ヘタレ転移者 ~孤児院を救うために冒険者をしていたら何故か領地経営をすることになったので、嫁たちとスローライフを送るためにも頑張ります~

茶山大地

文字の大きさ
上 下
73 / 317
第五章 ヘタレ王国宰相

第十六話 ちちゅーを作ろう

しおりを挟む

「兄さまお帰りなさい!」


 孤児院全体に張られた防御魔法で感知したのだろう、クレアが一人で出迎えに来る。
 良くわからんがクレアが認知した人間なら弾かれない防御魔法らしい。
 婆さんの時は誰かが外出してる間は防御魔法を解除して施錠魔法だけだったが、随分とセキリュティが上がった。
 敵味方識別機能付きとかもはやわけわからんが、駄姉やクレアなら可能らしい。


「クレア、みんなは?」

「姉さまたちはみんなに絵本を読んでとせがまれて動けないので私だけ来ました」

「そか、食材買ってきたから一緒に料理作っちゃうか。量も種類も多いけどクレアがいれば助かるしな」

「はい! 頑張りますね兄さま!」

「頼もしすぎる」


 託児所の台所に晩飯と弁当の食材を置いたら、残りは炊事場へ持っていく。
 指輪もとりあえず部屋に置き、さっさと台所に戻ろう。
 孤児院と託児所の名称がめんどくさいな。どっちのも台所はあるし。
 そのうち学校と職員棟になりそうな気もするがまだ気が早いな。増築もどんどんしていくし。

 そんな事を考えながらクレアの待つ台所に戻り、早速料理を開始する。
 ちゃんとピザ窯も用意された豪華キッチンだから料理がしやすくて助かる。


「兄さま、今晩のメニューはどうするんですか? 材料を見れば大体予想が付きますけれど」

「ハンバーグピザにポテサラとサラダに鶏のから揚げ。あとミコトがシチューを食べたいと言ったからこれは全力で作るぞ。柔らかい鶏もも肉買ってきたし」

「わかりました!」


 まずはミコトの為に鶏もも肉を柔らかく仕上げたいからシチューから取り掛かる。
 圧力鍋が無いんだよな、蒸気機関が実用化された頃に発明された物だし。知識というか設計は伝わってるはずだし探せばばあるのかな?
 まあ無いものねだりしても仕方がないので軽く具材を炒めた後に、小麦粉、バターを加えてさらに炒める。
 そうしたら牛乳、を注いで、生クリームを入れて弱火で煮込む。
 鶏肉や人参が柔らかくなるように煮込む時間は普段より長くする。


「シチューの仕込みはとりあえずこれで良いか。ピザの生地の発酵をやって、ジャガイモを大量に茹でて、唐揚げの下味か、流石に手間がかかるな」

「兄さま、ジャガイモは洗っておいたので茹でちゃいますね」

「というかクレアの指示に従った方が効率良いだろ、クレアが仕切ってくれよ」

「兄さまの料理が好きなんです。なので私は兄さまのお手伝いをしたいです」

「じゃあジャガイモ茹で始めたら唐揚げの鶏もも肉の下味付けて貰えるか? 俺はピザ生地の仕込みをやる」

「任せてください。生姜多めの兄さまの好きな味付けにしますね」

「衣は片栗粉多めの竜田揚げ風でな」

「兄さまの好みはわかってますから大丈夫ですよ」

「愛されてるなー俺」

「ふふふっ」


 イチャつきながら料理を作ってると、うるさいのが飛び込んで来た。


「お兄ちゃんごめん! ミコトちゃんと遊んでたらお兄ちゃんのこと忘れてた!」

「お兄様申し訳ありません! ミリィ様がなかなか離してくれなくて!」


 相変わらず嫁のストレートな言葉がちょっと傷つくし、駄妹は胸を触らせ過ぎだ。少しは抵抗しろ。


「エリナは得意なポテサラを頼むな。これはエリナが一番美味しく作れるし」

「うん! 任せて!」

「駄妹はリビングの隅の綿埃でも拾っておいて」

「酷いよお兄ちゃん!」

「流石に言い過ぎたな」

「掃除はしっかりあの子たちでやってるから綿埃なんか落ちてないよ!」

「そっちかよ。じゃあ駄妹はピザの具材のカットを頼む。それが終わったら正座な」

「はい! お兄様!」


 うむ。駄妹はなんかエリナとは違ったアホ可愛さがあるな。
 そういや死ねとかクズとか言ったのに全然めげずに俺に会いに来るほどだからな。
 とはいえ本気にしそうだからほどほどにしてやるか。


