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びっくりして目を見開けば、カークの瞳と視線が合って、その瞬間、唇から魔力が流れ込んできた。
それは風が吹き抜けるような爽やかさで、体の隅々へと向かう。
そして、一番遠い足先に届いたと思ったら、唇が離れた。
「……どうだ?」
カークはしっかりと私を支えながら、そう聞いてきた。
「どうって……」
言いながら足に力を込めると、さっきとは違ってちゃんと力が入った。
今度は一人でもちゃんと立てそうだ。
具合は悪くない。いつかみたいに魔力が無いだるさもない。
「……大丈夫みたい。でも何で」
「さっきも言っただろう。キーラの魔力が体内であちこち滞っているって」
「でも、私どこも何ともないよ……もしかしてカークが何かしてるんじゃないの? ずっとくっついてたし」
それに、カークには前科がある。
「酷いな、もうそんなことしないよ。今だってキーラがキスが嫌だって言うから、ゆっくり調整していたのに」
「だったら最初からそう言えばいいじゃない」
「でも、私の言うことは信じないのだろう?」
そうだけど……結局キスしたじゃない。
と言いかけてやめた。
カークがやけに嬉しそうだからだ。
唇を噛んで睨みつけると、カークは肩をすくめて私を持ち上げ、元の通りにソファーに座った。
「キスは緊急処置だ。こうしていれば私の魔力の流れで、滞りかけた場所を流せるから、もうキスしなくていい」
いや、これも意外と削られる。
「……なんか、騙されてる気分」
「もう一度言うけど、私は本当に何もしていない。きっとその姿のせいだろう」
「あ」
「……何か心当たりがある?」
「う、うん」
私はエマさんから聞いたことを教えた。
「そうか、それだな。あぁ。ならルキッシュに入る時も大変だったろう」
「うん。結構大変だった。フェイが助けてくれたから大丈夫だったけど」
「フェイ?」
今度はフェイのことを話す。
「そうか……ルキッシュではフェイが私の役目を果たしていたんだな」
「どういうこと?」
「キーラの魔力は膨大だ。けれど何故か循環していない。だから外的刺激を受けると強く反応する。普通は他の部分がそれを補うが、キーラの場合それが出来ない。だから動けなくなったり、具合が悪くなったりするんだ。ルキッシュに入った時は、フェイが私と同じことをキーラにしてくれていたんだ」
「ふうん」
聞いてもちっともわからないから、曖昧に頷く。
カークもそれが分かったのか困ったように笑って、どうしてか私の髪のリボンをほどいた。
「ちょっと、せっかくエマさんが結ってくれたのにっ!」
三つ編みを織り込んで、きっちりとまとめられていた髪がさらさらと流れる。
真っ白な流れはまるでそうめんみたい。
「とても綺麗だ」
私の感想を知らないカークは、そういって髪のひと房を引き寄せて、なんとキスした。
「ひぃっ」
思わずそんな悲鳴を上げて、カークの手から髪を取り戻す。
「……キーラ」
「……エマさん、この姿が元に戻るまで四・五日かかるって言ってた。その間、まさかずっとこうして、ないよね」
悲壮な顔をされたから、誤魔化すためにそんなことを言うと、カークはまた嬉しそうな顔になる。
「そっか、四・五日かかるのか、うん、大丈夫。ちゃんと側にいるから」
「そうじゃなく」
「ん? あぁ、こうしてればもうキスしなくていい。それに上手くいけば四・五日かからない」
「そうじゃなく」
「あぁ、キーラはこうしているのが嫌なのか」
そうそう。
「離れてもいいけど、そうなるとまたキスすることになるけど」
「だから、そうじゃなく、エマさんは寝てれば治るって」
「……でもキーラ、今眠くないだろう」
「そ、そうだけど……」
確かに、何故か眠くないんだよね。
「夜までには少し改善するはずだ。そうなったらまた考えよう。それより、さっきの話の続きだけど」
結局そんな風に丸めこまれて、私はカークの膝の上でルキッシュでの生活を語ることになった。
それでも夜ご飯までは流石に長くて、知らない間に寝落ちしてしまった。
くやしい。
※※※ ※※※ ※※※
いつもお読み下さりありがとうございます。
昨日投稿の329部分、
読まなくても特に影響はありませんが、
少し文章を足してあります。
ご連絡まで。
