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着替えが終わり、お茶を一杯飲み終わったころ、フェリさんたちがやってきた。
バルドとゼストさんも一緒だ。
アーサーが全員が座れるようにソファーを用意し、エマさんがお茶をセットした。
なかなか息が合っている。
「今日はお疲れさまでございました。これでお披露目が無事終わり、我々も会議の者たちも安心いたしました。キーラ様の姿を見た民も平穏を得られたことでしょう」
フェリさんたちがそう言って二人同時に頭を下げた。
わざわざお披露目したけど、お父さんはすぐ目覚めそうだから無駄だったかも知れないよ……と思いながら私は肩をすくめる。
「ありがとうございます。どうぞ、座ってください」
「では、失礼して……それで、早速ですが、ラーシュ様には無事会えましたか?」
座ると同時にフェリオーノさんが言った。
こちらも待ちきれないようだ。
「はい、良く眠っているようでした」
ゼストさんとバルドも目に見えてほっとしたような顔になる。
フェリさんたちもだ。
「それで、どうでしたか?」
今度はフェリギーノさんだ。
「ラーシュ様はお目覚めになりそうでしょうか?」
「すぐ目覚めるかはまだ分かりませんが、お父さんが眠っている理由は……分かりました」
「それは本当ですか?」
「た、多分……」
がっつり前のめりになるフェリさんたちに、若干引く。
「何故ラーシュ様は眠られているんですか?」
「お父さんは……今、その、意識が他にあるんだと思います」
「意識?」
「いい方がよく分からないですが、お父さんは……ピーちゃんになってます」
「ピーちゃん?」
アーサーも含めた全員が声をそろえた。
「ピーちゃんは、私が飼っている鳥で、お父さんはそのセキセイインコじゃなくて、魔鳥……になっているんだと思います」
フェリさんたちが訝しげに眉を寄せる。
アーサーは目を見張り、私を見ていた。
「キーラ様、それはどのようにしてそうなったのかお分かりになりますか?」
「それは分かりません。ただ、お父さんはずっとお母様と私をこっそり見に来ていて、二か月前に私を守ろうとしてピーちゃんになったみたいです」
「なにから、ですか?」
「それも分かりません」
私は首を振った。
「では、そのピーちゃんとやらは今どこに」
「フォルナトルからルテルまでは連れてきました。でも、急にこっちに来ることになったから、列車に置いてきてしまって……」
「置いてきた……」
フェリギーノさんがうめくようにつぶやいた。
「すみません。まさかピーちゃんがお父さんなんて思わなかったので……知っていたらちゃんと連れてきたんですけど。あ、フォルナトルの人たちはもう帰ってしまったんですよね?」
「えぇ、あの後すぐお帰りいただきました」
「……そう、ですか。じゃあ、フォルナトルの王都まで迎えに行けば……」
「それは……今は、無理でしょう」
「え?」
フェリギーノさんの言葉に首を傾げる。
「何でですか?」
「フォルナトルは今閉じられています」
「閉じられるって、何がです?」
フェリさんたちは顔を見合わせた。
「何かあったんですか?」
「我々もまだしっかりした情報を掴んでいるわけではないのですが、どうやらトクタムがフォルナトルへ宣戦布告し、王都を攻撃したようです。フォルナトルは領土を守るため、王が国境を封鎖しました」
宣戦布告?
国境の封鎖?
聞きなれない言葉に、私はアーサーを見た。
眉間にしわを寄せたアーサーは私からあからさまに目を反らす。
「それって、いつですか?」
「一週間ほど前です」
「一週間……王都は……」
「分かりません。我々は現在デルフィー経由で情報を得ている状態ですので、情報に時差があり詳しいことはまだ……」
フェリオーノさんがまだ何か話していたけど、もう聞こえなくなっていた。
だって、王都が攻撃って……カーク達は?