「兄さま、誰か来たようですよ? 敵意は無いようなので開錠しますね」

「敵意の有無までわかるんか。まあ俺が行ってくるわ。訪問販売だったら追い返すけど、悪意のない訪問販売ってめんどくさそうだな」


 あとはピザ生地を発酵させるだけだったのでちょうどいい。託児所の台所から玄関に行くと、アイリーンが焦った表情で立っている。


「閣下、急にお伺いして申し訳ありません」

「それは構わんが、どうした?」

「城に王都から先触れが来まして、急遽こちらにお知らせにあがりました」

「王都から先触れって、ちわっこ……シャルロッテが来るのか?」

「はい、それも多分、今日中には」

「マジか。で、お前が直接来たって訳か」

「はい。ギルドの件や孤児院のお話があるかと思いましたので」

「本当にすまんなアイリーン。現状駄姉を除くとお前しか頼れる人間がいないから来てもらって助かる」

「光栄です閣下。他の業務は引き継いできましたので問題ありません。王女殿下が来られるまではこちらで書類の事前準備をさせて頂いて宜しいでしょうか?」

「それは構わないんだが、執務机がある部屋が孤児院長室くらいしか無いんだよな、それか俺とエリナの部屋なんだが」

「それは申し訳ありませんので、食卓などでも構いません」

「わかった、じゃあこっちだ。託児所じゃなくて孤児院のリビングならガキんちょもいないし丁度良いと思う」

「お手数をおかけして申し訳ありません閣下」

「いやいや、助かってるのはこっちだ」


 恐縮してるアイリーンをリビングに案内する。
 筆記用具なんかは持参していたらしく、「このテーブルでいいか?」と聞くと、「ありがとうございます。十分です」と言ってすぐに執務を始める。


「じゃあ俺は託児所の台所で料理してるから何かあったら呼んでくれ」

「かしこまりました」


 台所に戻ると、エリナはポテトマッシャーで茹で終わったジャガイモを潰してるところだった。


「ちわっこが今日来るかもしれないってさ」

「えっ、お兄ちゃん、シャルちゃんが来るの?」

「うむ。先触れが城の方に来たってアイリーンが知らせに来た」

「先触れが来る日に到着というのも慌ただしいですねお兄様」

「まあちわっこのやることだから、『みんなに会いたくて早く来ちゃった!』とか言い出しそうだ」

「シャルさんなら言いそうですね兄さま」

「そうだ、クレア。それの件で部下のアイリーンが託児所の方のリビングに来て、ちわっこに見せる資料を急遽纏めてるんだ。悪いがお茶を淹れてやってくれないか? あと今後もちょいちょい来るだろうからIFFの設定をしておいてくれ」

「あいえふえふってなんですか兄さま」

「敵味方識別装置の略だ。アイリーンは味方だから防御魔法を突破できるようにしておいてくれ」

「相変わらず意味の分からないこと言うんですね兄さまは」


 さっきまであんなに仲良く料理していたのに、クレアは冷たい言葉を残してティーセットとお菓子を持ってリビングへ行く。
 ちょっと悲しい。
 でも敵味方識別装置ってすごく浪漫溢れる言葉なんだぞクレア。


