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しおりを挟むお父さんはあの後、あんなにお菓子を食べたのに、ちゃんとお昼御飯も食べて戻って行った。
後でお菓子をまた持ってくるって言ったけど、エマさんがお昼ご飯と一緒にアーサー側のお菓子を置いていったので断わった。だって、テーブルの上がお菓子でいっぱいなんだもん。
エマさんもいなくなったし、どう考えても私一人で食べきれる量じゃない。
とりあえず、お菓子を食べてみたいものとそうでないものによりわけながら、お父さんに駄目押しされたことを考える。
そう、フォルナトルに帰るべきか、って話だ。
私はため息をつきながら、お菓子の間に置いたブレスレットを見た。
イラつく事に、チカチカと光ってる。カークはいつでも受信可能なんだろう。
うんざりして、またため息をひとつ吐いたところで、窓から音がした。
『キーラ』
「フェイ」
『お菓子の匂いがしたから来ちゃった。入ってもいい?』
って言いながら、もう入って子供の姿に変わって、テーブルのわきに座ってる。早い。
「わぁ、みたことないお菓子もある!!」
止める間もなくお菓子が口に消えていく。
フェイのお菓子消費量は十だなぁ、なんてその姿を見ていると、三分の一ほど食べた所で手を止めた。
「キーラ、あの壁際のって、ぴいが入ってたやつだよね」
「うん、そうだよ」
フェイの視線を追って瓶を見る。白い鳥になってお腹いっぱいらしいピーちゃんは、近付いて観察すれば胸のあたりが上下してるからちゃんと生きていて、でも未だに身じろぎもせず眠っている。
「ぴい、じゃなくなっちゃった?」
「どうだろう。本人は自分をピーちゃんだって思ってるみたいだよ」
「ふーん……でも、なんかぴいと違うよね」
「うん、見た目全然違うもんね」
フェイは首を傾げて、またお菓子を食べ出した。
そして、さらに三分の一食べたところで、また手を止める。
「そう言えば、キーラはフォルナトルに帰っちゃうの?」
そう言えばって、どこからのそう言えばなのか分からないけど、急に聞かれて目を瞠る。
何でそれをフェイが……って感じだ。
「なんかね、キーラはきっとフォルナトルに帰るよ、って……聞こえたんだ」
私が戸惑っていると、フェイは付け加えるように続けた。
「それって、王様を決める時みたいに聞こえたって事?」
「うん」
「……そっか」
「帰っちゃうの? キーラ」
「うーん、まだ分からない。迷ってるところ……フェイは帰った方がいいと思う?」
「僕は、分からないよ。でもキーラがいなくなったら寂しい、と思う」
フェイはそう言って、またお菓子を食べ出した。
今度はもう手を休めずに、せっかく食べようと思って分けておいたお菓子も全部、最後まで食べきって、
「キーラ、僕に何か出来ることある? お菓子のお礼」
なんて言う。
「そうだなぁ。あ、そうだ、フェイ、犬にもどって」
「え、ここで?」
「うん。ここで。私もふもふしたい」
「も、もふもふ?」
「うん。もふもふ」
不思議そうにもふもふとフェイは繰り返し、それでもすぐに犬の姿になってくれた。
本当はピーちゃんの匂いがいいけど、ピーちゃんに触るのはまだ怖いから。
『えーっと、それで、僕、どうすればいいの?』
「そのまま座って」
『座ってって……キ、キーラッ!』
フェイがお座りの姿勢になったところで、そのお腹に飛び込む。
――――あー、気持ちいい。極楽極楽。
お菓子の分も、満喫しようっと。
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