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アーサーのところへ行こうと部屋を出ると、エマさんが慌てた様子で渡り廊下をかけてきた。
「エマ、そんなに急いでどうしたんだ?」
「ラーシュ様! ゼストたちが探していました。もうお時間だと」
「時間? あぁ、そうだった……キーラ、ごめん。アーサーのことはまた後だ」
何か忘れていたらしいお父さんは、そう肩をすくめた。
「それはいいけど……」
「それで、キーラ、これからフォルナトル王と話し合いをすることになっているけど、一緒に聞いてみる?」
「えっ」
それって、忘れるようなことじゃないよね。
急に言われても、ちょっと覚悟が……でも……。
お父さんは私をじっと見つめて、返事を待っている。
「……行く」
「うん、分かった。じゃあ、行こうか」
少し考えて頷くと、お父さんは私を抱き上げて、魔法陣の部屋まで走った。
そこから飛んだのは同じような小部屋で、一つだけの扉を抜けると、牢獄へ続く階段と同じような登りの階段があった。
牢獄と違って、ここは魔法を使える上、普通より力が強くなるのだそうだ。
階段はお父さんが足をかけると音も無く動きだした。
―――――まるでエスカレーターみたい。
結構な速度で動く階段を、お父さんは待ちきれないのか走り上り始めた。
どこまでもまっすぐな階段は、かなり長そうだ。
私は抱きあげられているからいいけれど、上るだけでもかなりの体力を使いそう。お父さんは凄い勢いでその階段を進み、あっという間に上り切る。
扉も無く出た場所は、天井がガラス張りの広い空間だった。
牢獄と同じように壁は岩肌のままで床には絨毯敷き詰められ、中央には向かい合わせに四つの立派な椅子が置かれている。
お父さんはその椅子の一つに私を座らせ、自分はその横に立った。
「お父さん、ここは?」
「……秘密の部屋だよ。魔法の力が強まる場所なんだ。これからフォルナトルを呼ぶからね……キーラはちゃんと座っているんだよ?」
「……うん」
注意するように言われて、とりあえず頷いた。
「『解放』」
私が座り直すのを見届けて、お父さんがそう言うと、天井からの光が遮られ部屋が一気に暗くなった。
ふわりと体が浮くような感じがして、ひじかけにしがみついてしまう。
「大丈夫だよ。キーラ」
そう言われても、何が起こるか分からないんだから、心配だよ。
浮遊感がなくなり、光が戻ってくると、真向かいの椅子に誰かが座っていた。
「陛下?」
「やぁ、ひさしぶりだね」
挨拶より先に思わず呼びかけてしまった私に、穏やかに返事をしたのはフォルナトル王、その人だった。
―――――本物? 映像?
「……ルキッシュ王も無事目覚めたようだし、キーラ嬢も元気そうだね」
私の驚きをよそに、陛下はそうほほ笑んだ。
お父さんの前だからか、少し硬い話し方な気がする。
「はい、おかげさまで……あの、フォルナトルは大丈夫ですか?」
「トクタムからの攻撃のことなら、問題ないよ。ルキッシュ王から聞いていると思うけど、よくあることだからね」
それが良く分からないけれど、陛下が言うならそうなんだろう。
「どうしてもキーラと話をしたかったから、今日は来てくれて嬉しいよ」
「……私も聞きたいことがありましたから……」
「そうみたいだね。先にそちらの話をしようか?」
こちらの話……と言っても、どこまでがこっちなのか。聞きたいことはたくさんある筈なんだけど。
私は隣に立つお父さんを見上げた。
お父さんはただ頷く。
うーん、何から聞いたらいいんだろう。
まずは……あ、そうだ。
「陛下、私、フォルナトルに帰らなくてもいいですか?」
「ん?」
「え?」
一生懸命考えて口にした疑問に、お父さんも陛下も、同じような反応をした。
――――作者より一言―――――
ここまで読んでくださりありがとうございます。
明日の更新はお休みします。
次回更新は15日になります。