「シチューも大分良さそうだな。煮崩れしやすいジャガイモとブロッコリーを入れて塩コショウで最終的な味付けをしちゃうか」

「私は煮崩れたジャガイモも好きだけどね! 味が染みてるし、シチューにとろみも出るし!」

「それもわかるんだがな、ホクホクと食いたいじゃないか。あ、でもミコトのこと考えたら煮崩れした方が良いのか。よしジャガイモだけ先に入れて少し煮込もう」

「お兄様はミコトちゃんに甘いですよね」

「可愛いからなー」

「お兄様わたくしはどうですか?」

「可愛いと思うぞ普通に。少しアホだけど綺麗だし、女騎士バージョンの時はかっこいいと思うぞ」

「はわわっ! ありがとうございますお兄様! すごく嬉しいです!」

「お兄ちゃん私は?」

「可愛いに決まってるだろ。俺のエリナなんだから」

「お兄ちゃん大好き!」

「お前らチョロ過ぎだけど、そういう所も可愛いぞ」


 ジャガイモをいつもの半分以下のサイズに切って巨大な鍋にぶち込んでいく。
 面取りしないでわざと煮崩れさせるスタイルだ。ブロッコリーは最後の最後だ。

 さて、先に軽くハンバーグに火を通したらピザを焼き始めるか。
 久しぶりの料理は楽しいな。
 あれ? ちわっこも食うのかな? まあ食うだろうな。ついでにアイリーンにも食わせてやるか。幸い量は大量にあるし。
しおりを挟む
感想 26

あなたにおすすめの小説

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが…… アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。 そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。  実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。  剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。  アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

【二章開始】『事務員はいらない』と実家からも騎士団からも追放された書記は『命名』で生み出した最強家族とのんびり暮らしたい

斑目 ごたく
ファンタジー
 「この騎士団に、事務員はいらない。ユーリ、お前はクビだ」リグリア王国最強の騎士団と呼ばれた黒葬騎士団。そこで自らのスキル「書記」を生かして事務仕事に勤しんでいたユーリは、そう言われ騎士団を追放される。  さらに彼は「四大貴族」と呼ばれるほどの名門貴族であった実家からも勘当されたのだった。  失意のまま乗合馬車に飛び乗ったユーリが辿り着いたのは、最果ての街キッパゲルラ。  彼はそこで自らのスキル「書記」を生かすことで、無自覚なまま成功を手にする。  そして彼のスキル「書記」には、新たな能力「命名」が目覚めていた。  彼はその能力「命名」で二人の獣耳美少女、「ネロ」と「プティ」を生み出す。  そして彼女達が見つけ出した伝説の聖剣「エクスカリバー」を「命名」したユーリはその三人の家族と共に賑やかに暮らしていく。    やがて事務員としての仕事欲しさから領主に雇われた彼は、大好きな事務仕事に全力に勤しんでいた。それがとんでもない騒動を巻き起こすとは知らずに。  これは事務仕事が大好きな余りそのチートスキルで無自覚に無双するユーリと、彼が生み出した最強の家族が世界を「書き換えて」いく物語。  火・木・土曜日20:10、定期更新中。  この作品は「小説家になろう」様にも投稿されています。

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜

霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!! 「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」 回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。 フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。 しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを…… 途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。 フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。 フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった…… これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である! (160話で完結予定) 元タイトル 「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない

一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。 クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。 さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。 両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。 ……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。 それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。 皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。 ※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

孤児院で育った俺、ある日目覚めたスキル、万物を見通す目と共に最強へと成りあがる

シア07
ファンタジー
主人公、ファクトは親の顔も知らない孤児だった。 そんな彼は孤児院で育って10年が経った頃、突如として能力が目覚める。 なんでも見通せるという万物を見通す目だった。 目で見れば材料や相手の能力がわかるというものだった。 これは、この――能力は一体……なんなんだぁぁぁぁぁぁぁ!? その能力に振り回されながらも孤児院が魔獣の到来によってなくなり、同じ孤児院育ちで幼馴染であるミクと共に旅に出ることにした。 魔法、スキルなんでもあるこの世界で今、孤児院で育った彼が個性豊かな仲間と共に最強へと成りあがる物語が今、幕を開ける。 ※他サイトでも連載しています。  大体21:30分ごろに更新してます。

14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はルーク 普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。 だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。 洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。 ------ この子のおかげで作家デビューできました ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが

処理中です...