ヘタレ転移者 ~孤児院を救うために冒険者をしていたら何故か領地経営をすることになったので、嫁たちとスローライフを送るためにも頑張ります~

茶山大地

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第八章 ヘタレパパ

第十一話 学校給食

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 人生の冒険者ギルドでの打ち合わせが終わり、クリスと家に戻る。


「ぱぱ! くりすねー!」

「お兄ちゃん、クリスお姉ちゃんお帰り!」

「兄さま、クリス姉さまお帰りなさい」

「わふわふっ! ご主人様クリスお姉さんお帰りなさいですっ!」



 家の扉を開けると、エマを抱いたエリナとミコトと手をつないだクレア、サクラが出迎えてきた。
 俺たちの姿を見たミコトが、ぽててとクリスに向かって小走りで駆け寄る。
 今日はクリスの日か。相変わらず小悪魔っぷりを発揮してあちこちに愛想振りまいてるな俺の天使は。


「エリナちゃん、クレアちゃん、サクラちゃんただいま戻りました。ミコトちゃんただいまー」


 クリスがしゃがみ込んで駆け寄るミコトをキャッチしてハグする。クリスはミコトの艶やかな黒い髪を撫でるとミコトは「きゃっきゃっ」とご満悦のようだ。


「さあ昼飯にするか」

「「「はーい」」」


 ガキんちょどもは学校で寮生と共に給食を食べるようになったので、昼食は俺たちも給食を用意てもらっている。
 夕飯のメニューと被ったら大変だしな。
 昼食の用意をするという仕事がなくなったクレアは抗議してきたが、ミコトの他にもエリナとエマの世話もクレアに任せるからと言うとすぐにご機嫌になった。チョロい。というか仕事しすぎなんだよなクレアも。

 リビングに行き席に座ると、クレアとサクラが配膳をする。
 シルと婆さんは時間があれば家に戻って飯を食うんだが、今日は学校で給食を食べるみたいだな。

 婆さんには学校の経費計算なども任せてる。補助の人間はつけてるけど、今後の学校制度の拡充のためにと凄くやる気を出しているのだ。
 決して婆さんのグロ本を焚書するとか脅したわけではない。何故なら校長室に置かれた金庫の中にグロ本を隠しているのを俺は知ってて黙っているんだからな。
 あれ? 昼に戻ってこないのはこっそりグロ本を読んでるのかな?


「お、今日は米がメインなんだな」


 今日のメニューはチキンステーキの乗ったジャンバラヤとサラダだ。


「お米を食べ慣れていない子たちにはさんどいっちも別に用意されているみたいですよ兄さま」

「至れり尽くせりだな。子どもたちは好き嫌いもあるだろうから調理担当は大変だと思うけど」

「うちの子たちはそっちも食べちゃうみたいですけどね……」

「まあ一人前じゃ足りないだろうしな……」

「無駄にならなくて良かったねお兄ちゃん!」

「そうなんだけど、ちょっと異常だよなあいつら」

「いっぱい食べるのは良いことだと思うよ!」


 大量に食うから魔法適性が生えたのかなあいつら。
 でも魔法適性がまだ伸びてる俺やクリスの食う量は普通だしな。わけわからん。
 クレアは俺たちと同じくらいしか食べないし、エリナは俺たちより食べる方だとは思うけどガキんちょどもよりは少ない方だ。

「なあクレア、ミコトって結構食べる方?」

「普通だと思いますよ兄さま。野菜売りのおばさまもそう言ってましたし」

「ならあまり関係ないのかな?」

「今日のおやつはメロンパンとクリームパンなんだって! 楽しみ!」

「わふわふっ! 楽しみですっ!」


 この中では食欲旺盛な二人が昼飯を食べながらおやつの話題を振ってくる。
 どういう食欲だ。


「今日の午後は城で会議だからなー。クレア、城の奴らの分のおやつは用意できるか?」

「もう用意してありますよ。お城でみなさんと食べてくださいね」

「流石だなクレア」

「ありがとうございます兄さま。てへへ」

「わふわふっ! ご主人様っ! 今日のごはんもすごく美味しいですよっ!」


 サクラに好評なジャンバラヤを早速食べてみる。
 日本で食べたものをクレアが再現したケイジャンソースを使ったスパイシーなものではなく、トマトソースをベースに子どもたち用に刺激が抑えられた具だくさんチキンライスのような味わいだ。美味い。


「これ、美味いけどクレアのレシピか?」

「いえ、私のレシピを参考にヘルマさんたちが子ども向け用にアレンジしたものですよ」

「ヘルマ?」

「兄さまは人の名前を覚えないきゃらはやめたほうが良いですよ。アンナちゃんのお母さんです」

「ああ、アンナの母親か。寮母で調理責任者とか大活躍だな」

「ミコトちゃんも食べられるしね!」


 今日はクリスにべったりのミコトが、クリスに補助されながら、美味そうにジャンバラヤを口に運んでいる。


「亜人国家連合でも似たような食べ物はありますが、これはすごく美味しいですよっクレアちゃん!」

「えへへ、ありがとうございますサクラ姉さま」

「米食があまり一般的じゃないのに、サクラでも美味いっていうような料理を大量生産できる才能が埋もれてたのか。なんて勿体ない」


 アンナの母親は貧困層の女性だ。小麦より高い米はたぶん口にしたことなどないだろう。
 美味い米が出回ったのは最近からだし、それほど美味くない上に高い米をわざわざ買うような余裕はなかっただろうしな。
 そんな米を、いくらクレアのレシピがあったからってここまで仕上げてくるとはな。しかも子ども用にアレンジまでしてるし。


「旦那様、炊事場で働く女性を、建築、土木関係の業者が引き抜くといケースも発生しているようですよ。やはり美味しい食事を大量に用意できるという技能は、作業効率向上にかなり有効だという認識が広がっているようです」

「良いことだな。契約期間終了と同時にうちの作業現場から有能な人材が引き抜かれるってことでもあるけど」

「ええ、どうしても商会などに就職する方が期間雇用より安定していますからね」

「うちの現場で技能をつけて就職してもらうっていうのは元々の計画の内だったからな。どんどん就職してほしいわ。うちの作業場に出入りしてるってことは、その業者は健全なところなんだろ?」

「はい、従業員への給与などしっかりしたところにしか業務委託を出していませんからね」

「なら問題ない。公共事業を通じて雇用安定につながればいいことづくめじゃないか」

「そうするとやはり町の外郭拡張工事も視野に入れないといけませんわね。今後も公共事業が続くとアピールしなければ雇用も増やしづらいでしょうし」

「それも午後の会議でだな」

「かしこまりましたわ旦那様」


 今のところ公共事業自体は問題が無いどころかいい影響しかない。
 ただし予算の問題がな。
 増税なんてしたらせっかくの好景気も台無しになりそうだし。交易でどれくらいの利益が上がってるのかにもよるが、ほかにも領地の収益を増やす政策も考えないと。

 アンナの母親が作ったお子様用ジャンバラヤを堪能しつつ、午後の会議に備えて腹を満たすのだった。
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