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第七章 ヘタレ学園都市への道
第十六話 甲斐性なしとは言わせない
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「お兄様! 索敵の魔法を使いますね!」
クレアから弁当を受け取って、シルとブラックバッファローを探すために東の荒野に来ていた。
「頼む。ブラックバッファローが見つかればいいんだが、反応が無かったらすぐに西の平原に行ってダッシュエミュー狩りだからな」
シルが「えへへ!」と俺にしがみついてくる。
俺の魔力を使って走査の索敵範囲を広げるためだ。シル単独だと一キロ弱だが、魔法石で増幅したうえで、俺の魔力を使って範囲を広げると三キロ弱まで広がるのだ。
もうすぐ昼だから、この索敵でブラックバッファローが見つからなければ、すぐに西の平原に向かってダッシュエミュー狩りに切り替える予定だ。
「走査!」
シルが首から下げたペンダントにあしらわれている、土魔法と相性のいいブラックダイヤモンドが光を放つと同時にシルが土属性の探索魔法を行使する。
「どうだ?」
「……お兄様、何かいますよ」
「そりゃいるだろ。ブラックバッファローならいいんだが、猟師や街道に沿って動いているなら荷馬車の可能性もあるぞ」
「いえ、地竜ですかね、すごく大きい反応です」
「マジかよ、好都合だけどこんなにぽんぽん竜種が沸いてたら危ないだろがよ……」
「とにかく狩りましょう! わたくしの見せ場が!」
「そうだな、首だけ綺麗に切断ってのは近づかなきゃいけなくて危ないから、攻撃魔法で仕留めるか」
「ええ! 夫婦魔法ですね! お任せくださいませ!」
「こちらに向かっているのか?」
「いえ、ブラックバッファローを追っているようです。わたくしたちは回り込むように移動しましょう」
「わかった。案内頼む」
「はいお兄様! 地走!」
「疾風!」
高速移動をする魔法を行使して、シルの後についていく。
少し奔っていると、たしかに竜がブラックバッファローを追っていた。
あれ? 地竜ってあんなに真っ赤だったっけ? しかもブレスを吐いてないか? 走りながらだからか、狙いをつけられずに外れまくってるが。
「お兄様……」
「アレ地竜じゃないよな……」
シルが足を止めたので俺も疾風を解除する。
「多分火竜だと思います」
「なるほどね。メイドさーん」
メイドさんを呼ぶと、シュタッっという音とともに現れる。外だと登場音があるのか。
「はっ。お側に」
「学校にいるクリスと、南の森でいまだに天竜を探してる魔導士協会の連中に緊急連絡。あと騎士団も呼んでおくか。町の連中にも警戒するように伝えてくれ」
「はっ」
メイドさんがあっという間に消える。
というかメイドさんならアレ仕留められるんじゃないの? 下手に命令して返り討ちにあったりしたら怖いから言わないけどさ。
「お兄様! 夫婦魔法を使いましょう! 水属性ならば火竜とも相性はいいはずですから!」
「相性か、水属性の最上級魔法なら仕留められるかな?」
「やってみましょう! さあお兄様!」
ぎゅっと俺に抱き着いてキスしてくるシル。なんでだよ。
俺が後ろから抱きしめるように体制を整えると、シルは一期一振を鞘ごと持ち、柄の部分に魔力を籠める。
鞘の中で青い光が漏れる。茎に仕込まれたサファイアが輝いているのだろう。
「行きますお兄様!」
「お前のタイミングでいいぞ」
「はい!」
射程的にはギリギリだろうか。シルが正面を真横に走り抜けようとする火竜に狙いを付ける。
「天の氷結矢!」
シルが水属性最上級魔法を行使すると、水晶のような輝きを放つ閃光が煌めき火竜の頭部を吹き飛ばす。
同時に俺の魔力が二割ほど持っていかれている。最上級でも範囲魔法のダイヤモンドダストだったら半分以上持っていかれただろう。
「あ、高額素材が。すみませんお兄様」
「……まあいいさ。頭部か心臓以外じゃ一撃で仕留めきれなさそうだったしな」
「ついでにブラックバッファローも仕留めておきますね」
「そうだな、金貨二枚だし」
「極寒の氷原!」
そう言ってシルは氷の棺よりも上位の拘束魔法を俺の魔力も吸収して行使する。
