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第八章 ヘタレパパ

第十四話 プロサッカークラブをつくろう!

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 町の拡張に関しては流石にこちらが勝手に決められないので、区画の整理なども含めて土地所有者などと調整しながら決めていくことになった。
 領主直轄の土地でも上物は民間に貸してたりするしな。


「閣下。遊戯施設の他の案ですが」

「そのままサーカスっていう手もあるけどそういう集団はいないみたいだし、育成するにも時間と金がかかるからな」

「そうですね、動物芸や曲芸を披露するいわゆる見世物を興行する人間はほぼおりませんね」

「市場の人間になんか聞くと、極稀に中央広場公園で芸を披露して小銭を稼いでいるようなのはいるみたいだがな」

「閣下のいらっしゃった世界ですと成り立つような芸でも、この世界には魔法が存在しますからね。なかなか厳しいかと思われますよ」

「そうなんだよな。だから俺の世界の興行でこちらで受けそうなのが、歌や楽器演奏、絵画、話芸なんかだが」

「貴族向けではそういった職業は存在しますね。それを庶民にも浸透させたいという閣下のお考えには賛同いたします」

「そういう芸術的なの文化もゆっくり認知させていきたいんだけど、ここはもっと人間の本能に近い闘争心を発散させる興行をやりたい」

「それでスポーツなんですね」

「剣闘士みたいなのは凄惨過ぎるし、そもそも王国や亜人国家連合には奴隷階級が存在しないしな。ならスポーツで発散させてやりたい。シルも学校の授業に取り入れるって頑張ってるし」


 魔法で死亡回避できても四肢が飛んだり血が飛び散るようなのを見世物にしたら殺伐としそうだしな。
 武官登用も兼ねた武技を競うバトルトーナメントですら俺的ににはギリギリの妥協案だし。


「閣下のお考えはわかりました。スポーツの種目はなにか見当はついているのですか?」

「俺にはルールが良くわからんが、サッカーはボール一つから始められるし比較的浸透しやすいんじゃないか? 俺のいた世界でもバスケに続いて二位だったし、サッカー競技者以外の遊びで行う玉蹴りや小規模のフットサルまで含めたらサッカーは一位かもしれないし」

「過去何度か野球やサッカーは持ち込まれましたけど普及しなかったのですよね」

「普及しなかった原因の調査も必要だろうけど、まず最初にルールを理解してもらうために観戦者にルールブックを用意するとかかな。亜人国家連合ではわりと普及したって話だし」

「なるほど、では早速亜人国家連合にサッカー普及のためのアドバイザーをお願いいたしましょうか」

「道具なんかもだな、ボールにスパイク、ユニフォームなんかは最初の内は輸入に頼るだろうけど、ゆくゆくは領内で生産したい」

「かしこまりました。早速手配します」

「で、まずはサッカーチームを最低ふたつ、できれば四チームから六チームは作りたい」

「理由をお聞きしても?」

「年間を通してリーグ戦をやるんだよ。いずれはプロ化したいが、まずは『騎士団チーム』『武官チーム』『周辺領チーム』『商会連合チーム』みたいに分けて。んで月に一回か二回試合をして総当たりのリーグ戦をやって順位を決定する。そして優勝チームは亜人国家連合のチームと頂上決戦とかな。亜人国家連合とレベルが違い過ぎたら全チームから優秀な選手を選抜したチームで亜人国家連合チームに挑むとかさ。あ、もちろん魔法は禁止でな」

「随分壮大な計画ではありますが……」

「なのでまずは最低でも騎士団と武官から選手を募ってチームをふたつ作らせた上で試合をさせる。領民にもサッカーを奨励して試合のない日はグラウンドを貸したり、町のあちこちにグラウンドを作って、サッカーが気軽にできるようにボールやスパイク、ゼッケンを貸し出したりしてな」

「監督、コーチ役も招聘する必要がありますね」

「審判もだな」

「そうですね、必要な人員など亜人国家連合と打ち合わせしてみます。閣下の要望と言うことであれば多分快く派遣して頂けると思いますのでよろしいでしょうか?」

「頼む。もちろん派遣してもらう人材の待遇は良くしてくれよ」

「立派な犬小屋を建てればいいんでしたっけ」


 そういやそんな連中だった……。
 いやいや待て待て、流石にマズいだろう。サクラも犬小屋希望だったが、部屋を与えたら喜んでそこで寝てるしな。
 少なくとも屋内の部屋の方が犬小屋よりも上の待遇だっていうのは共通の認識で間違いないだろう。


「……犬人国以外からも来るかもしれないし、城かどこか貴族用の邸宅が余ってればそこに部屋を用意してくれ」

「かしこまりました。一応犬小屋の用意しておきますね」

「うーん、無駄になるんじゃないのか?」

「犬小屋じゃないと落ち着かないと言われた場合など部屋の中に置けるように準備しておきます」

「それならいいか。一応犬耳族以外が来るかもしれないから情報は集めておかないとな。好みの食事なんかもあるだろうし」

「そうですね、食べられなかったり禁忌扱いの食材もあるでしょうし、調理方法なども考慮する必要がありますね」


 そういえばサクラには普通に飯食わせてたな。前の世界では食材の処理の方法が厳格に定められてる宗教もあるし気を付けないと……。
 一応ネギとか犬に食べさせたらまずいのとかは確認したけどな。


「そうだな、今後交流の機会も増えるだろうし、旅行者なんかも来るかもしれない。向こうの文化や風習についても調べたうえで周知しておかないと」

「はい。お任せください」

「アイリーンじゃなくて別の担当者を任命するように。観光担当とかそんなのでいいから、亜人国家連合の公用語の日本語が堪能な奴とかさ」

「その程度であれば私と通訳のふたりでも可能ですが」

「旅行者とか来るようになったら為替レートだっけ? 文化や風習以外にもそういう細かいこともあるだろ?」

「……かしこまりました」

「不服そうだけどお前のために言ってるんだからなアイリーン。お前が有能なのはわかってるんだからそんなに仕事を抱え込んで俺にアピールする必要はないんだぞ」

「ワカリマシター」


 こいつ……。


「いいか、ここに座ってるお前たちに言っておく! アイリーンにできるだけ仕事をさせないように!」


 スッと俺の左手に座るおっさんが挙手をしてきたので、顎をクイっとして発言を許可する。お、なんか今のかっこよくない?


「ですが閣下、アイリーン卿は仕事をしてないと死んでしまいます」

「わかるようなわからないような」

「仕事を与えておかないと周囲にやることが無いか探し始めてしまうのです。以前やることが無いと急に窓拭き掃除を始めたことがありまして……」

「病気かな?」

「多分そうかと。残念ですが」

「……」


 何も言い返せない残念なアイリーンが少し悔しそうだ。
 仕事が好きなのはわかるんだがな、せめて休日くらいはしっかり休んでほしいし。


「休むのも仕事だって植え付けないと駄目だな」

「休日は閣下のご自宅で過ごさせるようにするとか」

「うちに来ても飯の最中に書類を読んでるイメージしかないぞ……。いや、こうなったら魔法で強制的に眠らせるか。よしアイリーンは休みの日はうちに来い朝飯の時間からな」

「わ、わかりました! ありがとうございます!」


 滅茶苦茶喜んでるけど、眠らされるんだぞ? わかってるのか?

 一応これで今日予定されていた議題の全ては話し終わったので解散となった。結局何もしなかったクリスを連れて城を出る。
 学校からプロのサッカー選手が出たら良いなと思いながら、今日は珍しく頑張っているシルに期待しながら買い物を終え帰宅するのだった。
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