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第八章 ヘタレパパ
第六十二話 公園散歩
しおりを挟む「では兄さま、学校に行ってきますね」
「おう、今日は昼飯も学校で食うんだろ?」
「はい、健康診断は半日かかりますからね」
「じゃあ俺はエリナと適当に飯食っておくからクレアはミコトを頼むな」
「はい兄さま」
「ぱぱ! ばいばい!」
月に一回実施している健康診断と魔力測定の為にミコトがクレアに手を引かれて家を出る。
婆さんやクリス、シルやガキんちょどもはすでに登校済みだ。
「お兄ちゃん、久しぶりに三人だけになったね!」
「普段うるさいからあいつらがいなくなってせいせいするな」
「うふふっ」
「なんだよ」
「なんだろうね! ねーエマちゃん!」
エリナはエマをあやしながらご機嫌だ。
ちなみにエリナとエマの健康診断は毎週医者が来てくれて行っている。ついでに俺も診て貰っているから学校の集団健康診断へ行く必要が無いのだ。
「エマが起きてるうちに魔導公園の散歩でもするか? 最近エリナの日をちゃんとやってなかったし」
「今日は少し暖かくて天気も良いしいいかもね!」
「だー、だー」
「おっエマも散歩行きたいか?」
「あー、あー」
「行きたいってよお兄ちゃん」
「ああ、行くか。一応暖かい格好をしてこい。エマは預かっておくから」
「わかった! お兄ちゃんのコートも持って来るね!」
「頼む」
エリナは俺にエマを預けると、着替えるために部屋に行く。
「あー、あー」
エリナに向かって手を伸ばすエマ。
「ごめんなーエマ。ママすぐに戻ってくるからなー」
「あー、だー」
エマがエリナの去っていった方向をずっと見ていて悲しい。
「エマ―、こっち向いてー」
「あー、あー」
「お兄ちゃんお待たせ……ってなんで泣いてるの?」
「気にするな。行くぞ」
「うん……」
エマをエリナに渡して、エリナが持ってきてくれたコートを羽織って外に出る。
「ってエリナ、お前コートは?」
「下に暖かいインナー着てるから大丈夫!」
「ったく」
エマを抱くエリナの肩を抱き寄せて公園へと向かう。「えへへ!」とこちらに笑顔を向けるエリナ。多分わかっててこの格好にしたんだろうな。
実際肩を抱いてみると、厚手のインナーをしっかり着込んでいるようで、寒さ対策は問題なさそうだ。
俺の防御結界でも寒さは防げるから、冷えてくるようなら魔法を使うか。
「お兄ちゃんいい天気だね!」
「そうだなー。もうすぐ春なのかな」
「まだ先だよー」
くだらない会話を楽しみつつ公園の敷地に入る。
認知度が上がってきたのか未就学児を連れた親たちがそこそこ遊びに来ていた。
魔導観覧車も魔導コースターも稼働しているので利用者もちゃんといるようで安心した。誰も利用しない無駄施設だったら勿体ないしな。
「魔導観覧車にでも乗るか」
「いいねー。エマちゃんにも景色を見せてあげたいし」
「ま、あまり高度は無いけどな、建設が終わった城壁とかなら見えるかもしれん」
魔導観覧車の方へ歩いていくと、ちょうど待ち時間なく乗れたのでそのままチケットを渡して乗り込む。
エマの分は無料だ。
係員がドアを閉め、ゴンドラはゆっくりと上昇していく。
「ほらエマちゃん、あれがおうちだよー」
「きゃっきゃっ!」
「高いところ好きなのかな」
「エマちゃんにお兄ちゃんのヘタレなところが似なくてよかった」
「高いところは危ないって覚えておいた方が安全だろうが」
「はいはい」
「お前返事だけは完璧キャラだっただろ」
「はーい」
「ったく」
いつも通りの会話を交わしながら、エリナもエマも嬉しそうに窓から外を眺めている。
「あれ? お兄ちゃんあれ何?」
「ん?」
「あの高い建物みたいなの」
エリナの指さす方を見ると、高層ビルのような建て物が建っていた。
あれって北門の方角か? ちょうど五芒星の頂点部分辺りか。
「って、あれ魔導士協会の建物か? あの一帯は魔導士協会の所有地のはずだし」
「お爺ちゃんたちの家?」
「家っていうか、魔導士協会本部だな多分」
「学校の側にある魔導士協会の建物は?」
「あれは城に近いから、機密性の高い研究開発を行う研究棟として使うとか言ってたな」
「へー、すごくおっきい建物みたいだね」
「頭おかしいくらいにな」
しかもよく見たらビルの壁から砲身みたいな物が出てないか? まさかとは思うが高射砲や魔導砲じゃないだろうなアレ。
建築法とか未整備だったとはいえ、流石にあれはどうなのか。
頂点を過ぎた魔導観覧車はゆっくりと高度を下げていく。
ついでに武装ビルを見てしまった俺のテンションもだだ下がりだ。
あとで爺さんを問い詰めないと。
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