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第十章 ヘタレ異文化交流

第二話 リゾート開発

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「在留許可証とレジャー施設?」

「はい。移民というわけではありませんが、長期観光や商取引などで中長期の滞在需要がありますので、専用の許可証の発行と中長期滞在者用の宿泊施設やレジャー施設などを建設したいと思います」


 軍事関連の議題が終わり、次の大規模なレジャー開発の議題へと移っていた。


「観光産業として成り立つのか?」

「魔導遊園地だけでもかなりの効果があると思いますが、プールやホテルなどのレジャー施設の充実を図りたいと思います」

「リゾート開発か」

「はい、公共事業を継続させる必要もありますから」


 領内の建設などはそろそろ終わりが見えてきたし、王都への街道敷設も終了した。亜人国家連合への街道敷設は距離があるのでまだ半分も終わってないが、公共事業としてはそろそろ次を考えないといけないな。


「たしかに最近亜人国家連合の連中を町の中で見かけるようになったしな」

「まだ亜人国家連合でも高所得者層限定ですが、ファルケンブルク観光は流行の兆しを見せています。交易団に便乗して観光ツアーの集団も一緒に移動しているようですし」

「最近よく見かけるしな。親子連れもいるし」

「現状はまだ宿泊施設の部屋数は足りているのですが、採用試験の期間と重なると一気に不足しますからね」

「夏の採用試験までに対応が必要か」

「ですのでプールと高級リゾートホテルを建てようかと」

「安直すぎだけど理に適ってるな。ただし高級リゾートホテルだけじゃなくて庶民も気軽に宿泊できるホテルもな」

「そうですね、魔導駆動バスが亜人国家連合まで走行が可能になればツアーバスで観光客を呼び込めますし」

「まだ数年はかかりそうだけどな」

「意外と早いかもしれませんよ」


 爺さんとマリア、エカテリーナを中心として、今まさに魔素と魔力の研究に力を入れているようだけど、どうなることやら。
 魔導エンジンの効率化だけでも魔導士協会が二年頑張っても殆ど成果が得られてなかったし、かなり厳しいと思うんだがな。


「土地はまだ空いてるし、元々星型城塞の三角の部分って区画割しにくかったし」

「というか中央部だけでもまだまだ区画割が終わってませんしね」


 一気に広げすぎなんだよ。と心の中で突っ込むが、城壁を無料で建てると言われたから目いっぱい大きくしたという裏事情があるし、俺もつい飛びついたので何も言えない。
 三角の部分は中央より城壁が一枚少なくなるし、中央部から距離が離れるので、魔導士協会に丸々一区画、貧困層の格安住宅用区画、魔導遊園地、野球場含めたボールパークで五つの内四区画を使用しているが、一区画は未定のままだったのだ。
 ここをリゾート区画にしても良いな。


「わかった。具体的な計画を立てたら一度見せてくれ」

「かしこまりました」


 俺の許可が出ると、アイリーンは即座に側近を呼び寄せ指示を出す。
 ちゃんと副官やら文官を使いこなしているようでなによりだ。


「じゃあ次はエルフ王国の件と言いたいが、今日の主題だし長引くだろうから先に昼飯にするか。少し早いけどな」

「「「わーい!」」」


 あれ? ここ自宅だっけ?
 ガキんちょ連中と精神年齢おなじなんじゃねこいつら。

 マジックボックスから弁当を取り出していき女官に配らせる。別の女官はお茶を淹れ全員に配り始めた。
 今日の弁当は何かなーとふたを開けてみると、かつ丼か? いやこれチキンカツを使った親子カツ丼だな。鶏肉がごろごろした親子丼の具がかかってるし。


「おー! 今日もまた豪勢ですな!」

「これ親子カツ丼ですよね! 前に弁当販売で買ったことがあります」

「婆さんは揚げ物を出してくれないからありがたいのう」


 毎度のことだけど滅茶苦茶喜んでるなこいつら。
 しかしこの親子カツ丼は美味いな。さっぱりとしたチキンカツだが、少しだけ濃い目の味付けがされた親子丼の具がかかってるからすごくボリューミーだ。
 ガツガツ食えちゃうな。
 家では碌な飯を作ってくれないっていつも嘆いてるいつもの三人目が泣きながら親子カツ丼をがっついてるし、日本人じゃなくても受け入れられているようだ。


「そうだな、亜人国家連合から来る観光客向けに、亜人国家連合の料理を出す店を開いても良いかもな」

「そうですね、ファルケンブルクの料理の味付けが合わないという人もいるでしょうし」

「亜人国家連合の人間がうちに出稼ぎに来られるような環境を整えてもいいかもしれん。就労ビザみたいな」

「好景気に沸いてどこも人材不足ですからね。人生の冒険者員も巡回業務で安定した収入を得られているようですし」

「星型城塞になった上にどんどん灌漑しまくってるから巡回範囲が広がる一方だし、職業斡旋ギルドにも求人広告が大量に出てるみたいだしな。まあ順調ではあるな」

「ですので外国人労働者が安心して働けるようになるのは良いかもしれませんね。不当に安い賃金で労働させられないように法整備を進めます」

「最初は向こうから派遣してもらうって方法でもいいかもしれんな」

「箱だけ用意するということですか?」

「箱と設備をこちらで用意して亜人国家連合から料理人を派遣してもらうテナント方式かな。売り上げが出ない可能性もあるからまずは試験運用ということで一年間は無料で貸し出して、一年後は売り上げに応じてテナント料を貰うとか」

「なるほど、亜人国家連合の料理が流行るようなら良し、駄目なら店を別の業種に変えるということですか」

「だな。ついでに亜人国家連合の民芸品とか置いてアンテナショップにすればいい。アンテナショップで試験販売すればリスクは減るだろうし」

「アンテナショップですか……なるほど、良いアイデアだと思います」


 アイリーンが側近を呼びつけ、ささっと書いたメモを渡して下がらせる。
 とりあえず飯に集中しろよ。
 俺から始めた話題だから何も言えないけど。


「まず飯を食っちゃおうぜアイリーン」

「はっ」

「閣下、お代わりはないんですかの?」

「無いぞ三人目。というか、家の飯に不満があるのなら帰りにでも買い食いでもしてから帰ればいいだろ」

「三人目? 婆さんがこづかい渡してくれないんですのじゃ」

「夫婦の問題だからノータッチ。一応ここの幹部なんだから高給取りだろお前」

「うう……」


 クレアの作った親子カツ丼は大好評のようで、あっという間に食い終わるやつが出てくる。
 揚げ物は手間がかかるから、朝の弁当販売でもたまにしか出さないんだよな
 今は魔力飯の調査で俺たちが作らずに職員のみで作ってるから余計に簡単なメニューしか出してないけど。

 次回の会議から少し多めに弁当を持って来てやるか。なんかあの三人目が可哀そうだし。



―――――――――――――――――――――――――――――――――

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