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第七章 ヘタレ学園都市への道
第十七話 入学祝パーティー
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「ただいま戻りました!」
ご機嫌なシルが帰宅のあいさつをすると、クレアとミコトが出迎えに来た。
「ぱぱ! しるねー!」
「ミコトー! ぱぱ沢山お仕事してきたぞー!」
即座にマントと胸甲を外して、クレアの手を離れぽてぽてと走ってくるミコトをキャッチする。
もちろん甲斐性なしじゃないぞとアピールするのは忘れない。
「兄さま、シル姉さまお帰りなさい! 随分早かったですね!」
「クレアちゃん、お兄様とわたくしで火竜とブラックバッファローを狩ってきたのですよ!」
「えっ、火竜ですか?」
「はい! たまたま見つけたので夫婦魔法で狩りました!」
「兄さま! 私も夫婦魔法を兄さまと使いたいです!」
「今度な」
「約束ですよ!」
念押ししてくるクレアに「わかったわかった」と返事をして、ミコトを抱っこしたままリビングへ向かう。
「ミコト、ぱぱと昼ご飯食べるか?」
「まま!」
すんごい笑顔のミコトが、クレアを指さしながら俺の誘いを断ってくる。なんでだ、甲斐性あるぞ!
「ミコトはぱぱのこと好きか?」
「しゅき!」
「じゃーぱぱとご飯食べよう!」
「まま!」
……。
「ミコト、ぱぱいっぱいお金稼いできたんだよ?」
「ぱぱすごい!」
「ぱぱとご飯食べる?」
「まま!」
クレアとシルが少し困った顔をしながら俺の後ろをついてくる。
とりあえずミコトを抱っこしたまま炬燵に入り、ミコトをぎゅっと抱きしめると「きゃっきゃ」と嬉しそうだ。
「お帰りお兄ちゃん! ごめんね、ちょっと気持ちが悪かったからおとなしくしてた!」
「俺の出迎えなんか気にしないでエリナは体を大事にしてくれ」
「うん!」
「ミコトが、俺とご飯食べてくれないんだよなー」
「お兄ちゃんはミコトちゃんにたくさん食べさせようとするから嫌がるんだよ」
「そうか? そんなことないと思うぞ」
「一度クレアと一緒に、ミコトちゃんにご飯を食べさせてみればいいと思うよ。クレアの指示通りなら大丈夫だと思うから」
「そうなのかクレア?」
「ミコトちゃんはゆっくり食べるのが好きですからね。次々と食べ物を勧められると疲れちゃうんだと思いますよ兄さま」
「よし、早速じゃあ昼飯にするか。クレア頼むぞ」
「はい兄さま」
その後の昼食で、クレアにいったんミコトを預けて食べさせ方を教わる。ミコトは愛想がいいから、ミコト専用の取り皿に乗せられるとすぐに食べちゃうから勘違いしてたみたいだ。クレアの「もういいですよ兄さま」と言われたタイミングでミコトに何が食べたいかを聞いて取り皿に取り分けてやる。これで「ぱぱとごはん!」っていうようになってくれればいいんだが。
昼食を終えて、暇そうにしてたシルを連れてブラックバッファローの換金と買い物に行く。
今日は入学祝を兼ねて、大講堂で寮生含む生徒全員でパーティーをすることにした。
食べ方というか、食事のマナーも怪しい子がいるので、職員教師総出でサポートをしつつ、食事を楽しませつつ、ある程度のマナーと生徒同士、職員、教師との交流を図るという目的だ。
俺の思い付きを昼飯後に聞いたクリスたちは大慌てで大講堂にテーブルやら椅子やらのセッティングをしていた。ごめんな。
ブラックバッファローを換金して大量の食材を買い込むと、すぐに寮の大きな厨房に向かう。
百人分はさすがに大変なので、シチューやから揚げ、ピザやパスタなど比較的単純で量を作れるメニューはアンナの母親をはじめとする職員に任せる。
俺とクレア、ついでにシルのグループはドリアやグラタン、チキンステーキなどをどんどん焼いていく。
「兄さま、チキンステーキは終わりましたよ!」
「グラタンとかはもう仕込みは終わったからあとは焼くだけだ。合間にちょいちょいおつまみ的なのを作るか」
