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第五章 ヘタレ王国宰相
第五話 ちわっこ
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ガラガラと馬車が進んでいく。
シャルは俺への質問だけではなく、嫁たちにも色々質問しまくっている。
城の関係者以外と話せるのが珍しくてしょうがないんだろうな。
窓際に座る俺に、ベルナールが騎乗したまま近づき、声を掛けてくる。
「閣下、そろそろ門です。この馬車は王族の物では無い為、一度客車内を改める必要がありますのでご了承ください」
「流石に警備は厳重なんだな。わかった、ただ嫁たちの私物の検査は女性じゃないと拒否するからな」
「そこは問題ありません、王族以外の貴族の乗る馬車は一部特権を有する者以外は全て検査いたしますので、専門の女性担当官がいますから」
俺たちの馬車が他の商人っぽい荷車より優先されて門をくぐると、脇の方へ誘導されて馬車から降りるよう要請される。
「シャル降りるぞ」
「えっ、なんで?」
「さっき聞いてなかったのか? 王族以外の馬車は客車内の検査があるんだよ」
「わかった。ちょっとそのまま待っててお兄さん」
そういうとシャルは窓際に座る俺の膝の上に座りなおして、客車の窓から顔を出す。
「担当官を呼べ! わたしはラインブルク王女、シャルロッテ・エーデルシュタインだ!」
「こら」
ぽこんとシャルの頭にチョップを入れる。
「なあにお兄さん?」
頭をおさえながらにこにこ笑顔を見せながら俺に問いかける。
「そんな口の利き方は駄目だっていったろシャル」
「えへへ、ごめんねお兄さん」
めっちゃ嬉しそう。なにこいつマゾなの。
と内心突っ込んでいると、どたばたと何人か駆け寄ってくる。
「王女殿下! 大変申し訳ありません! 客車内の検査は必要ありませんのでこのままお通り下さい!」
「多分この人あとで上官にめっちゃ怒られるんだぞ。シャルが悪いんだからな、あまり我儘とか言うんじゃないぞ」
俺がこの人と指差した女性武官が、露骨にへこんだ表情をしている。
「うん。わかった」
「本当に解ってるんかお前」
「えへへ」
「ベルナール、一応ここの担当の人間に説明しておいてやってくれ、こんな事で処分とかされたらアホくさいだろ。シャルや俺の名前が使えれば使っても良いから。いいだろシャル?」
「はっ閣下」
「うん。ごめんねお姉さん」
「い、いえ、とんでもございません!」
なんとか怒られないようにしてやれという俺の言葉とシャルの謝罪にほっとした表情を浮かべる女性武官。
こんな事で減給やら降格したら可哀そうだしな。しっかり仕事してるのに。
「もー、シャルのせいで余計めんどくさい事に」
「ごめんねお兄さん」
「なんでそんなに嬉しそうなのお前」
ご機嫌なシャルは俺の膝の上からどかないまま、ベルナールに先導されて馬車は城へ向かう。
「シャルを城へ送ったら宿泊先を探さないとな」
「旦那様、既に部屋は取ってありますよ」
「流石駄姉、有能だな」
「ふふふっ、お褒め頂き恐縮ですわ」
「だあね? だあねってなあにお兄さん」
「『駄目な姉妹の姉の方』の略だぞ。シルは駄妹と呼んでる」
「だまい? おもしろいねお兄さん!」
「シャルちゃん、私はたまにアホ嫁って言われるよ!」
「私は委員長ですね。意味が解りませんけど」
「いいなー。お兄さんお兄さんわたしにも何か名前つけて!」
「えー、めんどくせー」
「つ、け、て!」
シャルが俺の膝の上に乗ったままこちらに顔を近づけて懇願してくる。
近い近い。
「わかった、わかったから。んー……、ひねくれものかと思ったけど言う事はちゃんと聞く良い子だしなお前。体も小さいし、身内には甘えて、知らん人間には吠えまくるからイメージ的にはチワワっぽいな。だからちわっこなお前。でもそのうち変わるかもしれんぞ。ポンコツから駄妹になった実例もあるし」