次回もよろしくお願いします。
「エマ、そんなに急いでどうしたんだ?」
「ラーシュ様! ゼストたちが探していました。もうお時間だと」
「時間? あぁ、そうだった……キーラ、ごめん。アーサーのことはまた後だ」
何か忘れていたらしいお父さんは、そう肩をすくめた。
「それはいいけど……」
「それで、キーラ、これからフォルナトル王と話し合いをすることになっているけど、一緒に聞いてみる?」
「えっ」
それって、忘れるようなことじゃないよね。
急に言われても、ちょっと覚悟が……でも……。
お父さんは私をじっと見つめて、返事を待っている。
「……行く」
「うん、分かった。じゃあ、行こうか」
少し考えて頷くと、お父さんは私を抱き上げて、魔法陣の部屋まで走った。
そこから飛んだのは同じような小部屋で、一つだけの扉を抜けると、牢獄へ続く階段と同じような登りの階段があった。
牢獄と違って、ここは魔法を使える上、普通より力が強くなるのだそうだ。
階段はお父さんが足をかけると音も無く動きだした。
―――――まるでエスカレーターみたい。
結構な速度で動く階段を、お父さんは待ちきれないのか走り上り始めた。
どこまでもまっすぐな階段は、かなり長そうだ。
私は抱きあげられているからいいけれど、上るだけでもかなりの体力を使いそう。お父さんは凄い勢いでその階段を進み、あっという間に上り切る。
扉も無く出た場所は、天井がガラス張りの広い空間だった。
牢獄と同じように壁は岩肌のままで床には絨毯敷き詰められ、中央には向かい合わせに四つの立派な椅子が置かれている。
お父さんはその椅子の一つに私を座らせ、自分はその横に立った。
「お父さん、ここは?」
「……秘密の部屋だよ。魔法の力が強まる場所なんだ。これからフォルナトルを呼ぶからね……キーラはちゃんと座っているんだよ?」
「……うん」
注意するように言われて、とりあえず頷いた。
「『解放』」
私が座り直すのを見届けて、お父さんがそう言うと、天井からの光が遮られ部屋が一気に暗くなった。
ふわりと体が浮くような感じがして、ひじかけにしがみついてしまう。
「大丈夫だよ。キーラ」
そう言われても、何が起こるか分からないんだから、心配だよ。
浮遊感がなくなり、光が戻ってくると、真向かいの椅子に誰かが座っていた。
「陛下?」
「やぁ、ひさしぶりだね」
挨拶より先に思わず呼びかけてしまった私に、穏やかに返事をしたのはフォルナトル王、その人だった。
―――――本物? 映像?
「……ルキッシュ王も無事目覚めたようだし、キーラ嬢も元気そうだね」
私の驚きをよそに、陛下はそうほほ笑んだ。
お父さんの前だからか、少し硬い話し方な気がする。
「はい、おかげさまで……あの、フォルナトルは大丈夫ですか?」
「トクタムからの攻撃のことなら、問題ないよ。ルキッシュ王から聞いていると思うけど、よくあることだからね」
それが良く分からないけれど、陛下が言うならそうなんだろう。
「どうしてもキーラと話をしたかったから、今日は来てくれて嬉しいよ」
「……私も聞きたいことがありましたから……」
「そうみたいだね。先にそちらの話をしようか?」
こちらの話……と言っても、どこまでがこっちなのか。聞きたいことはたくさんある筈なんだけど。
私は隣に立つお父さんを見上げた。
お父さんはただ頷く。
うーん、何から聞いたらいいんだろう。
まずは……あ、そうだ。
「陛下、私、フォルナトルに帰らなくてもいいですか?」
「ん?」
「え?」
一生懸命考えて口にした疑問に、お父さんも陛下も、同じような反応をした。
――――作者より一言―――――
ここまで読んでくださりありがとうございます。
明日の更新はお休みします。
次回更新は15日になります。
次回もよろしくお願いします。
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