夫婦魔法で威力を増幅させたおかげか、火竜も一緒に丸ごと凍ったので、貴重な素材である血液もこれ以上失うことはない。
「じゃあブラックバッファローは持ち帰って、火竜の運搬は騎士団と魔導士協会の連中に任せるか。呼んでおいて丁度良かった」
「はい!」
褒めて褒めてーとこちらを向いて抱き着いてくるシル。まあいいかとその赤い髪を梳くように撫でてやる。
「良くやったぞシル。さすが俺の嫁だ」
「えへへ! はやく最上級の上の愛情級を使えるようになりたいです!」
「そのネーミングはやめろ。魔導士協会の連中と話し合って超級って定義付しただろ」
魔導士協会には、以前ちわっこに協力してもらう代わりに夫婦魔法のデータを渡してある。
結局魔導士協会では夫婦魔法を使うことはできなかったが、少し前にクリスが天竜を仕留めた時に使った夫婦魔法のデータも渡したのだ。
その際にクリスの使った魔法、ラヴ・メギドフレアは最上級魔法の上、超級魔法ということで定義づけられた。ただの威力が増したメギドフレアだろとツッコんだがスルーされた。
しばしシルとじゃれ合っていると、クリスが到着する。
もう火竜は倒したと告げると、「学校の方でまだ仕事を残していますので戻りますわね」と帰っていく。ちょっと可哀そうだったな。
その後に到着した魔導士協会長の爺さんに「何故ファルケンブルク領周辺はこんなに竜が出るんじゃ」としつこく追及されるが、知らんから勝手に調査しろと伝えると、魔導士協会の支部を作るから土地を寄越せと言い出したので、学校の敷地でまだ更地になってない部分を使っていいか確認しておくと言っておいた。
これで今後は竜種が出てもこいつらが勝手に処理してくれるだろ。税収にもなるしな。
爺さんらが火竜をどんどん解体し始めたので、ブラックバッファローだけをマジックボックスに収納する。
その後駆けつけてきた騎士団に、爺さんたちの手伝いを命じて町に戻る。
「結局弁当いらなかったな。換金の前に家に戻ってみんなと食うか」
「はいお兄様!」
がばっと俺の腕にしがみついてきたシルの頭をひとなでして東門へと向かう。
これでミコトに甲斐性なしだのヒモだの言われなくて済む。魔力タンク役だろうと一応二人で火竜討伐を達成したわけだからな。
ミコトに「ぱぱ一杯稼いできたぞー!」と報告するのを楽しみにして帰るのだった。
クレアから弁当を受け取って、シルとブラックバッファローを探すために東の荒野に来ていた。
「頼む。ブラックバッファローが見つかればいいんだが、反応が無かったらすぐに西の平原に行ってダッシュエミュー狩りだからな」
シルが「えへへ!」と俺にしがみついてくる。
俺の魔力を使って走査の索敵範囲を広げるためだ。シル単独だと一キロ弱だが、魔法石で増幅したうえで、俺の魔力を使って範囲を広げると三キロ弱まで広がるのだ。
もうすぐ昼だから、この索敵でブラックバッファローが見つからなければ、すぐに西の平原に向かってダッシュエミュー狩りに切り替える予定だ。
「走査!」
シルが首から下げたペンダントにあしらわれている、土魔法と相性のいいブラックダイヤモンドが光を放つと同時にシルが土属性の探索魔法を行使する。
「どうだ?」
「……お兄様、何かいますよ」
「そりゃいるだろ。ブラックバッファローならいいんだが、猟師や街道に沿って動いているなら荷馬車の可能性もあるぞ」
「いえ、地竜ですかね、すごく大きい反応です」
「マジかよ、好都合だけどこんなにぽんぽん竜種が沸いてたら危ないだろがよ……」
「とにかく狩りましょう! わたくしの見せ場が!」
「そうだな、首だけ綺麗に切断ってのは近づかなきゃいけなくて危ないから、攻撃魔法で仕留めるか」
「ええ! 夫婦魔法ですね! お任せくださいませ!」
「こちらに向かっているのか?」
「いえ、ブラックバッファローを追っているようです。わたくしたちは回り込むように移動しましょう」
「わかった。案内頼む」
「はいお兄様! 地走!」
「疾風!」
高速移動をする魔法を行使して、シルの後についていく。
少し奔っていると、たしかに竜がブラックバッファローを追っていた。
あれ? 地竜ってあんなに真っ赤だったっけ? しかもブレスを吐いてないか? 走りながらだからか、狙いをつけられずに外れまくってるが。
「お兄様……」
「アレ地竜じゃないよな……」