「ちわっこ! かわいい!」
「お兄ちゃん、ちわっこはなんか可愛くてずるい気がする!」
「アホ嫁が一番可愛いと思うぞ」
「えへへ!」
「相変わらずチョロい。しかし悪口のはずなんだけど、なんでそんなにあだ名を欲しがるんだろうな」
「愛があるからですわ旦那様」
「ないぞ」
「えー」
「駄姉ってそういうキャラだったのな」
「姉上はわりと適当な性格ですからね! 痛いです痛いです! すみません姉上!」
「あはは! お兄さんのお嫁さんたちっておもしろいね!」
「殿下、閣下、そろそろ王城門に到着します。そこからは馬車では通行できませんので下車して頂くことになります」
「わかった、シャルお前黙ってろよ」
「うん」
城塞都市であるラインブルクの中央にあるラインブルク城の門である王城門にたどりつく。
「じゃあホレ、シャルとはここでお別れだ」
「えー、やだ! このまま父上に会えば良いじゃない」
シャルが膝の上で駄々をこねてると、文官風の男がベルナールに耳打ちをする。
「閣下、王女殿下を救出した連絡がすでに陛下に伝わっており、是非にお会いしたいとの事です」
「めんどくせー、叙爵式は叙爵式でやるんだろ? ならいっぺんにやれよ」
「いやしかし閣下、陛下のお招きですよ?」
「んー駄姉、この服装のままでも会えるのか?」
「こちらの準備を待たず招くという事は一応非公式という扱いになるかと。褒賞などが出る場合は改めて叙爵式で下賜されると思いますから、本日はこのままでも構わないと存じます」
「じゃあ行くか。非公式ならエリナやクレアの練習と思えば良いだろうし。俺にとってもな」
「やったー! お兄さんとまだ一緒にいられるー!」
「はいはい、じゃあ行くか」
シャルの脇を抱えて膝から降ろし、まず俺から馬車を降り、「お兄さんお兄さん降ろして!」と言い出したシャルを抱きかかえて馬車から降ろすと、嫁と婚約者どもも抱きかかえて降ろせと我儘を言い出したので、全員その通りに降ろした。
マナーとかへったくれも無いのな。
一応ここ王都にある城の入口なんだが。
抱きかかえて降ろすのってエスコートにならんよな? なるの?
シャルは俺への質問だけではなく、嫁たちにも色々質問しまくっている。
城の関係者以外と話せるのが珍しくてしょうがないんだろうな。
窓際に座る俺に、ベルナールが騎乗したまま近づき、声を掛けてくる。
「閣下、そろそろ門です。この馬車は王族の物では無い為、一度客車内を改める必要がありますのでご了承ください」
「流石に警備は厳重なんだな。わかった、ただ嫁たちの私物の検査は女性じゃないと拒否するからな」
「そこは問題ありません、王族以外の貴族の乗る馬車は一部特権を有する者以外は全て検査いたしますので、専門の女性担当官がいますから」
俺たちの馬車が他の商人っぽい荷車より優先されて門をくぐると、脇の方へ誘導されて馬車から降りるよう要請される。
「シャル降りるぞ」
「えっ、なんで?」
「さっき聞いてなかったのか? 王族以外の馬車は客車内の検査があるんだよ」
「わかった。ちょっとそのまま待っててお兄さん」
そういうとシャルは窓際に座る俺の膝の上に座りなおして、客車の窓から顔を出す。
「担当官を呼べ! わたしはラインブルク王女、シャルロッテ・エーデルシュタインだ!」
「こら」
ぽこんとシャルの頭にチョップを入れる。
「なあにお兄さん?」
頭をおさえながらにこにこ笑顔を見せながら俺に問いかける。
「そんな口の利き方は駄目だっていったろシャル」
「えへへ、ごめんねお兄さん」
めっちゃ嬉しそう。なにこいつマゾなの。
と内心突っ込んでいると、どたばたと何人か駆け寄ってくる。
「王女殿下! 大変申し訳ありません! 客車内の検査は必要ありませんのでこのままお通り下さい!」
