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第八章 ヘタレパパ
第六十三話 ヘタレパパ
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順番待ちがいなかったこともあり、そのまま連続で魔導観覧車に乗り続けた。
エマは終始ご機嫌で外を眺めている。高いところ好きなんだな。魔導遊園地を作るときはもっとでかい魔導観覧車を作る予定だから、完成したら乗せてやらないとな。あまり高いと俺が怖いんだけど。
魔導観覧車を降りた後は、梅や寒桜が植樹されているゾーンに向かう。
「あっ! お兄ちゃんピンク色の花のつぼみがついてるよ」
「梅の花だな、開花にはまだちょっと早いか。寒桜もまだみたいだし、二、三週間後くらいかな」
「でも可愛いよ!」
「そうだな、開花したころにここでまた遠足をやるか」
「うん! 楽しみ!」
「春には桜が咲いて凄く綺麗だぞ」
「サクラちゃんの名前の由来になったお花だよね!」
「日本じゃ一番有名な花だったかもな」
「楽しみだねーエマちゃん!」
亜人国家連合からソメイヨシノを取り寄せて植樹も行っているが、もちろん開花はまだまだ先だ。
というか本当にソメイヨシノなのかはわからん。
「ちょっとベンチで休むか」
「そうだね」
梅の濃いピンク色をしたつぼみが良く見えるベンチに腰掛ける。
魔導公園の管理も今は官営だけど、これもその内民間に委託しないとな。雇用枠を増やさないと。
などとぼーと考えている間、エリナはエマにかかりっきりだ。
エマは冬の景色から色づいていく世界に興奮しているようでやたらはしゃいでいる。その姿を見てエリナも嬉しそうだ。
「エマちゃん、もうすぐお花が咲くんだよ! お花が咲いたらパパとママとでまた来ようね!」
「まーま、まーま」
「っ! お兄ちゃん!」
「ああ、聞こえたぞエリナ! よかったな!」
「うん!」
エリナは、「そうだよママだよー」とエマを嬉しそうにあやす。
「そろそろ飯にするかエリナ」
「そうだね、少しお腹空いたかも」
「マジックボックスの中に食べ物は入ってるが、せっかくだし軽食販売所で何か買ってくるか」
「お兄ちゃんに任せる!」
「良いぞアホ嫁。その思考放棄っぷりは称賛に値する」
「えへへ!」
「称賛とはいっても実際は褒めてないんだけどな」
「だー、あー」
「エマの食べられそうなもの売ってたかな」
「どうだろうねー」
エマをのぞき込むと、俺に向かって一生懸命手を伸ばしてくる。可愛い。
「ぱーぱ、ぱーぱ」
「エリナ今……」
「うん! エマちゃんがお兄ちゃんのことパパって!」
「そか。パパだぞエマー」
「ぱーぱ、あー、うー、ぱーぱ」
「お兄ちゃんじゃなくてよかったわ。毎日パパパパと刷り込んでた甲斐があった」
「良かったねお兄ちゃん!」
「エマが俺をなんて呼ぶか心配したのはエリナのせいなんだけどな。昼飯買ってきちゃうわ」
「うん! ってお兄ちゃん……」
エリナとエマに背を向け、百メートルほど先にある官営の軽食販売所へ向かう。
「いらっしゃいませ。ファルケンブルク官営軽食販売所魔導公園支店へようこそ」
エマが口にできるものはなさそうだな……。
ま、マジックボックスの中に常に離乳食はストックされてるしそれを食べさせればいいか。
「すみません、このサンドイッチセットをふたつください、飲み物は二つともオレンジジュースで」
「はい。銅貨八十枚です……ってお客さん! どうしたんですか? 大丈夫ですか?」
店員がサンドイッチとドリンクのセットを注文した俺の顔を見て、びっくりしたように声をかけてくる。
「何でもないです。はいこれ銅貨八十枚ね」
「滅茶苦茶泣いてるじゃないですか……」
店員は戸惑いながらも、手早くサンドイッチの詰められた箱ふたつとオレンジジュースの入った木製のタンブラーふたつをトレーに乗せ、俺の前に置く。
「どうも」
「お食事が終わりましたらトレーごとこちらへお持ちくださいね」
トレーを抱えてエリナの元へ戻る。
視線が気になって後ろを何度か確認すると、店員が何故かこちらを心配そうにずっと見つめている。
