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「……答えになってない」
私は、そう唇を尖らせた。お父さんは少し笑った。
「特別は言いすぎだったかもね。でも、彼らの言う今までに、キーラのような子はいなかったから……」
「いなかった?」
お父さんが言うには、ルキッシュの人が他国に行くこと自体が少なく、他国の人と結婚なんてもっと少ないらしい。
ましてや王家の者ともなるとないと言ってもいいくらいだそうだ。
その上、他国の人と結婚して、その人との間に子供が出来ると、余程の理由がない限り帰ってこない。
まれに帰ってきても、子供がルキッシュに入れないことも多いので、ルキッシュへ戻る人はさらに少なくなる。
「それに、この国は初代国王が真っ白だったから、白いことが何より重要視される。ハーフと呼ばれる子どもは、せっかく順応出来ても元の色が強く出てしまうから、ルキッシュでは生きにくく、結局国を出て行ってしまうんだ。だから私は、ハーフの子がルキッシュに入り、順応出来ることこそが特別だと思うんだ」
「特別……」
「今まで候補者に選ばれたのは、王家の血を引く生粋のルキッシュ人だったけど、それはそうじゃない者がいなかったからだ。ルキッシュはもう人が少ない。これからは王家にも他国の血が入ってくると思う。キーラはその可能性だよ。まぁ、キーラのように元の色が残らず、真っ白になるのは珍しいけれどね」
お父さんの言葉にふとアーサーを思い浮かべた。
他のハーフの人を見たことがないから分からないけれど、色が残ると言うならアーサーはこの国の人変わらない。
白に近いグレーの髪だった。
「……じゃあ、アーサーも特別なの?」
「そうだね、そう言う意味では、アーサーも特別だ」
「私が凄く白いのは、オンリンナだから?」
「……私はそう思う」
「どうしてか、分かる?」
「それは……」
お父さんは言いかけて、眉を寄せた。
そしてためて、ためて、言う。
「……分からない」
辛そうに歪められた顔に、こっちも苦しくなる。
「……言えないの?」
「いや、本当に分からないんだよ」
強く首を振って、肩を落とした。
「お父さん、オンリンナって一体……」
なんなの――――――と聞こうとして、強いノックに遮られた。
「エマがきたようだ」
お父さんがそう言って、扉を開けた。
扉の前にはエマさんが息を切らして立っていて、私を見つけると凄い勢いで近付いてきた。
「姫様、また襲われそうになったと聞きました! ご無事でしたか?」
「うん。私は大丈夫。お父さんが来てくれたから」
「そうですか」
よかった、とエマさんは座り込んでしまった。
「申し訳ありません。私がお側を離れなければ……」
「エマさんは悪くないから、私がお土産配りを頼んだんだし、それに、あの人はここまで来れなかったから」
「ですが、もしラーシュ様やバルド達が少し遅ければ……私は姫様を守るためにもここにいるのに」
「エマさん……」
すっかり落ち込んでいるエマさんの肩を抱いて、お父さんを見上げる。
「キーラを守ってくれようとする気持ちは嬉しいけど、エマにそこまで求めていないよ。エマが怪我をする方が、キーラが悲しむからね」
お父さんの言葉に、エマさんは顔をあげた。
私は大きく頷いて、笑顔を作る。
「エマさん、私は大丈夫だから……出来れば、この髪をなんとかしてくれると嬉しいな」
って、乾かしっぱなしで、すこし絡まってきた髪を見せる。
エマさんは鼻をすすりあげてから、
「それはいけませんね、お任せください、姫様」
と、すくっと立ち上がった。
「私からも頼むよ、エマ。今日は夕食をキーラと取るから、その準備もお願いするよ」
「はい!」
エマさんの元気な声で、私たちは動き出した。
私は、そう唇を尖らせた。お父さんは少し笑った。
「特別は言いすぎだったかもね。でも、彼らの言う今までに、キーラのような子はいなかったから……」
「いなかった?」
お父さんが言うには、ルキッシュの人が他国に行くこと自体が少なく、他国の人と結婚なんてもっと少ないらしい。
ましてや王家の者ともなるとないと言ってもいいくらいだそうだ。
その上、他国の人と結婚して、その人との間に子供が出来ると、余程の理由がない限り帰ってこない。
まれに帰ってきても、子供がルキッシュに入れないことも多いので、ルキッシュへ戻る人はさらに少なくなる。
「それに、この国は初代国王が真っ白だったから、白いことが何より重要視される。ハーフと呼ばれる子どもは、せっかく順応出来ても元の色が強く出てしまうから、ルキッシュでは生きにくく、結局国を出て行ってしまうんだ。だから私は、ハーフの子がルキッシュに入り、順応出来ることこそが特別だと思うんだ」
「特別……」
「今まで候補者に選ばれたのは、王家の血を引く生粋のルキッシュ人だったけど、それはそうじゃない者がいなかったからだ。ルキッシュはもう人が少ない。これからは王家にも他国の血が入ってくると思う。キーラはその可能性だよ。まぁ、キーラのように元の色が残らず、真っ白になるのは珍しいけれどね」
お父さんの言葉にふとアーサーを思い浮かべた。
他のハーフの人を見たことがないから分からないけれど、色が残ると言うならアーサーはこの国の人変わらない。
白に近いグレーの髪だった。
「……じゃあ、アーサーも特別なの?」
「そうだね、そう言う意味では、アーサーも特別だ」
「私が凄く白いのは、オンリンナだから?」
「……私はそう思う」
「どうしてか、分かる?」
「それは……」
お父さんは言いかけて、眉を寄せた。
そしてためて、ためて、言う。
「……分からない」
辛そうに歪められた顔に、こっちも苦しくなる。
「……言えないの?」
「いや、本当に分からないんだよ」
強く首を振って、肩を落とした。
「お父さん、オンリンナって一体……」
なんなの――――――と聞こうとして、強いノックに遮られた。
「エマがきたようだ」
お父さんがそう言って、扉を開けた。
扉の前にはエマさんが息を切らして立っていて、私を見つけると凄い勢いで近付いてきた。
「姫様、また襲われそうになったと聞きました! ご無事でしたか?」
「うん。私は大丈夫。お父さんが来てくれたから」
「そうですか」
よかった、とエマさんは座り込んでしまった。
「申し訳ありません。私がお側を離れなければ……」
「エマさんは悪くないから、私がお土産配りを頼んだんだし、それに、あの人はここまで来れなかったから」
「ですが、もしラーシュ様やバルド達が少し遅ければ……私は姫様を守るためにもここにいるのに」
「エマさん……」
すっかり落ち込んでいるエマさんの肩を抱いて、お父さんを見上げる。
「キーラを守ってくれようとする気持ちは嬉しいけど、エマにそこまで求めていないよ。エマが怪我をする方が、キーラが悲しむからね」
お父さんの言葉に、エマさんは顔をあげた。
私は大きく頷いて、笑顔を作る。
「エマさん、私は大丈夫だから……出来れば、この髪をなんとかしてくれると嬉しいな」
って、乾かしっぱなしで、すこし絡まってきた髪を見せる。
エマさんは鼻をすすりあげてから、
「それはいけませんね、お任せください、姫様」
と、すくっと立ち上がった。
「私からも頼むよ、エマ。今日は夕食をキーラと取るから、その準備もお願いするよ」
「はい!」
エマさんの元気な声で、私たちは動き出した。
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