「はい兄さま」
「シルは焼きあがったグラタンをマジックボックスに収納して、どんどん新たに焼いてくれ」
「はい! お兄様!」
シルも料理の腕は少しずつ成長してる。今では窯も任せられるようになった。窯の温度管理と焼き上げる時間を測るだけだが。
料理が完成し、職員チームの料理もまとめてマジックボックスに収納し、大講堂に運んでいく。
大講堂にはすでにテーブルと椅子が設置され、ガキんちょどもが大人しく座っていた。
テーブルの上にどんどん料理を置いていくと、寮生たちは見たことも無いごちそうに目を輝かせる。
「じゃあ婆さん頼む」
料理も並べ終わり、職員と教師が寮生を中心にサポートできる位置についたのを確認して、婆さんにパーティー開始の挨拶を促す。
婆さんはこくりと頷くと
「では皆さん。今日は入学おめでとうございます。食事のマナーは今後ゆっくり覚えて頂きますが、今日のところは料理を無駄にしないようにするだけで大丈夫ですからね」
「「「はーい」」」
返事は寮生の子でも半日でできるようになってるのな。
「食べ方がわからなかったりしたときは近くの先生に聞いてくださいね」
「「「はーい」」」
「ではみなさん、今日はお腹いっぱい食べてくださいね。ではいただきます」
「「「いただきまーす!」」」
ガキんちょどもが一斉に食べ始める。寮生の中には手づかみの子もいるし、焼きたて、揚げたてを知らない子もいるのだろう。手や口をやけどする子もいる。
クレアやクリスが治療に回ったりしてるし、食べ物を他の子に取られたと泣き出す子もいる。
それでもすぐに職員たちに慰められて、食べ物を口にするとすぐ笑顔になっている。
やっと、ファルケンブルク領と周辺領だけだけど、孤児や食事に困る子を食べさせていけることができるようになった。
あとは領地を豊かにしていけば。
こういう子が出ないように生活の底上げをしていけば。
そして親がいなくても、家が貧しくても、ちゃんと教育を受けられて社会に出ていくことができれば。
――きっと世界はもっと良くなるはずだ。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
ファルケンブルク領では、なんとか孤児や貧困層の子どもを救済する道筋を作ることができました。
今回で第七章は終了です。
次回更新より第八章が始まります。
八章は新たな住人が増えてよりにぎやかに、そしてファルケンブルク領がますます発展していきます。
「ヘタレ転移者」を引き続き応援よろしくお願い致します!
本作は小説家になろう、カクヨムでも掲載しております。
よろしければそちらでも応援いただけますと幸いです。
また、小説家になろう版は、序盤から新規に挿絵を大量に追加したうえで、一話当たりの文字数調整、加筆修正、縦読み対応の改稿版となります。
九章以降ではほぼ毎話挿絵を掲載しております。
是非挿絵だけでもご覧くださいませ。
ご機嫌なシルが帰宅のあいさつをすると、クレアとミコトが出迎えに来た。
「ぱぱ! しるねー!」
「ミコトー! ぱぱ沢山お仕事してきたぞー!」
即座にマントと胸甲を外して、クレアの手を離れぽてぽてと走ってくるミコトをキャッチする。
もちろん甲斐性なしじゃないぞとアピールするのは忘れない。
「兄さま、シル姉さまお帰りなさい! 随分早かったですね!」
「クレアちゃん、お兄様とわたくしで火竜とブラックバッファローを狩ってきたのですよ!」
「えっ、火竜ですか?」
「はい! たまたま見つけたので夫婦魔法で狩りました!」
「兄さま! 私も夫婦魔法を兄さまと使いたいです!」
「今度な」
「約束ですよ!」
念押ししてくるクレアに「わかったわかった」と返事をして、ミコトを抱っこしたままリビングへ向かう。
「ミコト、ぱぱと昼ご飯食べるか?」
「まま!」
すんごい笑顔のミコトが、クレアを指さしながら俺の誘いを断ってくる。なんでだ、甲斐性あるぞ!
