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滞在五日目に突入……。
ケビンは昨日のうちにまたバルトルさんに会ってきたらしい。
バルトルさんもやっぱり私の話は知らなくて、もしこのまま私の名前が出なければ私を出すつもりはないと言ったという。
ただ、陛下がそう言ったなら、私次第で交渉の場に出すことは出来ると伝言をもらった。
交渉は今も平行線で、フォルナトル側はこのまま物別れに終わることも覚悟しているから、どちらでもいいらしい。
まぁ、私が行ったところで、何か変わるとは思えないけど。
なんて、ぼんやりと時間を過ごしていたんだけど、状況が変わったのはお昼ご飯を食べた後だった。
昼食後始まった話し合いの場に、一人だけ新しい外交官加わった。
明らかに今までの交渉相手とは違う雰囲気のその人が、挨拶と共に私の名前を出したと言うのだ。
それは本当に突然で、ルキッシュ側の人たちも不思議そうにしていたらしい。
そして、その人の一言で、今までの交渉がすべてなかったことになり、私をルキッシュに差し出す代わりに、人質は解放すると言う馬鹿みたいな要求をしてきたというのだ。
「はぁ?」
その話を聞いて出たのは、そんな声だった。
「何それ、どう言うこと?」
「それはまだ聞き出せていません」
休憩になってまっすぐ私のところへ走ってきたバルトルさんは、疲れた顔でそうため息をついた。
「交渉はただの引き延ばしだったんだな」
「そのようです」
「で、どうするんだ? キーラ」
ケビンが聞いてくる。
どうするも何も、
「とりあえずその人に会ってみる。会って話を聞いてみるよ」
「行くのか?」
「それは分からないけど、理由次第では行く。陛下も行けって言ってるし」
なんか急にイライラしてきた。完全にストレスだ。
「その新しい外交官って人と話すことは出来ますか?」
「はい、そのように伝えてみます」
バルトルさんが出て行って、その間に私はミリアさんに着替えさせられた。
モスグリーンのスーツ姿で部屋を出ると、ケビンも正装して待っていた。
「俺も一緒に行っていいよな?」
「もちろん」
「……何だか嫌な感じだ」
ケビンの言葉に、私もそう思う。
急転直下もいいところだ。
長く待つこともなく、バルトルさんが戻ってきた。
すぐに会えると言うので、そのまま後をついて行くと、駅から出てすぐの少し大きな家へと入った。
玄関ホールから続く階段を上って行くと、バルトルさんと同じような格好をした人たちと、民族衣装のような服を着た人たちが立っていた。
―――――ん?
思わず二度見する。
民族衣装の人たちはきっとルキッシュの人なんだろう。
全員、ストレートの髪を腰まで伸ばしていて、前も後ろも長方形の布を垂らしたような服を着ている。顔立ちは綺麗な上、みんな似ていて、見分けがつきにくい。
でも、その顔は、いつかどこかで見た誰かに似ていた。
―――――まさか、ね。
「キーラ?」
「あ、ごめん」
ケビンに呼ばれて、知らずにとまった足を動かす。
「こちらです」
そう、バルトルさんが廊下の突き当たりにあった扉を開けた。
小じんまりした応接室に、やっぱり民族衣装の誰かが立っている。
廊下にいた人たちに似ているけど、見分けはつく。
間違いなく、知っている人だ。
「よくおいで下さいました」
ふわりとほほ笑んだその男を見て、私はため息をついた。
「なんでここにいるの? アーサー」
ケビンは昨日のうちにまたバルトルさんに会ってきたらしい。
バルトルさんもやっぱり私の話は知らなくて、もしこのまま私の名前が出なければ私を出すつもりはないと言ったという。
ただ、陛下がそう言ったなら、私次第で交渉の場に出すことは出来ると伝言をもらった。
交渉は今も平行線で、フォルナトル側はこのまま物別れに終わることも覚悟しているから、どちらでもいいらしい。
まぁ、私が行ったところで、何か変わるとは思えないけど。
なんて、ぼんやりと時間を過ごしていたんだけど、状況が変わったのはお昼ご飯を食べた後だった。
昼食後始まった話し合いの場に、一人だけ新しい外交官加わった。
明らかに今までの交渉相手とは違う雰囲気のその人が、挨拶と共に私の名前を出したと言うのだ。
それは本当に突然で、ルキッシュ側の人たちも不思議そうにしていたらしい。
そして、その人の一言で、今までの交渉がすべてなかったことになり、私をルキッシュに差し出す代わりに、人質は解放すると言う馬鹿みたいな要求をしてきたというのだ。
「はぁ?」
その話を聞いて出たのは、そんな声だった。
「何それ、どう言うこと?」
「それはまだ聞き出せていません」
休憩になってまっすぐ私のところへ走ってきたバルトルさんは、疲れた顔でそうため息をついた。
「交渉はただの引き延ばしだったんだな」
「そのようです」
「で、どうするんだ? キーラ」
ケビンが聞いてくる。
どうするも何も、
「とりあえずその人に会ってみる。会って話を聞いてみるよ」
「行くのか?」
「それは分からないけど、理由次第では行く。陛下も行けって言ってるし」
なんか急にイライラしてきた。完全にストレスだ。
「その新しい外交官って人と話すことは出来ますか?」
「はい、そのように伝えてみます」
バルトルさんが出て行って、その間に私はミリアさんに着替えさせられた。
モスグリーンのスーツ姿で部屋を出ると、ケビンも正装して待っていた。
「俺も一緒に行っていいよな?」
「もちろん」
「……何だか嫌な感じだ」
ケビンの言葉に、私もそう思う。
急転直下もいいところだ。
長く待つこともなく、バルトルさんが戻ってきた。
すぐに会えると言うので、そのまま後をついて行くと、駅から出てすぐの少し大きな家へと入った。
玄関ホールから続く階段を上って行くと、バルトルさんと同じような格好をした人たちと、民族衣装のような服を着た人たちが立っていた。
―――――ん?
思わず二度見する。
民族衣装の人たちはきっとルキッシュの人なんだろう。
全員、ストレートの髪を腰まで伸ばしていて、前も後ろも長方形の布を垂らしたような服を着ている。顔立ちは綺麗な上、みんな似ていて、見分けがつきにくい。
でも、その顔は、いつかどこかで見た誰かに似ていた。
―――――まさか、ね。
「キーラ?」
「あ、ごめん」
ケビンに呼ばれて、知らずにとまった足を動かす。
「こちらです」
そう、バルトルさんが廊下の突き当たりにあった扉を開けた。
小じんまりした応接室に、やっぱり民族衣装の誰かが立っている。
廊下にいた人たちに似ているけど、見分けはつく。
間違いなく、知っている人だ。
「よくおいで下さいました」
ふわりとほほ笑んだその男を見て、私はため息をついた。
「なんでここにいるの? アーサー」
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