「多分この人あとで上官にめっちゃ怒られるんだぞ。シャルが悪いんだからな、あまり我儘とか言うんじゃないぞ」
俺がこの人と指差した女性武官が、露骨にへこんだ表情をしている。
「うん。わかった」
「本当に解ってるんかお前」
「えへへ」
「ベルナール、一応ここの担当の人間に説明しておいてやってくれ、こんな事で処分とかされたらアホくさいだろ。シャルや俺の名前が使えれば使っても良いから。いいだろシャル?」
「はっ閣下」
「うん。ごめんねお姉さん」
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こんな事で減給やら降格したら可哀そうだしな。しっかり仕事してるのに。
「もー、シャルのせいで余計めんどくさい事に」
「ごめんねお兄さん」
「なんでそんなに嬉しそうなのお前」
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「シャルを城へ送ったら宿泊先を探さないとな」
「旦那様、既に部屋は取ってありますよ」
「流石駄姉、有能だな」
「ふふふっ、お褒め頂き恐縮ですわ」
「だあね? だあねってなあにお兄さん」
「『駄目な姉妹の姉の方』の略だぞ。シルは駄妹と呼んでる」
「だまい? おもしろいねお兄さん!」
「シャルちゃん、私はたまにアホ嫁って言われるよ!」
「私は委員長ですね。意味が解りませんけど」
「いいなー。お兄さんお兄さんわたしにも何か名前つけて!」
「えー、めんどくせー」
「つ、け、て!」
シャルが俺の膝の上に乗ったままこちらに顔を近づけて懇願してくる。
近い近い。
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「ちわっこ! かわいい!」
「お兄ちゃん、ちわっこはなんか可愛くてずるい気がする!」
「アホ嫁が一番可愛いと思うぞ」
「えへへ!」
「相変わらずチョロい。しかし悪口のはずなんだけど、なんでそんなにあだ名を欲しがるんだろうな」
「愛があるからですわ旦那様」
「ないぞ」
「えー」
「駄姉ってそういうキャラだったのな」
「姉上はわりと適当な性格ですからね! 痛いです痛いです! すみません姉上!」
「あはは! お兄さんのお嫁さんたちっておもしろいね!」
「殿下、閣下、そろそろ王城門に到着します。そこからは馬車では通行できませんので下車して頂くことになります」
「わかった、シャルお前黙ってろよ」
「うん」
城塞都市であるラインブルクの中央にあるラインブルク城の門である王城門にたどりつく。
「じゃあホレ、シャルとはここでお別れだ」
「えー、やだ! このまま父上に会えば良いじゃない」
シャルが膝の上で駄々をこねてると、文官風の男がベルナールに耳打ちをする。
「閣下、王女殿下を救出した連絡がすでに陛下に伝わっており、是非にお会いしたいとの事です」
「めんどくせー、叙爵式は叙爵式でやるんだろ? ならいっぺんにやれよ」
「いやしかし閣下、陛下のお招きですよ?」
「んー駄姉、この服装のままでも会えるのか?」
「こちらの準備を待たず招くという事は一応非公式という扱いになるかと。褒賞などが出る場合は改めて叙爵式で下賜されると思いますから、本日はこのままでも構わないと存じます」
「じゃあ行くか。非公式ならエリナやクレアの練習と思えば良いだろうし。俺にとってもな」
「やったー! お兄さんとまだ一緒にいられるー!」
「はいはい、じゃあ行くか」
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マナーとかへったくれも無いのな。
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