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第九章 変わりゆくヘタレの世界
第二話 魔導遊園地で遊ぼう!
しおりを挟む「「わーー!」」
魔導遊園地に到着し、駐車場に車を停めて入場する。
手をつないで先頭を歩くミコトとエマが入場ゲートをくぐった瞬間に揃って声を上げる。
「先週も来たばかりだろうに」
「私はあの子たちがわくわくしちゃう気持ちもわかるけどね!」
「先週来た時は兄さまが暴れたせいで全部乗れなかったですしね」
「暴れたっていうなよ、完全にここの管理をしてる魔導士協会の連中のせいだろ……」
「お兄ちゃんがますこっときゃらくたーを見た瞬間に『責任者を呼べ!』って大騒ぎしたからね」
「兄さまはあのとき『ねずみはやめろ!』『菓子パンをモチーフにするんじゃねえ!』とか大騒ぎでしたしね」
「あいつら絶対わかっててやってるからな。詳細までそっくりだったし。完全オリジナルで作れといっといたから大丈夫だと思うけど」
「結局ここの名前も魔導遊園地になっちゃったしね!」
「トーマディスティニーランドとか意味わからんからな」
「パパ!」
「ぱぱ!」
「はいはい」
あまり離れないようにという言いつけをしっかり守って、俺たち保護者からある程度離れた時点で俺を呼ぶ二人。
ミコトがエマの面倒を見てくれるおかげで大分助かってるな。エマもミコトの言うことちゃんと聞くし。
ぴょんぴょんその場で跳ねて俺たちの合流を待つ二人。
ミコトはふわっとしたショートヘアーだが、ふわふわと髪が踊っててまるで空を舞う天使のようだし、エマはエリナと同じツインテールにしてるので、ぴょんぴょん跳ねるたびに尻尾がピコピコ動いて可愛い。
うむ、癒されるな。
「パパ! あれなーに?」
俺たちが追い付くと、ミコトは遊園地の中央に向かって指をさしている。
「あれってシン〇レラ城か? いやノイシュヴァンシュタイン城の方かか……。先週来た時にはなかったのに……」
「きれい!」
「きれー!」
「なんかすごい豪華なお城だねお兄ちゃん」
「兄さま、凄い形のお城ですね。ファルケンブルク城とは意匠がかなり違いますが」
「ファルケンブルク城はエルツ城みたいながっちりとした感じだけど、あれはノイシュヴァンシュタイン城っていって世界一美麗な城と言われてるな」
「でもあまり大きくないような?」
「そうだな、一番高い尖塔で二十メートルくらいか? 大きく見えるように上に行くほど構造物が小さくなってるな。ミニチュアというか縮小版か」
「兄さま、また責任者を呼ぶんですか?」
「ノイシュヴァンシュタイン城は東武ワールド〇クエアで見たことあるし大丈夫だろ。名前がシンデ〇ラ城だったら変えさせるが」
「お兄ちゃんがまた訳の分からないこと言い出してる」
「兄さま治癒しますか?」
「病気じゃないから問題ないぞ。それよりどうするミコト、エマ。何か乗りたいものはあるか?」
俺から希望のアトラクションを聞かれたミコトとエマが、手をつないだまま周囲をきょろきょろしだす。
「エマちゃんなにのりたい?」
「かんかんしゃ!」
「パパ! かんらんしゃ!」
エマが観覧車をかんかんしゃと言うのが可愛い。そしてエマの通訳をしてるミコトが可愛い。ミコトはすっかりエマの保護者だな。
「わかった、じゃあ観覧車に乗るか」
「「はい!」」
「いい返事だぞミコト、エマ」
「「わーい!」」
「もうすっかりお姉ちゃんだねミコトちゃんは!」
「ミコトちゃんはしっかりしてますから」
そういって俺の両腕に腕を絡めてくるエリナとクレア。
「ミコトは随分大人びてるからなー」
「親離れが早くてお兄ちゃんは寂しいんじゃない?」
「まだパパって抱っこ要求されたりするから平気だけど、カルルみたいに近づくと逃げちゃうようになったら悲しいな」
「カルルは男の子ですからね。甘えるのが恥ずかしくなっただけで嫌われたわけじゃないですよ兄さま」
『ペッ!』
「ほら、独身のブサイクなおっさんが俺達幸せ家族に嫉妬して、園内でツバ吐いてるからあまり幸せオーラを見せつけるのはやめような」
「「はーい」」
というかブサイクおっさん、一人で遊園地とか大丈夫か? 余計辛い思いするんじゃないのか?
福利厚生の一環で公共事業作業員には魔導遊園地や魔導公園の乗り物チケットを配布してるけどさ。
園内ではチケットで食事もできるからそれ目当てだとしても、流石にちょっと違和感あるぞブサイクおっさん。
「パパ! はやく!」
「ぱぱ!」
「すまんすまんミコト、エマ」
園内には魔導駆動バスが周回しているので遠いアトラクションにもアクセスしやすくなってるが、魔導観覧車は入場ゲートから近いので徒歩で向かう。
地上高百メートルの巨大な魔導観覧車の登場口にたどり着いたミコトとエマが早く早くと急かす。
「元気だねー」
「みんなでお出かけするのが楽しいんですよ姉さま」
「私たちも楽しいしね!」
「そうですね姉さま!」
嫁同士も仲が良い。というかミコトとエマのようにエリナとクレアも姉妹みたいなもんだからな。
「これがミコトので、エマちゃんのはこれです!」
搭乗口の係員に、首から下げた乗り放題パスを見せるミコト。エマの首から下げられたのも一緒に見せている。
「はい。確認しました」
「ありがとーございます!」
「ありがとー! おねーちゃん!」
「まあ可愛い!」
係員も二人の魅力にメロメロだ。二人は天使だから仕方ないな。
「お兄ちゃん、私たちも見せないと」
「ミコトとエマを見ててすっかり忘れてた。さっさと乗るか」
フリーパスを見せて魔導観覧車に乗る。
「エマちゃん、ちゃんとおくつはぬぐんだよ!」
「うんみこねー!」
早速二人は靴を脱ぐと、座席によじのぼり膝立ちになって外を見る体勢になる。
行儀がいいのか悪いのか。
「エマちゃんつぎはなにのろっか?」
「えーとね、えーとね」
今日一日、あちこち連れまわされそうだと、楽しそうな二人を見て思わず笑みがこぼれるのだった。
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