足元が無くなったみたいに、ふわふわする。
「姫様!」
エマさんが叫ぶのが聞こえて、でも、目の前は真っ暗になった。
バルドとゼストさんも一緒だ。
アーサーが全員が座れるようにソファーを用意し、エマさんがお茶をセットした。
なかなか息が合っている。
「今日はお疲れさまでございました。これでお披露目が無事終わり、我々も会議の者たちも安心いたしました。キーラ様の姿を見た民も平穏を得られたことでしょう」
フェリさんたちがそう言って二人同時に頭を下げた。
わざわざお披露目したけど、お父さんはすぐ目覚めそうだから無駄だったかも知れないよ……と思いながら私は肩をすくめる。
「ありがとうございます。どうぞ、座ってください」
「では、失礼して……それで、早速ですが、ラーシュ様には無事会えましたか?」
座ると同時にフェリオーノさんが言った。
こちらも待ちきれないようだ。
「はい、良く眠っているようでした」
ゼストさんとバルドも目に見えてほっとしたような顔になる。
フェリさんたちもだ。
「それで、どうでしたか?」
今度はフェリギーノさんだ。
「ラーシュ様はお目覚めになりそうでしょうか?」
「すぐ目覚めるかはまだ分かりませんが、お父さんが眠っている理由は……分かりました」
「それは本当ですか?」
「た、多分……」
がっつり前のめりになるフェリさんたちに、若干引く。
「何故ラーシュ様は眠られているんですか?」
「お父さんは……今、その、意識が他にあるんだと思います」
「意識?」
「いい方がよく分からないですが、お父さんは……ピーちゃんになってます」
「ピーちゃん?」
アーサーも含めた全員が声をそろえた。
「ピーちゃんは、私が飼っている鳥で、お父さんはそのセキセイインコじゃなくて、魔鳥……になっているんだと思います」
フェリさんたちが訝しげに眉を寄せる。
アーサーは目を見張り、私を見ていた。
「キーラ様、それはどのようにしてそうなったのかお分かりになりますか?」
「それは分かりません。ただ、お父さんはずっとお母様と私をこっそり見に来ていて、二か月前に私を守ろうとしてピーちゃんになったみたいです」
「なにから、ですか?」
「それも分かりません」
私は首を振った。
「では、そのピーちゃんとやらは今どこに」
「フォルナトルからルテルまでは連れてきました。でも、急にこっちに来ることになったから、列車に置いてきてしまって……」
「置いてきた……」
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「すみません。まさかピーちゃんがお父さんなんて思わなかったので……知っていたらちゃんと連れてきたんですけど。あ、フォルナトルの人たちはもう帰ってしまったんですよね?」
「えぇ、あの後すぐお帰りいただきました」
「……そう、ですか。じゃあ、フォルナトルの王都まで迎えに行けば……」
「それは……今は、無理でしょう」
「え?」
フェリギーノさんの言葉に首を傾げる。
「何でですか?」
「フォルナトルは今閉じられています」
「閉じられるって、何がです?」
フェリさんたちは顔を見合わせた。
「何かあったんですか?」
「我々もまだしっかりした情報を掴んでいるわけではないのですが、どうやらトクタムがフォルナトルへ宣戦布告し、王都を攻撃したようです。フォルナトルは領土を守るため、王が国境を封鎖しました」
宣戦布告?
国境の封鎖?
聞きなれない言葉に、私はアーサーを見た。
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「それって、いつですか?」
「一週間ほど前です」
「一週間……王都は……」
「分かりません。我々は現在デルフィー経由で情報を得ている状態ですので、情報に時差があり詳しいことはまだ……」
フェリオーノさんがまだ何か話していたけど、もう聞こえなくなっていた。
だって、王都が攻撃って……カーク達は?
足元が無くなったみたいに、ふわふわする。
「姫様!」
エマさんが叫ぶのが聞こえて、でも、目の前は真っ暗になった。
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