりをお願いします」と言い放つ。
「クレア、俺そろそろお腹いっぱいなんだが」
クレアは俺の抗議に対して、にっこりと微笑みながら威圧してくる。
怖い。
仕方がない、もう少し食べるか。
ミコトとエマもすごい勢いで食べてるしな。
食べ放題に来ると元を取ろうとするやつってよくいるけど、どれだけ食べたら元が取れるんだろうな。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
本作は小説家になろう、カクヨムでも掲載しております。
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ファンアート、一部重複もありますが、総数で100枚を超える挿絵を掲載し、九章以降ではほぼ毎話挿絵を掲載しております。
是非挿絵だけでもご覧くださいませ。
「うん! すごくおいしー!」
「お兄ちゃん、すごく美味しいね!」
エリナが肉を頬張りながら嬉しそうに声を上げる。ミコトとエマと変わらん反応だな。三姉妹か。
「兄さま、こんな豪華なお料理、いったいおいくらなんでしょうか……」
「金額なんて気にしてたら美味しくないだろクレア。気にしないで味わえよ」
「うう……はい……」
でも確かに気になるな。
牛肉や豚肉だけじゃなく、ソーセージや鶏肉、兎肉など色々な種類があってそれも凄く美味い。
味付けは塩コショウに香辛料とシンプルなものがメインだが、素材の味を生かしてて美味しい。
こちらで手に入れたのか、ファルケンブルクの人間が好みそうなバーベキューソースなどもテーブルに備え付けられているので、味に変化をつけられるしずっと食べていられるな。
「なあマリア、ここって料金いくらなんだ? 食べ放題だろ?」
アロハで給仕をしているマリアが肉のお代わりを聞きに近くに来たので、一応聞いてみる。
「大人ひとり銅貨百五十枚ですよ。お子様は五十枚ですね。ドリンクの飲み放題は大人で銅貨五十枚追加、お子様は無料です」
「お子様安っ! というか大人でも安いのな」
大人ひとり千五百円、ドリンクバーつけても二千円。なんとお子様は五百円で食べ放題飲み放題だ。
ピクリと反応したクレアが、急に元気になって肉を食べ始める。
値段を聞いてやっと安心したか。
「エルフ族は長寿のためか、性質的に子どもが少ないんですよね。なので国ぐるみでとても大事に育てます」
「たしかに長寿のエルフが沢山子作りしたらあっという間に増えちゃうしな」
「出来にくい体というよりは、あまりそういう思考にならないとか子作りにあまり興味がないとかですね。すごく少ないですが子だくさんのエルフ一家とかもいますし」
「なるほどね。しかしこの値段設定でやっていけるのか?」
「ランチタイムはメニューの品数を減らしてますしね。ディナータイムは希少部位の肉や焼きパイナップルなんかも増えて、大人ひとり銅貨二百五十枚、お子様ひとり銅貨百枚ですし、ドリンクは一杯銅貨十枚、アルコールは五十枚程度になってます」
品数がランチタイムより増えるディナータイムでも大人ひとり二千五百円くらいか、かなり良心的だな。
テナント料もかからないってのはあるかもしれないが、それを考慮しても安い。
一年後からテナント料が発生する契約だが、それで多少値上げしたとしても問題ないレベルでコスパが良いな。
ソフトドリンクも百円、アルコールも五百円程度と十分許容範囲だ。
「ドリンクの利益がでかそうだな」
「ですです。やっぱりドリンクの利益率は高いですから」
「流石エルフ王国で一番の商会の娘だな」
「個人的には技術者とか研究者だと思ってるんですけどね」
「そういや魔素研究は難航してるんだっけか」
「ですねー。なので息抜きも兼ねて物産展を楽しませてもらってます」
「まあゆっくりやればいいさ。技術研究なんてすぐに結果が出るほうがおかしいんだから」
「ありがとうございます! センセ! っと、そうだこれも持ってきたんだった」
マリアが皿に盛られた芋のようなものをテーブルに置く。
「マリアこれは?」
「焼いたキャッサバ芋です! 美味しいですよ!」
「キャッサバ芋……? ああタピオカの原料か」
「センセはタピオカも知ってるんですね!」
「転移前の世界じゃ大流行してたからな」
「へー。物産展でも砂糖水にタピオカ粒を入れた甘味を取り扱ってますが、あまり売れてないんですよね」
「麺類やパン類に入れても美味しいんだぞ。モチモチして。でもエルフ王国でキャッサバ芋が獲れるとはな。農耕はほとんどしないんだろ?」
「キャッサバは枝を折って地面に差しておくと勝手に増えるので、引きこもりのエルフが得意としている農作物なんですよね。肥料も水やりも必要ないので」
「マジかよ、随分簡単なんだな。というか仕事しろ駄目ルフども」
「もっと効率の良い方法があるかもしれないですけどね」
「売れると思うぞ。本格的に生産して輸出するってことになったらもっとちゃんと栽培する環境作ったり手をかけなきゃいけないかもしれないけど」
「センセ! ならファルケンブルクの人たちに受ける料理方法を一緒に考えて貰えませんか?」
「そうだな、エルフ王国も主要な輸出品目になれば助かるだろうし」
「おおきに! センセおおきに!」
マリアに両手を取られてぶんぶん振られる。
タピオカね。ミルクティーに入れるのはもちろん、他にも人気の出そうなレシピを考えてみるか。
「お兄ちゃん、このお芋も美味しいよ!」
「姉さま、お芋よりお肉を食べましょう! 元を取らなくては!」
クレアお前……。
しかしこの焼いたキャッサバ芋も美味いな。
ほくほくとしたキャッサバ芋を楽しんでいると、すぐに次の肉がやってくる。
「おっと、俺はもうやめておくかな」
皿の横に置いてある〇の札をひっくり返して×にする。
「何をしてるんですか兄さま」
クレアは俺の札をひっくり返すと同時に、アロハの店員に「こちらにもお代わりをお願いします」と言い放つ。
「クレア、俺そろそろお腹いっぱいなんだが」
クレアは俺の抗議に対して、にっこりと微笑みながら威圧してくる。
怖い。
仕方がない、もう少し食べるか。
ミコトとエマもすごい勢いで食べてるしな。
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