仕事は早いし愛想も良いけど、行動が不審だなあの店員は。
「お待たせエリナ。エマの食べられそうなのは売ってなかったからマジックボックスの離乳食を食べさせよう」
「うん! ありがとうお兄ちゃん!」
エリナの横に座り、早速ふたりでサンドイッチを食べる。
「そういえばなエリナ」
「なあにお兄ちゃん」
「アイリーンにも確認したんだが、今のガキんちょどもを俺たちの養子にしようかと思うんだ」
「えっ! そんなことができるの⁉」
「もちろん実子のエマ以外には爵位や地位の継承権は無いがな。保護者というか身元保証人というか後ろ盾みたいなもんかな」
「ミコトちゃんやアランたちがエマちゃんの本当のお姉ちゃんとお兄ちゃんになるんだよね?」
「そうだ。公式に名字としてクズリューが付くようになるぞ」
「良いと思う!」
「ありがとうエリナ。まあ本人たちに確認してからだけどな。もちろん将来独り立ちしたいとかであとから養子縁組を抜けることは可能だし」
「えへへ!」
エリナが俺の肩に頭を乗せて甘えてくる。
「ま、何が変わるってわけじゃないんだけどな」
「でもお兄ちゃんはみんなのパパになるんだよ?」
「お前はママになるんだぞ」
「わたしはずっとそのつもりだったんだよお兄ちゃん」
「……そうだったな。よく頑張ったなエリナ」
「……うん!」
―――――――――――――――――――――――――――――――――
茶山大地です。
いつも拙作をお読みいただきありがとうございます。
八章はかなり長くなってしまいましたが、なんとか書ききることが出来ました。
拙作をお読みいただきました皆様に、この場を借りて改めて御礼申し上げます。
どうぞ、今後ともよろしくお願いいたします。
次回更新より第九章が始まります。
「ヘタレ転移者」を引き続き応援よろしくお願い致します!
本作は小説家になろう、カクヨムでも掲載しております。
よろしければそちらでも応援いただけますと励みになります。
また、小説家になろう版は、序盤から新規に挿絵を大量に追加したうえで、一話当たりの文字数調整、加筆修正、縦読み対応の改稿版となります。
ファンアート、一部重複もありますが、総数で100枚を超える挿絵を掲載し、九章以降ではほぼ毎話挿絵を掲載しております。
是非挿絵だけでもご覧くださいませ。
エマは終始ご機嫌で外を眺めている。高いところ好きなんだな。魔導遊園地を作るときはもっとでかい魔導観覧車を作る予定だから、完成したら乗せてやらないとな。あまり高いと俺が怖いんだけど。
魔導観覧車を降りた後は、梅や寒桜が植樹されているゾーンに向かう。
「あっ! お兄ちゃんピンク色の花のつぼみがついてるよ」
「梅の花だな、開花にはまだちょっと早いか。寒桜もまだみたいだし、二、三週間後くらいかな」
「でも可愛いよ!」
「そうだな、開花したころにここでまた遠足をやるか」
「うん! 楽しみ!」
「春には桜が咲いて凄く綺麗だぞ」
「サクラちゃんの名前の由来になったお花だよね!」
「日本じゃ一番有名な花だったかもな」
「楽しみだねーエマちゃん!」
亜人国家連合からソメイヨシノを取り寄せて植樹も行っているが、もちろん開花はまだまだ先だ。
というか本当にソメイヨシノなのかはわからん。
「ちょっとベンチで休むか」
「そうだね」
梅の濃いピンク色をしたつぼみが良く見えるベンチに腰掛ける。
魔導公園の管理も今は官営だけど、これもその内民間に委託しないとな。雇用枠を増やさないと。
などとぼーと考えている間、エリナはエマにかかりっきりだ。
エマは冬の景色から色づいていく世界に興奮しているようでやたらはしゃいでいる。その姿を見てエリナも嬉しそうだ。
「エマちゃん、もうすぐお花が咲くんだよ! お花が咲いたらパパとママとでまた来ようね!」
「まーま、まーま」
「っ! お兄ちゃん!」
「ああ、聞こえたぞエリナ! よかったな!」
「うん!」
エリナは、「そうだよママだよー」とエマを嬉しそうにあやす。
「そろそろ飯にするかエリナ」
「そうだね、少しお腹空いたかも」
「マジックボックスの中に食べ物は入ってるが、せっかくだし軽食販売所で何か買ってくるか」