「ミコトはぱぱのこと好きか?」
「しゅき!」
「じゃーぱぱとご飯食べよう!」
「まま!」
……。
「ミコト、ぱぱいっぱいお金稼いできたんだよ?」
「ぱぱすごい!」
「ぱぱとご飯食べる?」
「まま!」
クレアとシルが少し困った顔をしながら俺の後ろをついてくる。
とりあえずミコトを抱っこしたまま炬燵に入り、ミコトをぎゅっと抱きしめると「きゃっきゃ」と嬉しそうだ。
「お帰りお兄ちゃん! ごめんね、ちょっと気持ちが悪かったからおとなしくしてた!」
「俺の出迎えなんか気にしないでエリナは体を大事にしてくれ」
「うん!」
「ミコトが、俺とご飯食べてくれないんだよなー」
「お兄ちゃんはミコトちゃんにたくさん食べさせようとするから嫌がるんだよ」
「そうか? そんなことないと思うぞ」
「一度クレアと一緒に、ミコトちゃんにご飯を食べさせてみればいいと思うよ。クレアの指示通りなら大丈夫だと思うから」
「そうなのかクレア?」
「ミコトちゃんはゆっくり食べるのが好きですからね。次々と食べ物を勧められると疲れちゃうんだと思いますよ兄さま」
「よし、早速じゃあ昼飯にするか。クレア頼むぞ」
「はい兄さま」
その後の昼食で、クレアにいったんミコトを預けて食べさせ方を教わる。ミコトは愛想がいいから、ミコト専用の取り皿に乗せられるとすぐに食べちゃうから勘違いしてたみたいだ。クレアの「もういいですよ兄さま」と言われたタイミングでミコトに何が食べたいかを聞いて取り皿に取り分けてやる。これで「ぱぱとごはん!」っていうようになってくれればいいんだが。
昼食を終えて、暇そうにしてたシルを連れてブラックバッファローの換金と買い物に行く。
今日は入学祝を兼ねて、大講堂で寮生含む生徒全員でパーティーをすることにした。
食べ方というか、食事のマナーも怪しい子がいるので、職員教師総出でサポートをしつつ、食事を楽しませつつ、ある程度のマナーと生徒同士、職員、教師との交流を図るという目的だ。
俺の思い付きを昼飯後に聞いたクリスたちは大慌てで大講堂にテーブルやら椅子やらのセッティングをしていた。ごめんな。
ブラックバッファローを換金して大量の食材を買い込むと、すぐに寮の大きな厨房に向かう。
百人分はさすがに大変なので、シチューやから揚げ、ピザやパスタなど比較的単純で量を作れるメニューはアンナの母親をはじめとする職員に任せる。
俺とクレア、ついでにシルのグループはドリアやグラタン、チキンステーキなどをどんどん焼いていく。
「兄さま、チキンステーキは終わりましたよ!」
「グラタンとかはもう仕込みは終わったからあとは焼くだけだ。合間にちょいちょいおつまみ的なのを作るか」
「はい兄さま」
「シルは焼きあがったグラタンをマジックボックスに収納して、どんどん新たに焼いてくれ」
「はい! お兄様!」
シルも料理の腕は少しずつ成長してる。今では窯も任せられるようになった。窯の温度管理と焼き上げる時間を測るだけだが。
料理が完成し、職員チームの料理もまとめてマジックボックスに収納し、大講堂に運んでいく。
大講堂にはすでにテーブルと椅子が設置され、ガキんちょどもが大人しく座っていた。
テーブルの上にどんどん料理を置いていくと、寮生たちは見たことも無いごちそうに目を輝かせる。
「じゃあ婆さん頼む」
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「「「はーい」」」
返事は寮生の子でも半日でできるようになってるのな。
「食べ方がわからなかったりしたときは近くの先生に聞いてくださいね」
「「「はーい」」」
「ではみなさん、今日はお腹いっぱい食べてくださいね。ではいただきます」
「「「いただきまーす!」」」
ガキんちょどもが一斉に食べ始める。寮生の中には手づかみの子もいるし、焼きたて、揚げたてを知らない子もいるのだろう。手や口をやけどする子もいる。
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それでもすぐに職員たちに慰められて、食べ物を口にするとすぐ笑顔になっている。
やっと、ファルケンブルク領と周辺領だけだけど、孤児や食事に困る子を食べさせていけることができるようになった。
あとは領地を豊かにしていけば。
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――きっと世界はもっと良くなるはずだ。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
ファルケンブルク領では、なんとか孤児や貧困層の子どもを救済する道筋を作ることができました。
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