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第四章 ヘタレ領主

第七話 教育機関

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第七話 教育機関

「お風呂でクリス姉さまとシル姉さまの胸を見ると、やっぱり私もひんにゅーだと思うんですけど姉さまはどう思いますか?」

「どうなのかなー、今日のお風呂の時にお姉ちゃんたちに聞いてみようよクレア。私はお兄ちゃん好みのサイズだけどね!」

「いいなー姉さま」


 ジャンピング土下座までして話した駄姉妹との婚約の話は普通に受け入れられて、今は胸のサイズの話になっている。
 クレアが一生懸命自分の胸を触ってるが、お前まだ十歳だろ……。

 託児所内には大浴場を作った。
 孤児院の風呂も大人四人が入れるほどの広さだが、いっぺんにガキんちょどもを入浴させるには手狭になったからだ。
 これ幸いと大人が十人以上余裕を持ってはいれる大浴場ともいえるサイズの風呂を男女別で作った。
 幼児も安心して入浴できるように浅い湯船も併設されている至れり尽くせりの設計だ。
 どうせ水も沸かすのも当面は魔法でやるし、水もその内魔石を使った自動揚水ポンプを設置する予定だけどな。


「もう少し人数が増えたらどらいやーの魔道具が欲しいかもね」

「ドライヤー魔法は俺とエリナと駄姉しか使えないからな」

「わたしは白魔法しか使えないですしね」

「そういやクレアは施錠魔法と防御魔法は使えるのか?」

「使えますよ兄さま」

「今後は婆さんに変わってお前がやってみてくれないか?」

「それはかまいませんけれど?」

「エリナもそうだけど、最近駄姉が無理やり施錠魔法を解除するだろ? 流石にどうかと思うんだよ。お前の魔力なら駄姉の魔力に対抗できるかもしれん」

「クリス姉さまには悪気が無いのはわかりますけどね。男の子たちはクリス姉さまとシル姉さまを見ると照れちゃいますから、たしかに急に入ってこられるとびっくりしちゃうかもしれませんね」

「ガキの癖にませてるんだよなアイツら。駄姉妹が笑顔を見せるだけで顔真っ赤にしてるんだぞ。その癖駄姉妹が何か仕事をしてると、手伝うーとか言ってアピールしてるし。なんなんだ、見ててこっちが恥ずかしくなるぞ。俺のカルルもすっかり懐かれちゃったし」

「良いじゃないですか兄さま。少しでも良い所を見せようと勉強とか頑張ってますしね。クリス姉さまの算数や国語などの授業とシル姉さまの運動の授業はみんな凄いやる気ですし」

「駄姉妹は先生としても優秀なんだよな。ってそうか、学校か」

「がっこうってお兄ちゃんが前に言ってた町の子どもたちを集めて勉強するやつ?」

「そう。以前婆さんに聞いたが、学校という概念はとっくにこの世界にもあるんだけど、支配者層にとっては庶民に知恵をつけさせたくないっていう理由でずっと見送られてきてる制度なんだわ」

「すっかり忘れてましたけど兄さまは領主さまになったんですよね?」

「建前上だし、まだ正式な許可が出てないけどな」

「だったらお兄ちゃんががっこうを作ればいいじゃない!」

「たしかに託児所の規模を大きくしただけならなんとかなりそうだしな。豪商の子息なんかも入れれば寄付金という名目で授業料を取れるし、教師陣は駄姉妹に加えて領地の文官をあてればいいだろうし。高度な教育をすれば将来の選択肢も広がるし、領地の発展にもつながるんじゃないのか?」

「その辺りはクリス姉さまたちと相談ですね。魔法なんかも教えれば将来どういう職に就きたいかとか考えやすいですし」

「そうだな、魔法適正有り無しや貴族でクラス分けも良いかもしれない。でも小さいうちにそういう特別扱いとか優劣で差をつけるとか考えると難しいな」

「私はお兄ちゃんに任せる!」

「いいぞアホ嫁、その潔さは称賛に値する」

「えへへ!」

「誉めてないんだけどな」

「兄さま私も頑張りますね!」

「クレアはマジで教師向きだからな。期待してる」

「てへへ」

「お前たちは実際ガキんちょなんかに絵本を読み聞かせたり簡単な計算なんかを教えたりしてるけど、何か思ったこととかあるか?」

「そうだねー、前は内職とか色々やることがたくさんあったけど、今はそれも必要無くなったし出来ればもう少しいろんなことをみんなに教えてあげたいかなー」

「そうですね、私も姉さまと同じです。計算が得意な子とかいてもなかなかそれ以上教えてあげられるような教材も講師もいませんから」

「そっか、得意分野か。クレアみたいに計算に才能があれば早いうちに教え込んで良い職場に就職って事もできるしな」

「あとアラン達みたいに職人さんを目指したいって子もいるしね!」

「勉強以外でもそうだよな。何が得意かってのも本人がわからんわけだし。音楽とかまで行くと楽器も必要だからなかなか難しいが、規模が大きくなれば音楽なんかの芸術方面にも手を広げる必要はあるな」

「音楽ってすごいね、宮廷とかそういうイメージしか無いよ!」

「お絵かきも蝋板や粘土にする程度ですしね、紙を使うのは高すぎですし」

「ああ追々だな追々。ただこういう意見を出していくのは無駄じゃないから、お前たちも何か思いついたらメモを取るなりして書き留めておいてくれ」

「お兄ちゃんに貰っためもちょうって勿体なくて使ってなかったけど、この為なら使えそう!」

「クーゲルシュライバーもついてるからな。クレアにも一冊渡すから、気づいたら何でも書き込んでおいてくれ」


 五冊パックで買ったA4ノートがまだ手付かずであったよなー、と久々にナイロン製の鞄を開けて、未使用のA4ノートとボールペン、いやクーゲルシュライバーを渡す。
 エリナにもついでにノートと筆記用具一式を渡す。


「お兄ちゃんありがとう!」

「兄さま! ありがとうございます! 一生大事にしますね!」


 すっごい笑顔で受け取ったクレア。残念だがクレア、百均で買った五本入って百円のボールペンだからインク使い終わるまでに書けなくなると思うぞ。


「いや、たくさん書いてどんどん消費してくれ。ページがなくなったり、クーゲルシュライバーが使えなくなってもまだ予備はあるからな。エリナに渡したメモ帳は書ける量は少ないし、付属してるペンもすぐインクがなくなるから、こっちでメモしてくれ」

「はい! 兄さま!」

「無くなる前にノートやら万年筆を買っておくか。あ、鉛筆でも良いのか」

「うーん、これ綺麗だし勿体ないからお店で紙を買ってこようかなー」

「ですよね姉さま。これ兄さまからのプレゼントですし」

「まーその気持ちもわからんでもないが……。じゃあ買ってきちゃうか。婆さんや駄姉妹、一号とかにも渡して色々意見を出してもらおう」

「「はーい!」」


 学校か、しばらくは託児所の規模を大きくしていって、その内に教育部門を強化して、豪商や富豪を高度教育名目で受け入れって感じかな。
 それと並行して得意分野を伸ばす学科分けや職業訓練コースみたいなのも必要だろうし。
 ま、駄姉と相談だな。
 駄妹はその辺役に立たないし。
 いや、騎士コースとか兵士コースみたいなのには使えるのか?
 できればそういう危険な職業には就いて欲しくは無いが、適正とかあるしなー。
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