不定期投稿ですが
これからもよろしくお願いします。
それは風が吹き抜けるような爽やかさで、体の隅々へと向かう。
そして、一番遠い足先に届いたと思ったら、唇が離れた。
「……どうだ?」
カークはしっかりと私を支えながら、そう聞いてきた。
「どうって……」
言いながら足に力を込めると、さっきとは違ってちゃんと力が入った。
今度は一人でもちゃんと立てそうだ。
具合は悪くない。いつかみたいに魔力が無いだるさもない。
「……大丈夫みたい。でも何で」
「さっきも言っただろう。キーラの魔力が体内であちこち滞っているって」
「でも、私どこも何ともないよ……もしかしてカークが何かしてるんじゃないの? ずっとくっついてたし」
それに、カークには前科がある。
「酷いな、もうそんなことしないよ。今だってキーラがキスが嫌だって言うから、ゆっくり調整していたのに」
「だったら最初からそう言えばいいじゃない」
「でも、私の言うことは信じないのだろう?」
そうだけど……結局キスしたじゃない。
と言いかけてやめた。
カークがやけに嬉しそうだからだ。
唇を噛んで睨みつけると、カークは肩をすくめて私を持ち上げ、元の通りにソファーに座った。
「キスは緊急処置だ。こうしていれば私の魔力の流れで、滞りかけた場所を流せるから、もうキスしなくていい」
いや、これも意外と削られる。
「……なんか、騙されてる気分」
「もう一度言うけど、私は本当に何もしていない。きっとその姿のせいだろう」
「あ」
「……何か心当たりがある?」
「う、うん」
私はエマさんから聞いたことを教えた。
「そうか、それだな。あぁ。ならルキッシュに入る時も大変だったろう」
「うん。結構大変だった。フェイが助けてくれたから大丈夫だったけど」
「フェイ?」
今度はフェイのことを話す。
「そうか……ルキッシュではフェイが私の役目を果たしていたんだな」
「どういうこと?」
「キーラの魔力は膨大だ。けれど何故か循環していない。だから外的刺激を受けると強く反応する。普通は他の部分がそれを補うが、キーラの場合それが出来ない。だから動けなくなったり、具合が悪くなったりするんだ。ルキッシュに入った時は、フェイが私と同じことをキーラにしてくれていたんだ」
「ふうん」
聞いてもちっともわからないから、曖昧に頷く。
カークもそれが分かったのか困ったように笑って、どうしてか私の髪のリボンをほどいた。
「ちょっと、せっかくエマさんが結ってくれたのにっ!」
三つ編みを織り込んで、きっちりとまとめられていた髪がさらさらと流れる。
真っ白な流れはまるでそうめんみたい。
「とても綺麗だ」
私の感想を知らないカークは、そういって髪のひと房を引き寄せて、なんとキスした。
「ひぃっ」
思わずそんな悲鳴を上げて、カークの手から髪を取り戻す。
「……キーラ」
「……エマさん、この姿が元に戻るまで四・五日かかるって言ってた。その間、まさかずっとこうして、ないよね」
悲壮な顔をされたから、誤魔化すためにそんなことを言うと、カークはまた嬉しそうな顔になる。
「そっか、四・五日かかるのか、うん、大丈夫。ちゃんと側にいるから」
「そうじゃなく」
「ん? あぁ、こうしてればもうキスしなくていい。それに上手くいけば四・五日かからない」
「そうじゃなく」
「あぁ、キーラはこうしているのが嫌なのか」
そうそう。
「離れてもいいけど、そうなるとまたキスすることになるけど」
「だから、そうじゃなく、エマさんは寝てれば治るって」
「……でもキーラ、今眠くないだろう」
「そ、そうだけど……」
確かに、何故か眠くないんだよね。
「夜までには少し改善するはずだ。そうなったらまた考えよう。それより、さっきの話の続きだけど」
結局そんな風に丸めこまれて、私はカークの膝の上でルキッシュでの生活を語ることになった。
それでも夜ご飯までは流石に長くて、知らない間に寝落ちしてしまった。
くやしい。
※※※ ※※※ ※※※
いつもお読み下さりありがとうございます。
昨日投稿の329部分、
読まなくても特に影響はありませんが、
少し文章を足してあります。
ご連絡まで。
不定期投稿ですが
これからもよろしくお願いします。
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