ヘタレ転移者 ~孤児院を救うために冒険者をしていたら何故か領地経営をすることになったので、嫁たちとスローライフを送るためにも頑張ります~

茶山大地

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第八章 ヘタレパパ

第二十三話 魔導観覧車

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 年の瀬も迫ったある日、魔導士協会の爺さんが家に勝手に入ってきた。それも朝飯時に。


「兄さま……また防御結界が……」

「クレアの防御結界を突破できるのなんてクレアと爺さんくらいしかいないだろうからな。ったく。クレア、朝飯一人分追加な」

「はい兄さま。ロイドさんも事前に連絡してくれればいいんですけど」


 厨房に向かったクレアと入れ替わるように爺さんが入ってくる。


「ようトーマ、いや王国宰相閣下。以前頼まれていたアレが完成したからんじゃが」

「トーマでいいっての爺さん。わかってて言ってるだろ」

「おじいちゃん! おはようございます!」

「ほっほっほっ。エリナちゃんは相変わらず元気でいいのう。どれどれエマちゃんは元気かの?」

「はい! とっても元気です! いつもお医者さんを手配してくれてありがとうございます!」

「いいんじゃよ。エリナちゃんは儂にとって孫みたいなもんなんじゃからな」

「えへへ!」

「勝手にエリナを孫にするな。んで爺さん、ってのは?」

「魔導観覧車が完成したんじゃよ」

「それはわかってるけど、設置したいじゃなくて見てもらいたいってのは?」

「すでに昨晩のうちに設置したからの」

「一応俺の管轄下なんだから勝手なことをしないように」

「じゃがどうせ『ミコトやエマに見せたいから早く設置してくれ』って言うじゃろトーマは」

「なるほど。じゃあしょうがないか。魔導コースターは?」

「あれは年明け早々には完成するぞい」

「一応設置前には知らせろよ」

「覚えてたらの」


 アホなやり取りの最中にクレアが爺さんの朝食をトレーに乗せて持って来る。


「おはようございますロイドさん。良かったら朝食を召し上がってください」

「おお、すまんのクレアちゃん。しかしここの食事は本当に美味いのう。学校に常駐してる魔法講師の連中がうらやましいわい」

「爺さんはうちに来るとき毎回飯時を狙ってくるのをやめろ」

「偶然じゃよ偶然」


 ふぉっふぉっふぉっとクレアの持ってきたサンドイッチとホットドッグをパクつく爺さん。
 歳の割に良く食うんだよな。


「まあいい。爺さんが食い終わったらさっそく見に行くか。エリナもクレアもいいか?」

「うん! 楽しみ!」

「はい兄さま!」





「爺さん何人前食ってんだよ……」

「まだまだ若いモンには負けんわい」


 結局朝食を三人前以上食いやがった爺さんと、エリナとエマ、クレアとミコトを連れて家からすぐ近くの公園へと向かう。


「おお、試作品のミニチュアサイズとは聞いていたが意外とでかいな!」

「すごーい!」

「わー! 凄いですね姉さま!」

「そうじゃろそうじゃろ! 高さ十二メートル、六人乗りのゴンドラが六個じゃ」


 十二メートルか。校舎が三階建てだからそれよりも高くなるんだな。


「動力は?」

「半日以上動かすのに十分な量の魔石を仕込んである。魔力充填は毎日必要じゃがの」

「安全性は?」

「何度も確認したぞい。さらに何重もの安全装置を仕込んであるし、運用するときは手練れの術師を安全担当官につけてやろう」

「至れり尽くせりじゃないか」

「今魔導士協会は資金不足じゃからのう。本番用の魔導観覧車や魔導コースターの製作依頼は渡りに船なんじゃよ。維持管理費も定期的に入るしの」


 天竜や火竜の素材を売りつけて魔導士協会から散々搾り取ったからな。
 だからこそ今ファルケンブルク領周辺で竜種を探し回ってるんだけど。
 あと魔導メリーゴーラウンドは却下された。
 普通に馬に乗せたほうがコストが安いからだ。当たり前だな。


「じゃあ乗ってみるか。爺さんも乗ってくれ。いざとなったらエリナ達を降ろすくらいの魔法は使えるんだろ?」

「ゆっくり自由落下する程度なら余裕じゃの」

「よしじゃあ乗るか」





「すごいすごい! ほらエマちゃん、あれがお城だよ!」

「あー! うー!」

「わー! 凄く高いです! ミコトちゃん、ほらほらおうちがあんなに小さく!」

「まま! おうち! おうち!」

「想像以上に好評だな」

「ただ高い場所から眺めるよりも段々高くなって景色が変わっていく様子がおもしろいんじゃろうな」

「確かにそれは言える」

「それよりどうじゃトーマ。乗り心地とかは。お前さんの世界にあった観覧車と比べて」

「今日は結構風が強いのにゴンドラが全然揺れないんだがこれは魔法か?」

「そうじゃぞい」

「駆動音も全くしないし乗り心地は最高だぞ。ただ何故窓が開くんだこれ。危ないから嵌め込みにしろ」

「めんどくさいのう」

「子どもが乗るんだから気をつけろよ。無駄に凝ってるくせにこういう細かいところは駄目なのな」

「いかに魔導技術を駆使して乗り心地を増すかというのが醍醐味じゃのに」

「あとドアな。内側から簡単には開かないようにしろ。高いところで子どもが開けたら大惨事だろ」

「本当に細かいのうトーマは」

「子どもの立場に立って考えろっての。遊具なんだから」

「魔導技術に関係ないところを指摘されてものう」

「めんどくさいな爺さん。エリナとクレアは何か気づいたことあるか?」

「んー。特にないかな! 冬なのになかは温かいし」

「私も特にないですよ兄さま。ミコトちゃんも楽しそうですし」

「そういや空調も入ってるのか。ほんと無駄に凝ってるな」

「そうじゃろそうじゃろ!」

「じゃああとは実際に運用してみて、不具合対応や修正箇所、乗った連中からの意見なんかを集めて本番のでかいやつの設計だな」

「うむ、任せるのじゃ」

「ただあれだぞ、駆動音を完全に消すとか無駄だからな。ある程度の軽減はあったほうが良いが、コストパフォーマンスを考えて作れよ」

「ヘタレにはロマンがないのう」

「あまり高額なら作らせないからな。必要ない部分のコストカットは必要だぞ」

「ケチくさいのう」

「有限の予算を無駄に使いまくるわけにはいかないっての」

「まあそのあたりも任せろ」

「イマイチ信用できんが頼んだぞ爺さん」


 凄く不安になったが、現状こんな規模の魔道具を作れるのは爺さんたちしかいないからな。
 とりあえずこの観覧車を市民に無料で開放して運用してみるか。
 ミコトもエマも喜んでるみたいだし、作ってよかったな。
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