「お兄ちゃんに任せる!」
「良いぞアホ嫁。その思考放棄っぷりは称賛に値する」
「えへへ!」
「称賛とはいっても実際は褒めてないんだけどな」
「だー、あー」
「エマの食べられそうなもの売ってたかな」
「どうだろうねー」
エマをのぞき込むと、俺に向かって一生懸命手を伸ばしてくる。可愛い。
「ぱーぱ、ぱーぱ」
「エリナ今……」
「うん! エマちゃんがお兄ちゃんのことパパって!」
「そか。パパだぞエマー」
「ぱーぱ、あー、うー、ぱーぱ」
「お兄ちゃんじゃなくてよかったわ。毎日パパパパと刷り込んでた甲斐があった」
「良かったねお兄ちゃん!」
「エマが俺をなんて呼ぶか心配したのはエリナのせいなんだけどな。昼飯買ってきちゃうわ」
「うん! ってお兄ちゃん……」
エリナとエマに背を向け、百メートルほど先にある官営の軽食販売所へ向かう。
「いらっしゃいませ。ファルケンブルク官営軽食販売所魔導公園支店へようこそ」
エマが口にできるものはなさそうだな……。
ま、マジックボックスの中に常に離乳食はストックされてるしそれを食べさせればいいか。
「すみません、このサンドイッチセットをふたつください、飲み物は二つともオレンジジュースで」
「はい。銅貨八十枚です……ってお客さん! どうしたんですか? 大丈夫ですか?」
店員がサンドイッチとドリンクのセットを注文した俺の顔を見て、びっくりしたように声をかけてくる。
「何でもないです。はいこれ銅貨八十枚ね」
「滅茶苦茶泣いてるじゃないですか……」
店員は戸惑いながらも、手早くサンドイッチの詰められた箱ふたつとオレンジジュースの入った木製のタンブラーふたつをトレーに乗せ、俺の前に置く。
「どうも」
「お食事が終わりましたらトレーごとこちらへお持ちくださいね」
トレーを抱えてエリナの元へ戻る。
視線が気になって後ろを何度か確認すると、店員が何故かこちらを心配そうにずっと見つめている。
仕事は早いし愛想も良いけど、行動が不審だなあの店員は。
「お待たせエリナ。エマの食べられそうなのは売ってなかったからマジックボックスの離乳食を食べさせよう」
「うん! ありがとうお兄ちゃん!」
エリナの横に座り、早速ふたりでサンドイッチを食べる。
「そういえばなエリナ」
「なあにお兄ちゃん」
「アイリーンにも確認したんだが、今のガキんちょどもを俺たちの養子にしようかと思うんだ」
「えっ! そんなことができるの⁉」
「もちろん実子のエマ以外には爵位や地位の継承権は無いがな。保護者というか身元保証人というか後ろ盾みたいなもんかな」
「ミコトちゃんやアランたちがエマちゃんの本当のお姉ちゃんとお兄ちゃんになるんだよね?」
「そうだ。公式に名字としてクズリューが付くようになるぞ」
「良いと思う!」
「ありがとうエリナ。まあ本人たちに確認してからだけどな。もちろん将来独り立ちしたいとかであとから養子縁組を抜けることは可能だし」
「えへへ!」
エリナが俺の肩に頭を乗せて甘えてくる。
「ま、何が変わるってわけじゃないんだけどな」
「でもお兄ちゃんはみんなのパパになるんだよ?」
「お前はママになるんだぞ」
「わたしはずっとそのつもりだったんだよお兄ちゃん」
「……そうだったな。よく頑張ったなエリナ」
「……うん!」
―――――――――――――――――――――――――――――――――
茶山大地です。
いつも拙作をお読みいただきありがとうございます。
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拙作をお読みいただきました皆様に、この場を借りて改めて御礼申し上げます。
どうぞ、今後ともよろしくお願いいたします。
次回更新より第九章が始まります。
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ファンアート、一部重複もありますが、総数で100枚を超える挿絵を掲載し、九章以降ではほぼ毎話挿絵を掲載しております。
是非挿絵だけでもご覧くださいませ。
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