シルが足を止めたので俺も疾風を解除する。
「多分火竜だと思います」
「なるほどね。メイドさーん」
メイドさんを呼ぶと、シュタッっという音とともに現れる。外だと登場音があるのか。
「はっ。お側に」
「学校にいるクリスと、南の森でいまだに天竜を探してる魔導士協会の連中に緊急連絡。あと騎士団も呼んでおくか。町の連中にも警戒するように伝えてくれ」
「はっ」
メイドさんがあっという間に消える。
というかメイドさんならアレ仕留められるんじゃないの? 下手に命令して返り討ちにあったりしたら怖いから言わないけどさ。
「お兄様! 夫婦魔法を使いましょう! 水属性ならば火竜とも相性はいいはずですから!」
「相性か、水属性の最上級魔法なら仕留められるかな?」
「やってみましょう! さあお兄様!」
ぎゅっと俺に抱き着いてキスしてくるシル。なんでだよ。
俺が後ろから抱きしめるように体制を整えると、シルは一期一振を鞘ごと持ち、柄の部分に魔力を籠める。
鞘の中で青い光が漏れる。茎に仕込まれたサファイアが輝いているのだろう。
「行きますお兄様!」
「お前のタイミングでいいぞ」
「はい!」
射程的にはギリギリだろうか。シルが正面を真横に走り抜けようとする火竜に狙いを付ける。
「天の氷結矢!」
シルが水属性最上級魔法を行使すると、水晶のような輝きを放つ閃光が煌めき火竜の頭部を吹き飛ばす。
同時に俺の魔力が二割ほど持っていかれている。最上級でも範囲魔法のダイヤモンドダストだったら半分以上持っていかれただろう。
「あ、高額素材が。すみませんお兄様」
「……まあいいさ。頭部か心臓以外じゃ一撃で仕留めきれなさそうだったしな」
「ついでにブラックバッファローも仕留めておきますね」
「そうだな、金貨二枚だし」
「極寒の氷原!」
そう言ってシルは氷の棺よりも上位の拘束魔法を俺の魔力も吸収して行使する。
夫婦魔法で威力を増幅させたおかげか、火竜も一緒に丸ごと凍ったので、貴重な素材である血液もこれ以上失うことはない。
「じゃあブラックバッファローは持ち帰って、火竜の運搬は騎士団と魔導士協会の連中に任せるか。呼んでおいて丁度良かった」
「はい!」
褒めて褒めてーとこちらを向いて抱き着いてくるシル。まあいいかとその赤い髪を梳くように撫でてやる。
「良くやったぞシル。さすが俺の嫁だ」
「えへへ! はやく最上級の上の愛情級を使えるようになりたいです!」
「そのネーミングはやめろ。魔導士協会の連中と話し合って超級って定義付しただろ」
魔導士協会には、以前ちわっこに協力してもらう代わりに夫婦魔法のデータを渡してある。
結局魔導士協会では夫婦魔法を使うことはできなかったが、少し前にクリスが天竜を仕留めた時に使った夫婦魔法のデータも渡したのだ。
その際にクリスの使った魔法、ラヴ・メギドフレアは最上級魔法の上、超級魔法ということで定義づけられた。ただの威力が増したメギドフレアだろとツッコんだがスルーされた。
しばしシルとじゃれ合っていると、クリスが到着する。
もう火竜は倒したと告げると、「学校の方でまだ仕事を残していますので戻りますわね」と帰っていく。ちょっと可哀そうだったな。
その後に到着した魔導士協会長の爺さんに「何故ファルケンブルク領周辺はこんなに竜が出るんじゃ」としつこく追及されるが、知らんから勝手に調査しろと伝えると、魔導士協会の支部を作るから土地を寄越せと言い出したので、学校の敷地でまだ更地になってない部分を使っていいか確認しておくと言っておいた。
これで今後は竜種が出てもこいつらが勝手に処理してくれるだろ。税収にもなるしな。
爺さんらが火竜をどんどん解体し始めたので、ブラックバッファローだけをマジックボックスに収納する。
その後駆けつけてきた騎士団に、爺さんたちの手伝いを命じて町に戻る。
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これでミコトに甲斐性なしだのヒモだの言われなくて済む。魔力タンク役だろうと一応二人で火竜討伐を達成したわけだからな。
ミコトに「ぱぱ一杯稼いできたぞー!」と報告するのを楽しみにして帰るのだった。
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