このやってられない世界で

みなせ

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 部屋に戻ると、エマさんが待っていた。
 フル装備の武装解除は人の手が必要だし、洋服の扱いも分からないので助かったけど、流石にフル装備はやりすぎでしたとか言いながら、替えの服に反省はみえなかった。

 ちなみにエマさんが用意する服を私的にランク付けすると、フル装備がレベル7、パジャマがレベル1として、新しい服はゴロゴロするとしわになりそうなちょっと動きにくいロング丈のワンピースで、レベルは5だ。
 おしとやかにしていないといけない感じが、ちょっと辛い。

「エマさん。もう少し楽な服にしてほしい」
「駄目です。今日も王太子殿下とお話しするんですよね。是非綺麗な姿をおみせください」

 にっこりと笑うエマさん、やっぱりちっとも反省してない。
 毎日服を用意してもらって、その上着替えを手伝ってもらっている身分で、カークには絶対見せないから大丈夫なんて言えないから、仕方なく沈黙する。

「……姫様、何かありましたか?」

 ろくに返事をしなかったせいか、エマさんがそんなことを言った。

「……なにもないよ……どうして?」
「いつもならラーシュ様は必ずここまで送ってくるのに姫様お一人でしたから、また喧嘩でもなさったのかと」

 エマさんの言葉に、ちょっと動揺してしまう。

「喧嘩じゃない……ただ、お父さんのことが良く分からなくなったから、途中で別れて来た」
「良く分からないって、ラーシュ様が、ですか?」
「うん。だって意味不明なことばっかり言うんだよ」

 顔をしかめてそう言えば、エマさんは不思議そうな顔をした。

「姫様、ラーシュ様はどんなことをおっしゃったんですか?」
「……私にここにいていい、いて欲しいって言うくせに、フォルナトルに帰ればいいような事も言うんだよ……私が後悔するとか、恨まれるのは嫌だとか」

 ぼそぼそとそうつぶやいてから、口に出したことを後悔した。
 エマさんに言ったってしょうがないことなのに。

「ラーシュ様は姫様が心配なんですよ」

 尻すぼみになった言葉に、エマさんはしばらく無言で、それから呆れたようにそう言った。

「心配? 何が? 私がフォルナトルに帰らないことが心配なの?」

 もう帰らないとは言ってない。
 戦争が―――ゲームが終わってから帰りたいって思ってる。

「はい、多分」
「多分って、何でそれが後悔とか恨まれるとかなるの?」
「それは姫様のお母様がフォルナトル人だからです」

 え、何、それ。
 もっと意味分かんないよ。

「姫様のお母様がデルフィーかブルザルの出身であれば、そこまで心配しなくて良かったのですが……」
「アーサーもそんなこと言ってた。同族じゃなかったら、デルフィーかブルザルの人を選んで欲しかったって」
「そうでしょうね」

 私もだけど、エマさんも眉間にしわがよる。

「姫様、これは結構重要な話なんです。フォルナトル人の寿命はトクタムの人たちよりは長いですが、他の三か国と比べればとても短いんです」
「へ? じゅ、じゅみょう?」
「えぇ、寿命です。姫様はフォルナトルとルキッシュのハーフ。これから二つの血が姫様にどんな影響が出るのか分かりませんから、心配なんでしょう」

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