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第八章 ヘタレパパ

第二十九話 おせちも良いけどカレーもね

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 魔導コースターもガキんちょどもには大好評だった。試運転を終えた後もまた乗りたいと言い出したのでそのまま遊ばせてやることにした。
 俺とクレアは昼飯の準備だ。エリナとエマ、ミコトはクリスたちに任せてきた。
 防御結界のおかげで真冬にコースターに乗っても全く寒くなかったんだよな。
 しかも速度に合わせて温風が正面から吹き付けるから4DXシネマみたいになってたぞ……。
 無駄に凝り過ぎだ。もう映像流したほうが早いだろ……。


「兄さま、魔導コースター凄かったですね!」

「クレアもまだ遊んでてよかったんだぞ」

「エマちゃんとミコトちゃんは喜んでましたけどね。私は疲れちゃうので一回で十分です」

「たしかに慣れてないと疲れちゃうかもな」


 クレアと二人で家に戻り厨房に入る。
 今日の昼飯のメニューはカツカレーだ。明日から給食が始まるから少し豪華にしてやりたいしな。
 おせちも良いけど、俺がそろそろカレーを食べたくなってきたっていうのもあるんだが。


「兄さま、野菜たっぷりかれーを作っちゃいますね」

「俺はトンカツを揚げながらスープを作るから、カレーの煮込みが始まったらサラダを頼む」

「わかりました」


 今日はナンは無し。カレーライスはガキんちょ全員に好評だったので問題ないだろう。
 肉屋の親父にあらかじめ頼んでおいた豚肩ロース一枚三百グラムをどんどんとトンカツにしていく。
 ガキんちょどもは三百グラムのカツをペロッと食べちゃうんだぜ? おかしいだろ。
 だが実際食べられるし、飯の量が少ないと生意気にも文句を垂れるようになったので仕方なく揚げていく。


「あ、チーズカツとかミルフィーユトンカツでもよかったな」

「チーズカツはわかりますけどミルフィーユとんかつってどんな料理なのですか? 白菜と豚バラ肉の鍋でもミルフィーユ鍋ですよね?」

「薄い豚バラ肉か豚ロース肉を重ねて一枚のトンカツにするんだよ。一枚肉を買うより安いし、柔らかくて美味いぞ」

「なるほど、間に色々挟んでも良さそうですね」

「それこそチーズとか香草なんかを入れても美味いんだけどな。クレア、色々考えておいてくれ。チキンカツにも応用できるから」

「任せてください兄さま!」


 その後はさくさくと料理を完成させていく。
 ピクルスを漬けた壺からキュウリなんかのピクルスを取り出しておく。
 福神漬けやらっきょうが無いのが残念だが、キュウリなんかのピクルスでも十分口直しになるし美味いからな。

 料理が出来上がるころにはガキんちょの声がリビングから聞こえてくる。
 相変わらず狙ったようなタイミングだな。


「じゃあ持っていくか」

「はい兄さま」


 リビングのテーブルにカツカレーやスープ、サラダなどを並べていく。
 ガキんちょどもはトンカツは知っているので、大好きなカレーの上に肉の塊を揚げたものが乗っていると大騒ぎだ。


「いいかガキんちょども! カツのお代わりは無いぞ! 白米とカレーは大量に用意してあるからそっちは好きなだけ食えよ!」

「「「はーい!」」」

「よし食っていいぞ!」

「「「いただきまーす!」」」


 お代わりの注意事項を説明した後に、そのまま食事開始の挨拶をする。
 ガキんちょどもは肉が好きだからな。ソースで食うトンカツとカレーで食うトンカツはまるっきり別物だからとくと味わうがいい。


「お兄ちゃん! とんかつってカレーと合うんだね!」

「チキンカツでもコロッケでもメンチカツでもハムカツでも揚げ物なら大抵なんでも合うぞ。ザリガニフライはわからんがエビフライカレーも美味いから合うかもな。食べないけど」

「ザリガニはねー。生きて動いてるのを見ちゃったから女の子たちが怖がっちゃってるんだよね」

「エビとかカニ系は見せないほうが良いかもな。エリナにはホワイトシチューを用意してあるから、小盛のカレーを食べ終わったらこっちな」

「大丈夫だと思うけどね! でもありがとうお兄ちゃん!」


 エリナと会話しつつ、ホワイトシチューを取り出してエリナの前に置く。
 ついでにホワイトシチューが大好きなミコトの分も置いたが、ミコトはカレーに夢中のようだ。


「兄ちゃん兄ちゃん!」

「またお前かよ。なんだよ一号」

「カレーととんかつってヤバいな!」

「うるせー。俺のカツ一切れやるから自分の席に戻って食え」

「おっ、ありがとな兄ちゃん! ってそんなことよりサラダがあるのになんでマヨネーズが無いんだよ」

「お前みたいな上級マヨラーの健康を気遣って、ノンオイルドレッシングを用意したんだ。黙って食ってろ」


 あまりにもガキんちょどもの摂取カロリーが気になっていたので、年末あたりからサラダを出すときにはマヨネーズは出さないようにして、ドレッシングもノンオイルドレッシングにこっそり変えてあったのだ。
 特に文句も出てなかったからそのまま黙ってたが、とうとう一号がマヨネーズが無いことについて突っ込んできた。


「ちぇっ。兄ちゃんはマヨラーの風上にも置けないな」

「置かんでいい置かんでいい」

「じゃあな兄ちゃん。俺は席に戻るわ」

「もう次に来てもカツはやらないからな。俺のがなくなるし」


 言語変換機能のせいか? 一号が歳の割に難しい言葉を使った気がしたが、どっちにしてもマヨラーとして括ってほしくないからスルーだ。
 俺からカツを一切れゲットした一号はほくほく顔で自分の席に戻る。
 毎回自分の皿を持って来るのは確実に俺からおかずを取ろうとしてるからだよな……。


「お兄ちゃんは本当にアランと仲良いね!」

「あいつ最近生意気なんだよなー」

「ふふふっ」

「なんだよアホ嫁」

「なんでもないよ! 照れ屋なお兄ちゃん!」


 むう。アホ嫁が訳のわからんことを言い出してるな。
 ひょっとしてサラダにマヨネーズやサウザンドレッシングを無くしたことに対する反発なのだろうか。
 エリナもマヨネーズやサウザンドレッシングが大好きだったからな。

 たまには出してやった方がいいかな?
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