このやってられない世界で

みなせ

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「で、アーサーはどっち派なの?」

 ゼスト達が帰ってからすぐ、私はアーサーにそう尋ねた。
 私を呼ぶためにアーサーへ連絡したのは現王派なのは間違いない。でも、アーサーは私に前王派のやり方を勧めた。
 アーサーは助けるとか、思う通りにとか、そんなことを良く言うけど、ここ最近のアーサーはちっとも私の気持ちを考えていない。私が嫌だと思うことをさせようとするし、もう何を考えているか、何をしたいのかちっとも分からない。

「どっちでもありませんよ」

 アーサーは肩をすくめる。

「しいていえば、今はラーシュ様個人のために動いています」
「今は?」
「えぇ、この一ヶ月は、そうです」
「一ヶ月?」
「はい、ラーシュ様が倒れたと連絡が来たのが一ヶ月ほど前でしたから、その時からですね」
「何で?」

 私は顔をしかめる。

「私はもともとラーシュ様の護衛でした。ラーシュ様が後継者候補に選ばれた時からお仕えしています。オンリンナ家いたのはラーシュ様に、カーラ様とそのお子様を守るよう指示されたからです。ラーシュ様が倒れその命は終了しました。なので私はラーシュ様のために動くことにしたんです」

 アーサーはそう少し笑った。

「だからどちらの派閥でもありません。お嬢様には申し訳ありませんが、ラーシュ様にとって良い方を選びます」
「私の結婚がいい方なの?」
「それは……お嬢様にこの国残ってもらいたかったのです。それには新たな契約が必要かと」

 契約……結婚も契約、か。

「でも、結婚は無いでしょ?」
「結婚が一番簡単な契約ですから。私はフォルナトル王家を信じていません。カーラ様からも言われていたんです」
「何を?」
「王太子殿下に十分注意するように、と」

 あー、ノートにもあったね、そう言えば……

「お嬢様が目覚められてすぐに連れ去られ、一月も帰すことなく、その上いつの間にかお嬢様も絆されて……ラーシュ様が倒れたと聞いた時、すぐにでもお嬢様にお知らせしたかった。でも会うことも、書くことも、言うことも出来ない。どんなに悔しかったか!」

 えーっと。

「契約が何か分かりませんが、ラーシュ様、カーラ様につながる者では契約に引っかかるらしく、正攻法ではお嬢様をフォルナトルから出国させることが出来なかったんですよ。フォルナトルではきっとお嬢様を返せと言ってくるでしょう」

 アーサーが、少し興奮してる。

「私はお嬢様にこの国……ラーシュ様の側にいてもらいたいのです。ラーシュ様はずっとキーラ様に会うことを我慢していらっしゃいましたから。そのために、私は前王派の考えを選んだんです。エマのせいで失敗しましたけど」
「アーサー……」

 いろいろ考えてたんだね。
 でもやっぱり、結婚は違うでしょ……。
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