このやってられない世界で

みなせ

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 眠い上に、エマさんに怒られて、アーサーに怒られて、散々な午前中だった。
 フェイが来たことは話したんだけど、ダメだった。

 それもこれも、私のせいじゃないって言うのに……
 大体、アーサーがうだうだ言ってないで、さっさと私をお父さんに会わせていれば、とっくの昔に終わってたんだ。フェイには会えなかったかも知れないけど、部屋が散らかることは無かったよ……何にも知らないくせにって、ムッとしてしまう。

 返事もしないでそっぽを向いていたら、子供ですかって。
 えぇ、えぇ、子供ですとも!

 どうせまたすぐ帰ると思って暫くむくれていたけど、今日に限ってアーサーが帰らない。
 しょうがないので、話しかけた。


……少し大人になりました!



「アーサー、青い魔鳥っている?」
「青いのは、ただの鳥ですよ」

 変な雰囲気だったのは私だけみたいだ。アーサーは特に変わりなく答えてくる。

「……そうなんだ」
「今度は、どうしたんですか?」
「ううん。なんでもない」

 アーサー、お父さんとかフェイの気配って感じないのかな?
 魔法を使っていないから?
 前には、お父さんがキーラに魔法を使ったことを気がつかなかったって言っていたし……どうしてだろう?
 デリックやダリルの事はすぐに分かったよね?
 治癒魔法と加護と、何か違うんだろうか?

「……今日は、暇なの?」
「え? どうしてですか?」
「まだここにいるから」
「……邪魔ですか?」
「うん。ちょっと休みたい」
「分かりました。……このままでいいですか? それともベッドを用意しますか?」
「このままで、いい」
「もう散らかさないでください」
「分かった」

 アーサーは、まだ何か言いたげにしてこっちを見ている。

「何?」
「いいえ……」

 って言いながら、私をまた見てる。

「だから、何?」
「……お嬢様こそ、何か言うことあるのではないですか?」

 あるよ。あるけど……どれのことだろう?
 私は首を傾げた。

「アーサーは、何かあると思うの?」
「それは……」
「無いよ……何も」

 今は。
 心の中でつけたす。

「そうですか……エマを呼んでおきます」

 諦めたような顔でアーサーは背を向けた。
 アーサーこそ、何か言うことあるんじゃないのかな?

 そう思ったけど、そのまま見送った。

 夜になればまたお父さんが来るって言っていたから、少し眠ったほうがいいだろう。
 ソファーに横になって、目をつぶる。

 寂しそうに出て行くアーサーの背中が瞼に焼き付いていて、ちょっと嫌な気分だ。
 キーラの記憶では、もっとずっといろいろ分かっている感じだったから、そうなんだって思っていたけど、違ったのかな?
 キーラはお父さんが来ていたことをアーサーに言っていなかったみたいだし。

 何より、私が覚えている記憶の中に、お父さん……治癒魔法を使ってくれた人はいない。
 だから、キーラが自分で使っていたと思っていた。


 ……キーラはお父さんをお父さんだって分かっていたのかな?


 お父さんの記憶だと、すごく嬉しそうにしていたけど……

 どうしてだろう?
 どんなに考えても、思い出せない。

 思いだそう、思いだそうと思って眠ったからなのか、嫌な夢を見た。

 完全にゲーム【忘却のアビリティ】の夢だった。
 カークとリーナがいちゃいちゃしながら、私に向かって魔法を使ってくるの。
 攻撃は全然私に当たらないんだけど、なんだかすごいイライラした。

 何か叫んでやろうとしたけど、声が出なくて、地団駄を踏む。
 そんな夢だった。



























――――作者より一言―――――

ここまで読んでくださりありがとうございます。

明日の更新はお休みします。
次回更新は12月2日になります。

次回もよろしくお願いします。
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